うっ血性心不全の既往→アンカリングバイアス→肺塞栓診断の遅れ


救急でPEスクリーニングを徹底するしかない

Guntupalli, Saketh R, Daniel Spinosa, Stephanie Wethington, Ramez Eskander, and Alok A Khorana. “Prevention of Venous Thromboembolism in Patients with Cancer.” BMJ 381 (2023). https://doi.org/10.1136/bmj-2022-072715 .

キーポイント

【疑問点】 救急部の医師は、医師が患者を診察する前に記録される患者の来院理由欄に記載された情報を参考にしているか?
【所見】 息切れで救急外来を受診したうっ血性心不全(CHF)患者108 019人を対象としたこの横断研究では、受診理由にCHFの記載がある場合、医師はそのような患者に肺塞栓症(PE)の検査を行う可能性が低かった。しかし、CHFの言及と最終的に急性PEと診断されたこととの間には関連はなかった。
【意義】アンカリングバイアスが肺塞栓症の検査や診断の遅れにつながっていることを示唆している。



【序文】 認知的バイアスは医師の意思決定に影響を及ぼすと仮定されているが、その影響を示す大規模な証拠は限られている。そのようなバイアスの1つがアンカリングバイアスであり、臨床的な意思決定を行う際に、後の情報に十分に適応することなく、しばしば最初の1つの情報に集中してしまうことである。
【目的】 息切れ(SOB)で救急外来を受診したうっ血性心不全(CHF)患者に対して、医師が肺塞栓症(PE)検査を行う可能性が低いかどうかを検討する。
【デザイン、設定、参加者】 2011年から2018年の全米退役軍人会データを対象としたこの横断研究では、退役軍人会EDでSOBを呈したCHF患者を解析対象とした。解析は2019年7月から2023年1月まで行った。
【曝露】 医師が患者を診察する前にトリアージで文書化される患者来院理由欄にCHFについて記載されている。
【主なアウトカムと測定法】 主なアウトカムは、PE検査(Dダイマー、造影剤を用いた胸部CTスキャン、換気/灌流スキャン、下肢超音波検査)、PE検査までの時間(PE検査した者のうち)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)検査、EDで診断された急性PE、最終的に診断された急性PE(ED受診から30日以内)であった。
【結果】 本サンプルには、SOBを呈したCHF患者108 019例(平均[SD]年齢、71.9[10.8]歳;女性2.5%)が含まれ、このうち4.1%はトリアージ文書の来院理由欄にCHFの記載があった。
全体として、13.2%の患者が平均76分以内にPE検査を受け、71.4%がBNP検査を受け、0.23%がEDで急性PEと診断され、1.1%が最終的に急性PEと診断された。
調整後解析では、CHFの記載はPE検査の4.6パーセンテージポイント(pp)減少(95%CI、-5.7~-3.5pp)、PE検査までの15.5分増加(95%CI、5.7~25.3分)、BNP検査の6.9pp増加(95%CI、4.3~9.4pp)と関連していた。CHFの言及は、EDにおけるPE診断の可能性を0.15pp低下させる(95%CI、-0.23~-0.08pp)ことに関連したが、
CHFの言及と最終的にPEと診断されることとの間には有意な関連は認められなかった(差0.06pp;95%CI、-0.23~0.36pp)。
【結論と関連性】 SOBで受診したCHF患者を対象としたこの横断研究では、医師が受診する前に記録した受診理由がCHFに言及していた場合、医師がPEを検査する可能性は低かった。
医師は、このような初期情報を判断材料としている可能性があり、この場合、検査やPEの診断の遅れに関連していた。

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