『パーソナリティ障害の診断と治療』部分的まとめ①

「パーソナリティ障害の診断と治療」という分厚い本をたまーに部分的に読んでは忘れて、を繰り返しているので、今日読んだ箇所のまとめをします。なので、単語の説明などなく、完全なる自分の備忘録のための要約です。(おそらく本を買ったほうが私の拙いまとめよりもずっとよいとは思います。)

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P.95~ボーダーライン患者への精神分析的治療について

ボーダーラインと一言で言っても、かなりの幅がある。神経症との境界から精神病との境界まで。神経症圏に近づくにつれ、「探究的な」治療のほうによりよい反応があるだろう。また、精神病圏に近づくにつれ、「支持的」スタイルのほうによく反応がある。しかし、一般的には、ボーダーライン水準にある人々の治療は、「表出的心理療法」が選択される。

・治療の目的:複雑性をもち、よりどころとなるような、肯定的な、統合された自己感の発達。この自己感の発達により、欠点や矛盾などがあったとしても、他の人々を愛する能力が発達していく。

表現的技法①:限度や決まりの保持

ボーダーライン水準にあると、統合された観察自我を持たないことが多く、様々な自我状態に無秩序に変転する。そして、愛着と敵意に満ちた分離との間を行きつ戻りつするという不安定さがある。そのため、治療関係の中で、一貫性のある条件(限度や決まり)を確立することが重要である。この作業そのものが治療の一環である。それに対して怒りが示されることもあるが、2つの治療的メッセージがある。

1.セラピストは患者を大人としてみており、欲求不満に耐える能力があると信じている。

2.セラピストは都合よく利用されるのを拒絶し、それゆえ自己尊重のモデルとなる。

表出的技法②:対照的な感情状態を言葉にする

解釈の言い方に関しては、神経症圏のクライエントに対しては、より少ないほどより効果的である。(例:ライバルの女性に対して、否定的なことを言わずに話すクライエントに対して、「だけどあなたは彼女のことを追いだしたいとも思っている」)一方で、ボーダーライン水準の患者については、「あなたが本当に感じていることは完全に間違っています」と捉えかねない。なので、例えば、このように言う。「あなたにとって彼女が大切な人であることは分かります。しかし、こうも言えませんか?あなたの中の一部では、行動には移さなくても、彼女のことを追いだしたい気持ちもある。」または、「あなたは確かにきわめて自主的な性質を持っている。しかし、同時にある反対の傾向も共存しているようです。たとえば、私があなたのことをどう思うか気にかけているといったことです。」

表出的技法③:原始的な防衛の解釈

例えば、セラピストに対する怒りが表出されたとする。その感情は、投影同一化であることが多い。彼らは、「悪い自分」という感覚やこれに関連した激しい怒りの感情をセラピストに押し付けて、自分のものとしては引き受けまいとする。しかし、この種の投影をしたとしても、なお、悪と怒りの感覚は残る。そのため、自分がおかしくならないように、その投影されたものを現実に合致させようとする(例えば、「セラピストに敵意があるから、私は怒っているのだ」とするために、さらに怒りをセラピストにぶつけ、最終的には、本当にセラピストがクライエントに対して敵意を持つようになる。)。そのようなときは、以下のような解釈が有効である。「あなたは、『自分が悪い』という確信があるようですね。そのことで腹を立てているのでしょう。私のほうが悪くて、私が怒っていたからあなたも怒ったのだ、ということですが、そのように言うことで、自分の怒りをなんとかしようとしている。でも想像してみてください。あなたと私の両方ともによいところと悪いところがいくぶん混ざっているかもしれないし、このことがそんなに大事になる必要はないかもしれない。」これを何度も繰り返すことが治療のプロセスである。あらゆることが白か黒か、全か無か、という心理から、自己の多様な良い面、悪い面や感情を幅広くアイデンティティの中に統合する心理へと変わる。

表出的技法④:患者からのスーパービジョン

セラピストが陥りやすい二者択一の葛藤的な状況を解決するには、患者に助けを求めることが良いだろう。ボーダーラインの人々は物事を解釈するのに全か無かの方法を用いている。そのため、セラピストは、二つの選択肢が存在するがどちらも間違っているような感覚を引き起こされることが多い。どちらか一方を選択すると、どちらを選ぶにせよ、クライエントの葛藤の対極にあることになってしまい失敗する。その場合は、患者に問題を解決する助けを求めることが良いだろう。(例えば、「この状況で、私にどう反応してほしい?」)この技法は、不確かさを受け入れるモデルにもなり、患者の尊厳と創造性を肯定することになる。

表出的技法⑤:固体化を促進し退行をはばむ

退行したり、自己破壊的な行動は積極的に直面化し(例えば、「なんで飲み屋で男あさりをしたくなるんだろう」)、主体的になろうとか有能であろうとする努力すべてを共感的に支持することが大事である。

表出的技法⑥:落ち着いている間の解釈

情動がたかぶっている状態の場合、あまりに混乱していて何も理解できないだろう。激しい怒りやパニック、ひどい退行のさいに何が起きていたのかについてコメントするのは、その状態が過ぎて、混乱を招く強い感情から回復したときが良いだろう。

表出的技法⑦:逆転移のデータの尊重

ボーダーライン患者と接している際に、セラピストが感じる直感や情緒的、イメージ的な反応こそが、2者間に何が進行しているかの本質を提供していることが多い。例えば、セラピストが患者から批判された場合。その時、セラピストは自分が小さく弱くなり、びくびくしていて、自分が攻撃されるかもしれない、というイメージを持った。それは、患者本人が自分からスプリットオフしたものである(つまり患者本人のものである)可能性がある。その際は、このように言うことが治療的である。「あなたは今、怒りの感覚を覚えて気持ちが高ぶっているようです。ですが、あなたの中には弱くて不安で攻撃されるのではないかとびくびくしている部分もあるのではないでしょうか。」この種の解釈は訓練を積んだうえでやらなければならない。なぜなら、すべてが患者がもたらしたものであるわけではないからだ。そして、このような解釈はあくまで「仮説」の形として提供されるべきであり、患者が誤りを指摘できるようにする必要がある。

#パーソナリティ障害 #カウンセリング技法

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