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ストレッチの最新の知見について!   (Meta‐analysis:メタアナ)


1.英文紹介

Arntz F, Markov A, Behm DG, Behrens M, Negra Y, Nakamura M, Moran J, Chaabene H. Chronic Effects of Static Stretching Exercises on Muscle Strength and Power in Healthy Individuals Across the Lifespan: A Systematic Review with Multi-level Meta-analysis. Sports Med. 2023 Mar;53(3):723-745. doi: 10.1007/s40279-022-01806-9. Epub 2023 Jan 31. PMID: 36719536; PMCID: PMC9935669.

2.目的

 静的ストレッチング(以下:SS)が筋力やパワーに及ぼす影響に関して、論争も多い。健常成人において、SSが筋力やパワー、柔軟性に及ぼす影響を検討することを目的とした。

3.対象と方法

 文献検索は、2022年5月までのPubMed、SPORTDiscus、Web of Science、Cochrane Libraryのデータベースを用いて、2名が独立して行った。検索は、"AND "と "OR"と以下のキーワードの組み合わせで行った (可動域 OR 関節可動域 OR 関節柔軟性 OR 受動的可動域 OR 筋ストレッチングエクササイズ OR アクティブストレッチング OR パッシブストレッチング OR スタティックストレッチング OR ダイナミックストレッチング OR バリスティックストレッチング OR アイソメトリックストレッチング OR 固有受容性神経筋促通 OR PNFストレッチングエクササイズ ) AND (Muscle Power OR Explosive Strength OR Power OR Muscle Strength OR Strength AND Adolescent OR Child OR Adult OR Young Adult OR Older Adults OR aged OR seniors OR elderly)AND(controlled trial OR randomised controlled trial)。これらのキーワードは、文献調査、専門家の意見、MeSHなどを通して決定した。
 論文の取り込むポイントとして、2週間以上の時点について、筋力とパワー、柔軟性についてすべての測定値が含まれたことである。さらに、介入期間中および介入期間後の筋力およびパワーの測定値が報告されている場合は、それらも対象とした。もし、効果量の算出が可能な方法(平均±標準偏差)でデータが報告されていない場合は、それぞれの著者に連絡した。著者から回答が得られない場合は、WebPlotDigitizerを使用して、グラフで報告している研究データを抽出した。最終的に41編を抽出した。

対象となったすべての研究から、以下の情報を抽出した
 (a)筆頭著者と発表年
 (b)共同研究者
 (c)SS(自分でSS/人からSS/両方)
 (d)SSの種類
 (e)SSの種類
 (d)参加者のトレーニング状況
 (e)サンプル中の女性の割合
 (f)平均年齢
 (g)エクササイズあたりの平均SS時間
 (h)1SSエクササイズの反復回数
 (i)1セッションあたりのSSエクササイズの回数
 (j)1週間のセッション頻度
 (k)インターベンション期間
 (l)SS強度( 不快指数以下:痛みなし、不快指数:中程度の痛み、不快指数以上:激しい痛み)
 (m)1セッションあたりの反復回数
 (n)1セッションあたりのSS時間
 (o)1週間あたりのSS時間
 (p)SS時間の合計
 筋力とパワーの測定値を抽出することに加え、ROMに関するデータを、含まれるすべての研究から副次的アウトカムとして検索した。さらに、質的評価をPEDroスケールを用いて、対象研究の質を評価した。

4.結果(strengthとpowerは解説せずFlexibilityのみ解説します。)


 Flexibility(以下:柔軟性)は、一番下の段(ピンク)。黒で囲われているものは、メタ解析で有意となったものを表している。
 メタ解析の結果、1回のSSあたりの反復回数が中等度効果を示し、回数が多いほど効果が大きいこと、1セッションあたりのストレッチング時間およびストレッチングの総時間が長いほど効果が大きいことが明らかになった。
 これらの結果は、SS量の重要性を反映しており、量が多いほど柔軟性の向上が大きくなる。例えば、異なるストレッチングtypeの関節に対する効果を調査したメタアナリシスでは、1週間あたりのストレッチング時間が5分以上であれば、1セッションあたりのストレッチング時間が5分未満である場合と比較して、より大きな改善が得られることが示されている。足関節背屈のROMに対するSS別のメタアナリシスでは、ストレッチングの総時間が3000秒未満(50分)、3000~5000秒(50分から83分)、5000秒以上(83分以上)の間で差がないことが示されている。Bandyらは、異なるSS量の効果を検討した研究で、4つの異なるストレッチング・プロトコール(すなわち、360s、330s、160s、130s)を週4回、6週間実施し、対照群と比較した。対照群と比較して、すべてのストレッチプロトコールが膝関節伸展ROMの改善を誘導することを見いだしたがプロトコール間の差は検出されなかった。同様に、Cip-rianeらは、4つの異なるハムストリングスのSSプロトコール(1日2回、1日1回、2日おきに2回、2日おきに1回をそれぞれ1分間)の効果を4週間にわたって検討し、すべてのプロトコールで股関節ROMに同様の改善がみられた。全体として、今回の知見は、SS量が多いほど柔軟性の向上が大きいという文献の一般的な傾向を支持させるものである。

5.興味深い点

 今回のストレッチにおける最新のメタアナリシスの論文を読んでみて、1週間あたりのストレッチ時間つまり量が重要だということが改めて重要なポイントであると感じた。患者への指導として非常に参考になるものと考えられる。
 最低限の効果が出てくる1回のストレッチ時間や週あたりのストレッチ総時間などは定かでない。しかし、この論文の意義は、毎日短時間でも良いし週2−3回のストレッチ時間を長めにして、週2−3回でも良いので、1関節部位の週あたりのストレッチ総時間を5分以上にすることで効果を見いだせるのではないかと思われる。

 

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