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マイナスポトフ

 ARuFaさんが匿名ラジオで紹介していた「マイナスポトフ」を作りました。うますぎて食えば食うほど腹が減るからマイナスポトフと名付けたそうです。その名の通り、本当においしかったです。その感想文です。かなり長いです。

元動画はこちら

 基本的には全てこの動画の通りに作ったので、気になる方はこちらをご覧ください。

感想(作業中)

 作業している間に思ったことを頑張って思い出しながら、時系列順に書いてみようと思います。
 感想文を書こうと思ったのは自分なのに、想像以上に書くのが大変で、段々テンションがおかしくなってきた。ノリが寒くても大目に見てください。


剥きたんぽ、切りたんぽ

  • まずは玉ねぎを切っていく。玉ねぎは4分割するだけでも結構目にしみる。急いで切り終えて、炊飯器に閉じ込めた。

  • 次に、炒める野菜を切っていく。

  • じゃがいもが土まみれだったので最初は皮を剥こうかと思ったけど、2個剥いたら面倒になったので、タワシでゴシゴシして土を落として皮ごと切った。

  • 野菜を切るサイズの具体的な説明があるのが有難かった。

  • チューブじゃないニンニクを調理するのは初めてだ。皮を剥いたらミカンみたいになってて面白かった。ミカンみたいになった状態の、表面の薄皮も剥いた方がいいのか迷った。動画の中のニンニクと見比べて、剥くことにした。

  • 切ったニンニクの匂いを嗅ぐと、「あぁ、これだな」と思った。うまく言葉にできないけど。


焦げよ 恐れるままに 跳ねる油を

  • 野菜を炒めていると結構油が跳ねる。たまに手に飛んだけど、気合いで我慢した。エプロンした方がいいかな。 

  • 「ニンニクは焦がさないように」とあったけど、ベーコンを炒める途中で焦げた。あれは不可抗力だ。逆にあれを焦がさない方法はあるのか知りたいくらいだ。

  • 家にある菜箸の使い勝手が悪い。めっちゃ滑る。二本の棒の間から何もかもこぼれ落ちていく。買い替えようかな。

  • コンロで野菜を炒めていたら、隣にある炊飯器の中の手羽元が段々と湯気を出してきた。本当においしそうだった。


もっと騒げ肉汁の歌

 ジャガイモを炒め終わる直前に、炊飯器が歌い始めた。焦らずジャガイモに焦げ目をつけて、鍋にブチ込む。その後炊飯器に真っ正面から向かい合い、蓋を開けた時の光景がこちら。

もわぁ

お?
この時点でめっちゃ良い匂いがする。ダイエット中の友人に嗅がせたら殴られると思う。

うおー!!

 凄い。スープが金色だ。半透明になったタマネギがスープの中で折り重なって、夕方の海中都市みたいになっている。じっくりと加熱された鶏肉がぷりぷりしている。
 菜箸がアホみたいに滑るので鶏肉を掴めない。ちょっとイライラしてトングを取り出し、まず手羽元を鍋にブチ込む。そして布巾を召喚して、アツアツの釜を持ち上げ、この最高のスープを鍋にブチ込んだ。

ローリエ「まあ、任せろって」

 そして、ローリエ。袋から出して匂いを嗅いだ時点で、「勝ったな」と思った。こいつがあれば何だってできる気がする。知らんけど。
 じゃがいもを炒めている間にコンソメなどはもう入れていたので、すぐ蓋をして20分煮込む。

 蓋を開けた時の写真は撮り忘れた。


Only "miso" and sauce, remember

 そして、味をつける。味の素とクレイジーソルトは問題なく入れることができた。
 クレイジーソルトを買うのも初めてだ。シールを開けて、匂いを嗅ぐ。ああこれか!と思う。また「勝ち」を確信した。

蓋に貼ってあったシールがこれ。

Earth, Wind & Fire?

 なんで9/21なの?レイジイってこと?脳内に自〇行為が浮かぶ。
……この話はやめよう。

 なんか楽しくなったので、煮込みながら使った食器を洗っている時に、Earth, Wind & FireのSeptemberを歌っていた。数年前の9/21日に、彼らの公式アカウントが「Do you remember?」ってツイートしてたのが面白かったな。しかも、Yes/Noの投票付きで。ほとんどYesに投票されていたな。もちろん私も。

 機嫌は最高。でも、問題が残っている。ウスターソースは無い。味噌も無い。どうしよう。
 ウスターソースについてググったら、「中濃ソースでも代用できます。醤油を入れると更にウスターソースっぽくなります」みたいなことが書いてあった。じゃあ中濃ソースでいいや。
 味噌はどうしよう。家の冷蔵庫に、もろみ味噌が余っている。もろみ味噌と普通の味噌の違いは?

よく居酒屋さんや和食屋で耳にするもろみ味噌ですが、どんなものかご存知でしょうか?

簡単に言ってしまうと「醤油や味噌を作る時の残りカス」のことなのです。

醤油や味噌は、米・大豆・麦などの原料に麹や塩などを加え発酵させた後、圧搾します。この時に出る固形の搾りカスが「もろみ」です。

本来は、味噌を作った後のもろみを「もろみ味噌」というべきなのですが、市販されている「もろみ味噌」は、はじめからもろみそのものを食べることを目的として作られるようになりました。そのため、よりおいしい仕上がりになるように、醤油や砂糖といった調味料に漬け込んで熟成させています。

 なるほどね。本来のもろみ味噌は、醤油や味噌になる前のイーブイみたいな段階の搾りカス。市販のもろみ味噌は、そこに醤油や砂糖を加えて味付けしていある。

ここで閃いた。

中濃ソース + 醤油 = ウスターソース

移項して、

中濃ソース = ウスターソース ー 醤油  ……①

味噌の話もしよう。さっきの記事曰く、こういうことだったよね。

本来のもろみ味噌 + 醤油 + α = もろみ味噌(市販)

 本来のもろみ味噌は味噌と醬油のイーブイだが、味噌の要素があるのは事実なので、味噌の近似として扱う。

本来のもろみ味噌 ≒ 味噌

よって、

味噌 + 醤油 + α = もろみ味噌(市販)

 また、醬油以外の味付けは考慮しないものとして、右辺と左辺を入れ替えると、

もろみ味噌(市販) = 味噌 + 醤油 ……②

式①と式②より、

中濃ソース + もろみ味噌(市販) = ウスターソース + 味噌

Q.E.D.

 そうして、中濃ソースともろみ味噌が、恐る恐る投下された。


微調整

 そしてもう15分煮込んで、一旦完成した。味見したらちょっと濃いような気がしたので水を入れたら薄くなってしまって、もう20分くらい追加で煮詰めた。そのせいかジャガイモが予想以上に溶けたけれど、おいしいから問題なしということにしよう。見栄えはちょっとアレだけど。そして、ようやく完成した。

 ちなみにキッチンはめちゃめちゃ暑かった。サーキュレーターで冷房の風をガンガンに送り込んだらマシになったが、それでも暑かった。


実食

 そうして出来上がったものを、ついに食べる時が来た。

食べる直前。ちょっと冷ました。結構じゃがいもが溶けてるね。

めちゃめちゃ熱い。「1000度くらいある」って動画内で言われているくらい、本当に熱い。私は猫舌なので、ちょっと冷ましてから食べた。これをアツアツのまま食うのは無理だ。具だくさんなので、具と具の間に熱が潜んでいる。

 改めて、ちょっと冷ましてから食べる。本当にうまい。スープのコクがすごい。ちょっと煮詰めすぎたせいでじゃがいもは結構溶けてしまっているが、ほろほろのじゃがいもの側面にあるシャリシャリした皮の食感が、じゃがいもの「具らしさ」の面影になっている。皮をむかないのは正解だった。具材の全てに味が染みている。人参がとにかく甘い。油をしっかり使って炒めたので、葉野菜のキシキシした感じが無い。油と出汁でこれでもかと撫で回されてくたくたになったキャベツの中にも、茎の食感が程よく残っている。「野菜は大きく切っていい」と言われていた意味がわかった。大きく切るからこそ、食感と柔らかさ、素材の味とスープの味が両立できるのだろう。
 そして、肝心(?)の鶏肉。ほろほろに茹でられていて、味が奥まで染みている。じっくり熱が通っているので、軟骨の部分も噛んだらすぐに骨からポロっと外れる。こういう鶏肉の骨の軟骨部分が、私は大好きだ。食べてみると、軟骨まで柔らかい。フライドチキンの軟骨とは比べ物にならない。
 鶏肉はただ茹でるだけではおいしくない。パサパサして、固くて、生臭さが抜けない。しかしこれはそういうことが一切ない。肉のポテンシャルが引き出されている。子供がイタズラしたビデオテープくらい引きずり出されている。

 ちなみに、食べる前に鍋から取り出したローリエは、「……シテ……コロシテ……」と「自分まだやれます、やらせてください」の中間みたいな姿をしていた。気になるので味見してみると、案の定固くて食べられそうになかった。口の中で数回舐めると、「やらせてください」の味の部分がどんどん無くなっていった。

動画の有難さ

 ポトフを作っていて実感したのが、Youtubeを見ながら作る利点と、ARuFaさんの説明の上手さだ。

  • この動画は非常にテンポ良く作業が進んでいくため、「次に何をやるか」が頭に入りやすい。

  • 実際の作業中の様子が見られる。これくらいのサイズに切ればいい、こうなるばで炒める、これくらい調味料を入れる、というのが全部見られる。文章だけではうまく伝わらないものも、動画があれば直観的に分かる。

  • 気になった所は何回でも再生できる。私は野菜にどれくらい焦げ目をつけるか分からなかったので、野菜を炒めている様子は何度もリピートしたし、動画を止めてしっかり見た。

  • 「具体的に言えば、週刊○○くらいの厚さ」「食べ放題メニューの小さいケーキくらいの大きさ」という比喩が凄く好きだ。どれくらいの大きさなのかだけでなく、誤差の許容度も伝わる。私は工学部なので、設計の授業で「寸法公差」を習う。それに近いのではないか。とにかく、「だいたいこれくらい」を伝える比喩として、優秀過ぎる。私もこういう比喩を適切に使える人間になりたいな。

動画の動きに倣うと、びっくりするほどうまくいく。ソースを入れる時は、動画に合わせて「てーっ……てーっ……てっ」って言いながら入れた。クレイジーソルトの分量も自信が無かったので、動画のARuFaさんの手と同じように振ってみた。
概要欄を見て材料を買って、動画をざっと見て作り方を把握して、苦手な所は動画を何度も再生して、真似してみる。そういうことができる構成になっているのが、非常に有難かった。

調味料の重要性

 これまで私は調味料を舐めていた。ペロペロしてた訳ではない。そんな工程、省いたっていいでしょ?と思っていた。全然そんなことはない。入れなきゃ始まらない。
 クレイジーソルトは高いので買うかどうか迷ったけど、開けて匂いを嗅いだ時に、買ってよかったと思った。香りがあるだけで料理や食事の楽しさが全然違う。ローリエも同じだ。キタコレ!!って感じ。
 ウスターソース・コンソメ・白だしのような複合調味料は、おいしくするのが本業だ。味の素もそうだ。入れなきゃ損だ。どうしてこれまで避けてきたんだろう。
調味料の重要性を学んだことが、今回の一番の収穫かもしれない。ARuFaさんのお母様は「調味料はほどほどに派」らしいけど、今回のポトフで、私は完全にARuFa陣営になった。


準備したもの

 今回ポトフを作る上で、必要なものはほぼ全部買ってきた。万一うまくいかなかった時に、「○○を買っていなかったせいかな」と思うのは嫌だし、そもそも家にまともな調味料が無いので、全部買い揃えるのが手っ取り早かったからだ。しかし、普段料理しないのに日持ちしない食材や調味料を買うのも気が引けた。そのあたりの調整は、後で書く。

購入品(食材)

 まずは、食材。これらは調味料ほどは長期保存できない上に、料理として食われる「主人公」なので、今後もマイナスポトフを作るなら、必ず買うことになる。

  • キャベツ(半分に切ったやつが売ってた)

  • 手羽元(2パック買った)

  • ブロックベーコン(1パック買って、半分使った)

  • 玉ねぎ(3個入りを買って、2個使った)

  • にんじん(小さめの3本入りを買って、2本使った)

  • じゃがいも(小さめの8~9個入りを買って、5個使った)

 手羽元は骨があって食べづらいし高いので、今後も作るなら、鶏もも肉とかにしようかなと思っている。胸肉の方が安いけど、それじゃ逆にパサパサしすぎる。

購入品(調味料)

 前述の通り、私の家にはあまり調味料がない。醤油とかソースはあるけど、ローリエやコンソメキューブなどがない。というわけで、材料と一緒に買ってきた。

  • コンソメキューブ

  • ローリエ

  • クレイジーソルト

 クレイジーソルトを買うのは初めてだ。589円もするので、買う時は結構葛藤した。ただの塩じゃないんだぞ、これがあってこそのマイナスポトフなんだぞと自分に言い聞かせて買ってみた。蓋を開けて匂いを嗅いだ時に、買ってよかったと思った。
 ローリエを買うのも初めてだった。

家にあったもの

逆に、家にあったものはこちら。

  • 白だし

  • 味の素

  • 中濃ソース(ウスターソースの代用)

  • 鍋などの調理器具

買わなかったもの

 今回、必要なものは全て買う気でいた。しかし、諸事情で買わなかったものもある。

  • ソフリット(スーパーに売っていなかった)

  • 味噌(これだけのために買うのがなんか抵抗があった)

  • ウスターソース(これだけのために以下略)

  • オリーブオイル(家にあると思い込んでいたけど、なかった)

 味噌やウスターソースは躊躇したのに、なぜクレイジーソルトは買ったのか。クレイジーソルトの方が高いのに。味噌とウスターソースの金額を足してもクレイジーソルトにギリ負けかねないのに。理由は自分でもわからない。珍しい調味料に惹かれたとか、そんな感じだと思う。
 オリーブオイルは持っているから買わなくていいと思い込んでいたけど、いざ野菜を切ってフライパンを出して、棚を開けたらサラダ油とごま油しかなかった。しょうがないからサラダ油を使った。次作る時に買います。
 ソフリットは完全に諦めた。正直、どういうものだかよく分かっていない。

購入品総額

 スーパーのレシートの総額からポトフに関係ないものを抜くと、2436円になった。やっぱり、初期費用は高い。しかし、調味料を除いた純粋な「食材」だけの金額を足すと、1200円くらい。買った食材を全部使ったわけではないので、「食材」だけの金額は、1000円未満になるのではないかと思う。
 しかも、このレシピは結構な量があるので、自分が食べるための作り置きとして考えたら、1食あたりのコストはそんなに高くはない。

所用時間(結論:不明)

 皿を洗ったり、風呂を洗ったり、洗濯物を干したり、色々なことを並行でやっていたのでかなり時間はかかっているが、普通に作ったとしても、1時間はかかっていただろうと思う。炊飯器を使う時点で30~40分は確定している。その後も15分以上煮込むし。煮込んでいる間ずっと鍋を見張る必要はないだろうけど、やはり火を使っているわけだし、そこは気を付けたほうがいい。


次に作る時の注意点やメモ(自分用)

次に作る時の注意点やメモ(自分用)も、ここに書いておこうと思う。

  • 鍋は迷ったら大きいものを使うと良い。私も最初はやや小さい鍋にギリギリ収めようとして作っていたが、途中で定員オーバーになり、鍋を変える手間がかかっている。加熱したら野菜はしぼむけれど、それ以上に元々の量が多い。

  • 見栄えも重視するなら、なるべく平たい鍋の方がいい。元動画の鍋みたいに。私はカレーを作るような円筒の鍋で作ったので、上まで火を通すためには上下に大きく混ぜる必要があり、盛り付けがグチャグチャになることを余儀なくされた。また、混ぜていたらローリエが迷子になった。私はこういう煮込み料理に盛り付けの綺麗さは重視しないので気にならないが、気になる方は横に大きい鍋を用意した方がいいかも。

  • 野菜の大きさは今くらいで大丈夫。もっと大きくてもいい。今日より小さいと、メリットは感じられないと思う。

  • 次は鶏もも肉を買って来ようと思う。手羽元の肉が骨からスルッと外れる感触や軟骨の感触も捨て難いけど、骨を気にせず食べられる気楽さと天秤にかけると、気楽さがギリギリ勝ってしまう。あくまで私の場合は。

  • オリーブオイルは絶対に買った方がいい。これは油で炒めてなんぼの料理だから。油の消費量が思ったより多い。サラダ油で作っても美味しかったけど、食べている時に「ん、これはやっぱりキャノーラだな」みたいな瞬間が僅かにあった。そういう瞬間も料理としてもっと楽しみたいのなら、オリーブオイルを買うべきだろう。

  • ウスターソースとソフリットの必要性はまだ分からない。今回は無くてもおいしかった。ウスターソースは中濃ソースで代用できるなら、要らない気がする。

  • ローリエは折ってから入れるともっと味が出るって本当かな。試してみない?

  • 野菜を炒めるのには結構時間がかかる。炒めるべき野菜を全部切って、ザルの上に重ねるように置いて、全部切ったら炒め始めるのは、時間も空間も有効活用できていない。炒める野菜を下から取り出すのは面倒だった。切りながら炒めてもいいんじゃない?

  • フライ返しは今回あまり活躍しなかった。野菜の両面に焦げ目をつけるためにひっくり返す作業は、菜箸の方が良い。

  • 家の菜箸を買い替えろ。ツルツル滑って使い物にならない。

  • ヘルシーな料理だとは思わない方がいい。油を結構使っている。おいしくて低カロリーだなんて、そんな都合のいい話は無いのだ。一つの料理として真摯に向き合って、幸せなカロリー摂取をしてほしい。

  • エプロンした方がいい。さっき服を見たら油が結構飛んでた。気付かなかった。

後日談

 私は実家暮らしだ。今日は父が家に居ないので、妹に食べさせてみた。これまでも妹に料理をお裾分けすることはあったが、残念ながら私はあまり料理が上手ではないので、「まあ食える」「ほどほど美味い」くらいのクオリティのものしか提供できなかった。妹のリアクションも、大体それくらいだった。
 でも今日は違う。心底から出る「おいしい」が貰えた。おいしいから食えと妹に言ったのは私だけど、一人でポトフを独り占めしたい欲求すら生まれた。

数十分後、もう1杯貰いにキッチンに向かった。

あれ?

もうこれだけ???

あんなに大きい鍋で作ったのに?

 妹の名誉のために言うと、妹は家族の料理を食い尽くしたりはしない。肉だけごっそり持っていくようなこともしない。念のためそういう約束は既に取り決めてあって、妹はそれを守ってくれている。
 お互いに良心的な量をよそって食べて、良心的におかわりをしたはずが、こんなに減っている。つまり、気付いたら吸い込まれるように食っていたということだ。これがマイナスポトフの実力。我々の胃袋の吸引力がブーストされている。

 もしかしたら、夕方にまたスーパーに行くかもしれない。”追いポトフ”のために。



料理の楽しさ(後半自分語り注意)

 今回ARuFaさんのレシピに従ってマイナスポトフを作った上で一番感じたのは、「安心して料理できた」ということだ。
 例えば、匿名ラジオの別の動画では、ARuFaさんが遠隔で指示を出して、恐山さんがハンバーグとかき揚げを作っている。その動画のARuFaさんの励ましが凄く良い。みじん切りの方法がうまく伝わらなくても、「今のは忘れて、好きなだけ細かくしちゃおう(要約)」と言ったり。恐山が焼く前のハンバーグにうっかり指チョップで穴を開けても、「穴開けちゃうと肉汁が出ちゃうよ、凹ますだけにしておいて、ヨシヨシしておいて」と説明しながらフォローを入れて、決して怒らなかったり。材料を入れておくボウルが無くても、困った素振りを見せずに「いいね、ゲームのコスト管理みたい」と言って、代替案を提案したり。そして最後には、「これ恐山が作ったんだぞ!すげーじゃん!めっちゃうまそうじゃんかよ!おい!誰が予想した、こんなうまそうなの!焦げが一切ねぇんだぞ!ザマァ見ろ!」とベタ褒めしている。
 他にも、オモコロチャンネルやふっくらすずめクラブの料理動画でも、料理を他人にレクチャーする時の口調は、とても肯定的で暖かい。

 ポトフを作っている途中、オモコロメンバーのそういう声掛けが何度も脳内再生された。野菜を切り終わると、脳内のARuFaさんが「OK、そうしたら次はね」と言ってくれる。切った野菜でキッチンが狭くなってちょっと混乱しても、「うまいことザルに乗っけておきなよ」みたいな脳内フォローが入る。小皿で味見する時も、脳内の加藤さんや原宿さんが、「熱いから気を付けてね」と言ってくれる。まるで、動画内で恐山さんがアチアチの料理を実食する時みたいに。



(ここからは自分語りです。気分を害する恐れがあるのでご注意ください)

 私の母は、私に料理を教える時に、手際の悪さにかなり怒る人だった。子供だからうまくいかないのは当たり前なのに。箸で混ぜる動きなどの覚束なさをかなりなじられた記憶がある。小学生の頃かな。叩かれた覚えはないが、一回くらい叩かれていてもおかしくはない。母との料理は「命じられたタスクを器用にこなせなかったら怒られる」というだけの減点方式のゲームであり、体系的・応用的なスキルは身に付かなかった。また、幼稚園や小学校低学年の時のことは覚えていないけど、高学年~中学生の時は習い事や部活を活発にやっていたので、日々の料理を手伝う機会はあまり多くなかった。いきなり一品作れと言われ、手際が悪くて怒られる。
 そんな母は高校1年生の時に死んでしまったものだから、「自分のご飯は自分で作りなさい」という家庭の方針にいきなり切り替わった。その時に脳内にあったのは、これまで怒られてきた記憶と、「料理ができない」という劣等感だけだった。
 調味料は高いので、新しく買うのは申し訳ない。おいしい料理を作るために沢山の工程をこなすのは、”怒られてきた私”には無理だ。父がキッチンを使う前に、早く片付けないといけない。そうやって材料も手順も簡略化された料理がおいしいはずがない。幸いにも私は好き嫌いがあまりなくて何でも食べられるので、自分が作ったマズい料理も、おいしいと思い込んで食べることができる。料理スキルを上げるより、食生活の水準を下げる方が早い。既に失敗体験が嫌というほど積み重なっている”料理”という行為に挑戦するくらいなら、適当に作ったマズい飯を黙って食う方が心が痛まないのだ。
 そうやって、私の”料理”はただの「食材の可食化」になっていった。そうしてただの茹でた肉や切っただけの野菜を食べるたびに「やっぱり自分は料理が下手だ」と思い込む悪循環は、今思えばただ自分で行き止まりに突き進んでいるような愚行だが、当時の自分にとってはそれが精一杯だった。幸いにも食費は多めに父から貰っていたので、コンビニやスーパーの弁当や菓子パンを買うようになり、料理から逃げる癖は加速していった。

 そして今に至る。当時ほどは気にしていないが、料理という行為には今でも「惨めさ」や「劣等感」といった感情が常に付き纏っている。失敗するのは嫌だし、手際よくできないと苛立ちよりも惨めさが勝つ。料理ができる友人を尊敬する反面、かなりのコンプレックスを抱いている。

 しかし、今回ポトフを作る上では、そんなことを一切考えなくて良かった。まるで自分が実際にオモコロメンバーの中にいて、隣で励まされているかのように感じながら、最後まで作ることができた。匿名ラジオやオモコロチャンネルの料理に対する暖かい雰囲気が、画面越しに我が家にやって来たようだった。
 また、「これは絶対にうまいはずだ」という、レシピに対する絶大な信頼があったのも良かった。おいしくなかったらどうしようとか、コレ本当においしくなるの?みたいな不安が全く無い。煮込み料理の性質上、材料を厳密に計量する必要が無く、好みで味付けていいものだったので、そういう几帳面さが必要とされないのも良かった。だいたいこのくらいに切れば正解。あとは炊飯器がやってくれる。そういったことをフラットに考えることができるのも、非常に良かった。

 このように心理的安全性が担保された状態で料理してみると、料理は楽しい。根本的な原因は自分が勝手に色々考え込んで”呪縛”を作っていただけだから、いつか自分で抜け出さなければならない。誰かが助けてくれるものではない。
 でも、今回の経験は間違いなく「助け」だったと思う。動画越しに救済された人がここに居ますよと伝えたい。その反面、この記事をARuFaさんやオモコロメンバーに読まれたらと思うとちょっと恥ずかしい。こういう経験を増やしていきたい。

 さらに余計な話をすると、おそらく私の「料理ができる」の基準が高過ぎるのも原因だろう。最近やっと言語化できるようになった。
 私の「料理ができる」の基準を楽器に例えるなら、「即興で弾ける」ということなのだ。予算や冷蔵庫の中身と相談してやりくりしてレシピを作るような行為ができて初めて、「料理ができる」のだと思い込んでいた。流石にそれは考えすぎかもしれない。だって、練習してラ・カンパネラが弾けるようになったなら、それは「ピアノが弾ける」ということだ。料理に対しても、もっと楽に考えた方がいいのかもしれない。今日はYoutubeを見てポトフが作れた。それは、私はポトフが作れるということだ。


おわりに

 本当に、調味料の偉大さを思い知った。頭をローリエで殴られた気分だ。
 マイナスポトフ、明日も作ろうかな。フレンチトーストを作るために卵と牛乳も買ってきたのに、すっかり身体がポトフを欲している。どうしよう、今夜も食べたいな。本日2回目のスーパーへの旅を検討している。今度こそオリーブオイルを買わないといけないな。ウスターソースと味噌は……どうしよう?買った方がいいのかな。まあ、何でもいいや。とりあえずスーパーに行ってみて、その時の気分で決めるよ。料理って案外気楽にやっていいらしいよ。


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