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「非モテ」からはじめる男性学 西井開

男友だちにおすすめしたい本ランキングを作るなら、トップ3に入る本。

 とても読みやすく、丁寧。問題意識は、以前感想を書いた「さよなら、俺たち 桃山商事」とかなり近い。というか、本の帯文を桃山商事の清田隆之氏が書いている。

 今回の本は「『非モテ』からはじめる男性学」(集英社新書)。
「非モテ」って何?と思う方も多いかもしれない。それは、モテないこと。タイトル通り男性視点で書かれているので、「恋人がほしいと思っているのに、女性からモテなくて悩んだり苦しんだりすること」を「非モテ」と表現している。

 決してモテるための方法が書いてあるわけじゃない。よくある恋愛論とかデートのテクニックとか、そんな話は一切出てこない。何となく寂しいとか苦しいという気持ちを「非モテ」というキーワードをきっかけに語り始めると、見えてくるものがあるんじゃない?という趣旨の本だと思っている。


 修士論文を下敷きにして書かれたのもあって、後半はちょっと硬め。硬いというか「ああ心理学の論文だなあ」と感じる言い回しや論理展開が多くて、少し懐かしくなった。

 論文調と言っても、有害な男らしさとか、女性蔑視(ミソジニー)とか、そういう大文字の、どこか他人ごとにも感じてしまう言葉は、あんまり出てこない。足をしっかり地べたにつけた個別・具体的なストーリーの積み重ねから、少しジャンプして一般的な話へと繋げていく。グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)だなあと、しみじみ思う文章だった。ラベルを考え、カテゴリ化して、あーでもないこーでもないと、概念とにらめっこする。超身内(心理学)ネタで申し訳ない。とにかく読んでいて懐かしく、後半の考察をとても楽しめたと思う。


 懐かしさといえば、数年前に著者の西井開氏らを含む、居場所づくりや哲学対話を紹介する会に参加したことも思い出した。

 偶然タイミングが合って、この本にも出てくる「僕らの非モテ研究会」体験ver.にも参加した。ほとんど自分の話はしなかった気がする。
モヤモヤを知らない人に話すのは、やっぱり勇気がいる。それぞれの経験を語る場だったけれど、どこかで「良いこと言わないといけない」と思っていたのかなあ。

 今もし参加したら、もう少し話せるだろうか。少しでも話せている自分がいるといいな。他人を分析するのではなく、ただ話を聞くだけでもなく、柔らかく開けた自分が。

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