【棗いつき 9th Album】HYPNOSONIC感想(後編)

(本投稿には楽曲と特典小説のネタバレに関する内容が多分に含まれております。曲だけ聴いたけど…という人は悪いこと言わないので、回れ右。こんな駄文は後回しにしてきていいから、先に読んできなさい。)

こんにちは。おはようございます。

トレミーと申します。

本投稿は10万字特典小説を読み込んだ後の感想をぶつける「後編」になります。前編では小説を読む前の曲の感想を垂れ流しておりますので、併せて読んでいただけるとより一層、オタクの叫びが楽しめると思います。

そしてくどいようですがお断りしておきますと、今回も前回の例に漏れず、1オタクが情緒ごった返した状態で執筆した感想書き散らしになります。ネタバレはもちろんのこと、語彙力が著しく低下した表現を始めとするオタク特有の表現が苦手な方表現の解釈違いに敏感な方におかれましてはブラウザバックを推奨しております。ご了承下さい。

では参りましょう。




開演前 「夏の残り香」

まず初めにはっきりさせておきたいんですけど、これは「御崎屋 夜日」の物語ではありますが、実質的な主人公ポジは「春樹 麗生」だと思ってます。…いやいや皆まで言うな。確かにこの物語は終始、このシスコンMAX兄貴こと夜日を中心に描かれておりますし、周りで巻き起こる不可解な事件、それを解決に導くヒーロー!って側面からは間違いなく夜日が主人公でしょう。でもこの一連の事件を通して、最も人間的に成長した人物は確実に麗生だと思ってます。成長の内容についてはまた後述するので詳しくは許してほしいんですが、まずこの「夏の残り香」の視点は明言こそありませんが、確実に麗生視点の回想シーンですよね?そしてこのAlbum、「HYPNOSONIC」のキャッチコピー、覚えてますよね?そう「16歳、私の音楽で人が〇ぬ。」。このキャッチコピーの視点が果たして誰の目線か…お読みいただいているであろう聡明な皆様方におかれましては、もう私の言いたいことはお分かりいただけたんじゃないでしょうか?
さて、前置きがだいぶ長くなりましたが、麗生視点で展開されるプロローグ。不穏なキャッチコピーから「何となく音楽で人を殺す話なんやろな…」って前情報だけ抱えていった私からしてみれば、まさにこの瞬間は麗生こそが主人公です。そこに現れてその手を引く「有栖川 歩楼」はまさに「運命構図」といって差し支えないと思いませんか???あとここでの「夏の残り香」はまさに夏の終わりにくすぶっていた感情に火が付いたその瞬間、そのどす黒い感情が滾った記憶、しかし麗生にとっては大切な居場所が見つかった美しい記憶なんですよね。切なすぎる。
この曲の歌詞は全体的に悲壮感溢れる内容でしたが、今こうしてみるとこれって麗生がずっと居場所を求めてさまよい続けていている内容だってはっきり分かりますし、挙句の果てに自分とその音楽を認めてくれたのが歩楼っていうのがね…!私、前編で「闇落ち感ある」って書いてたんですけど、ガチで闇落ちの瞬間を歌っているとは思いませんでした。たむの表現力には毎度感服させられますね!

そして、この二人の邂逅から物語は始まります。

第一楽章 「イノリゴト」

さて、早速ですが前編で私はとんでもない思い違いをしていたようです。
これ絶対「夜日」の心境やん…!JK纏ってたって言ってたのはこの口です。大変申し訳ございませんでした。
…内容に戻りましょう。
しょっぱなから当たり前のようにバーチャル空間全開の世界観+超絶シスコン兄貴(両想い)といった情報の数々と属性の超絶大盛りに思わず笑ってしまいましたが、たむワールドの治安で日常パートが続くわけもなく。衝撃的なニュースで動揺を隠せず、頭の中で独り自問自答を繰り返し続ける夜日。しかし現実は非情なもので淡々と告げられる真実と昏睡した最愛の妹を前にに膝を折るか…と思っていたが、この兄は折れない!いや自分の妹に対しての自信が小説の終わりまで圧倒的過ぎて、もう最強でしたね!(俺はお兄ちゃんだぞ!!)そして夜日の前に現れた「都鹿野 三月」と共に、妹「蝶花」の巻き込まれた事件の陰謀を暴くぞ!…といったところでこの章はいったん幕引きとなります。
いやーーミスリードだったか…?でも改めて曲聞いてみると小説の内容通りの心境まんまなんですよね。あのやったら暗い雰囲気なのはそのせいか!いや当たり前か!じめっとした心情を引きずりながらそれでも妹のために前に進まなければならない苦しさ、そして妹を信じたいという強い気持ちを胸に一歩を踏み出す信念の力強さが感じられます。あと、これは読んでる最中に、これ夜日の曲だ!って理解してから気づいたんですが、イノリゴトの一人称は「僕」なんですよね。たむの一人称として違和感が全くなかったのでそういうもんだと思って完全スルーしてましたけど、まんまとしてやられましたわ…
あとこれは完全に余談ですが、都鹿野先生は絶対ヤニ吸ってる。こんなダウナー気質を備えた先生は、校舎裏の階段とかに腰掛けて絶対タバコ吹かしてる。ほぼ初対面の部外者を学内にホイホイと招き入れるくらいのモラルの人だしね!生徒に見つかったらそっとその子の耳元で「…内緒だよ?」とかやってくれ…!それを見守る草木になりたかった、そんな人生でした。

第2楽章 「Seacret of my heart」

はじめに申しておきます。
この章が一番好きです。
概ね理由に関してはお察し頂けてたとは思います。思いますが、あえて言おう。一番好きだと!
前編にて前述した通り、私、片想いのBig Loveが大好きなんですよ。誰よりも近くで想いを寄せて、でも恋人には発展させられない、だから叶わなくてもいいって抑え続けて、それでも心のどこかでは燻り続ける想い…そういう切なさMAXのお話が大好きなんですわ。

ああ、まあSeacret of my heartはこの子だよな…

(終盤の方に行くにつれて)
え?雰囲気めっちゃええやん…

!?!?!?言っちゃうの!?そうなの!?あなた口に出して言っちゃうタイプなの!?そうなのね!?うわああああああ、やっばい…めっちゃ良い子やん…

あーーー切な…

うん?

…キス、して、だと…?????

え、「キスして」だと!?おいおいおいおい!!!

ここで歌詞回収アッツ!!!

オイ、男見せんかい、夜日ィ!!!


もうね、この感情のビッグウェーブ。
前編の私、これで純粋な片想いBig Loveな曲じゃなかったら怖いとか言ってましたね。
いやもう完璧です。100点満点中100億点。
私この第二楽章終わりまではかなりスラスラと読んでたんですけど、一回ここでスマホ置いて天を仰ぎましたね。だってこんなドンピシャに自分の好みぶち抜かれたんだぜ??むしろ正気保ってられる方が無理ってもんですよ。
そりゃ歌の方の「キスして」もあんな湿っぽくなるわ!!!切なすぎだって!!の!!!
まずこの章は「御崎屋 夜日」と「心井 露李」2人の初潜入っていうのが大筋です。幼馴染の2人だからこそと言いますか、第一楽章の時からそうだったけど、夜日と露李の距離感めっちゃ好きなんですよね…露李はともかくとして、夜日も露李のことをちゃんと信頼してるし、蝶花を除けば間違いなく最も大切に思っていた人物の1人と言って間違いないでしょう。問題はその妹が占めるウェイトが夜日の中では高過ぎたってとこなんですけど…叶わぬ恋というのはキツいものです。自分の好意の正体に気づいて、いや気づいてしまって叶わないと知ってしまえば尚のこと、それが幼馴染に対する感情ともなれば…書いてるこっちまでもがいたたまれない気持ちになってきました。
あと兄の一件から「知らない方が良いこともある」って夜日に訴えかけてましたが、多分それはお兄さんの事だけじゃなかったんですよ。夜日に抱いていた気持ちを自覚してしまったから、自分の恋情は破れることが決まってしまった。お兄さんの一件はあくまでもトリガーでしかなく、多分潜入操作の時からどこかで迷っていたんじゃないかって、そう思います。それでも一度は協力したのは夜日に恋をしていたから。好きな人の頼み事なんて、まあ断れないですよね…ほんとよく頑張ったよ…!

そしてこの2章の物語は衝撃の一文で
終わりを告げるのでした…

第3楽章 「Son macabre」

第二楽章の超超胸キュン展開から急転直下、少しの間息を潜めていたたむワールドが牙を剥き、その毒牙はあの最強の兄、夜日にすらを手にかけようとします。
さあさあついに作中で明言されたのはこの曲、「dance macable(死の舞踏)」もとい「Son macabre(死の旋律)」!私そういえば第二楽章で登場したアイテムに全く触れてなかったな…そう、あのM3会場にて販売されたレコード風キーホルダー!なんと本作中に同仕様のものがまんま登場したんですね!そして夜日が聞いたのはもちろん、私達と同じ「Son macabre」の造語版!多分私含め、キーボードが運良く買えた人たちは本アイテムの登場シーンと「Son macabre」が流れたシーンはニヤニヤが止まらなかったことと思います。もしまだ買ってない人は是非買って欲しい。この年でも作中と同じアイテムかざして笑顔になれるなんて幸せがすぎるぞ!(購入リンクはこちら
まず、この楽曲、「Son mcabre」から考察していくんですが、この曲の視点はまあほぼ確定で「有栖川 歩楼」で間違いないでしょう。元凶である麗生&歩楼のうちどちらかの視点だとして考えると、まあ、人をモルモット呼ばわりしたり、意味もなく破壊衝動を発露したり、歌詞の節々の傲慢さは間違いなく歩楼そのものと言えます。ラスボス感溢れれるスーパークソ治安なのも頷けます。改めて歌詞を見ると目につくのは、突拍子もなくただ壊したい、めちゃくちゃにしたい!というだけのフレーズの数々。そうなんです、殆ど動機らしい動機が語られてないんです。世界を壊したいくらいと豪語するくらいなら、もっと憎しみに満ち溢れた歌詞、例えば親の醜い利権争いに辟易したとか、大きな失恋を経験したとか、思春期の高校生ですからそういった動機付けは簡単に出来たはずなんです。でも歩楼にはそれがなかった。強いて言うなら「その方が面白いから」。高校生にして魔王かこの子は。いやあながち間違いって訳でもないのかもしれません。…詳しい考察は少し後にしましょうか。
アルバムの表題でもある「HYPNOSONIC」について初めて語られた本章では、その元凶の片割れである麗生の元にまで辿り着きます。一時は絶体絶命の窮地に立たされますが、麗生の過去を悟った夜日は彼女をなんとか説き伏せることに成功、したのだが…
さて、後半戦のシーン冒頭はまさに黒幕!悪の研究所発見!ってシチュでしたが、まあ黒幕は黒幕。手の内暴かれてそう易々と捕まる相手じゃありません。ただまあ、麗生の犯行動機には驚かされました…ささやかながらでも人なら誰しもが望む世界一贅沢な願い。「私の居場所が欲しい」。私、てっきり父を殺した有栖川家に復讐するとか、そう言う動機なのかと思ってましたので、斜め上のそれはもう、衝撃的でした。「夏の残り香」の時にも少し触れましたが、歩楼との邂逅はまさに天からの救いにも似た出会いだったと、少なくとも麗生はそういうことだったのでしょう。
そしてその歩楼はといえば小動物のように震えて謝る麗生にむかっての態度は「どうでもいい」「もう飽きたわ」と言わんばかり(人の心)…このバッサリ感、まさに魔王の風格ここに有り。更には裏切った麗生と元より敵意満々の夜日に向かっては「邪魔しなければ手出しはしない」とこれは完全に舐めプかましてるんですねこれ。まあこれ正確には一個先の冒頭部で語られたことなんですが、それだけ親の会社が強いということでもあり、一般人には遠く考えられない価値観で生きているということを示しています。それ故に、私思うんですが、歩楼は人の心が分からない、でもあの日、麗生と会ったあの日の「ハルキ レオ」の音楽に本当に惹かれるものがあったんじゃないのかなって。先程の歌詞の考察の際にもお話しした通り、彼女の動機は実に短絡的で幼稚なものです。逆にそれ故に、あの日の麗生が奏でた音楽は歩楼にとって、ちゃんと「良いもの」として映ったんじゃないでしょうか(そうだといいな)。だからちゃんとした「HYPNOSONIC計画(仮称)」もその時に生まれたんだと勝手に思ってます。

そして物語はクライマックスへ。
残る曲と言えば…


第4楽章 「Son joyeux」

HYPNOSONIC、物語の終幕へ。
事実上のテロ行為を宣言する歩楼に対し、それに対抗する楽曲制作を決意した麗生と被害にあった妹、幼馴染を救うための特効薬を探し続ける夜日。
そしてその双方を導いたのは亡き麗生の父が最愛の娘にこそ遺したベートーヴェン作ピアノソナタ第8番「悲愴」でした。冒頭から出てきたこの「悲愴」ソナタですが、タイトルの通り、いくら夜を重ねても忘れることのできないような深い悲しみを奏でる曲でして、まあ随分とお父様の感性凄まじいな…とは一瞬思わずにはいられませんでした。でもまあこの「悲愴」、ベートーヴェンのソナタでは珍しく本人が直々に命名したことで有名でして、その点においては自分で掴み取るという選択をした麗生にお父さんの思いは届いていたんじゃないかな。これ本筋には全く関係ない話しで申し訳ないんですが、個人的にベートーヴェンには思い入れがありまして…私、中学生まではピアノが弾けまして、その最後中学生弾いた曲がベートーヴェン作ピアノソナタ第14番「月光」だったんです。この「月光」、第23番「熱情」、そして今回の「悲愴」と合わせてベートーヴェンの3大ピアノソナタと呼ばれています。ちょっと久々にベートーヴェンのピアノソナタの名前を目にしてかつてのピアニストとしては少し血が沸る思いでございました。ちなみにちょっとニッチなエピソードとして、ベートーヴェンが健在だったころ、西欧の他国出版の雑誌にベートーヴェンの名前と曲名が本人に無許可で掲載されたことがありまして、その際はベートーヴェン、ガチギレして出版社に鬼電したそうです。怖いですね。私たちもベートーヴェンさんにお会いする機会があれば菓子折りくらいは用意しておいた方が良さそうです。
…随分話が逸れました。春樹家では幸い、娘さんの英才教育は父の深い愛情あっての賜物だったようです。本当に何よりです。(ベートーヴェンは父からモーツァルトのようになれと、スパルタ式の英才教育を叩き込まれていた)
「悲愴」ソナタの導きの甲斐あり、出来るうる限り全ての武器が揃って迎えた当日。当日夜という突発的な告知にでも集う人、人。そして、人。(たむのゲリラ歌枠か?)そこで麗生、いや「ハルキ レオ」は勇気を振り絞ってステージに立ちます。自らの罪を償うため。私に居処をくれた、今も信じてくれる仲間達のため。そしてずっと信じてくれていた亡き父の想いに報いるため。声を振るわせ、歌われたのが、この曲。「Son joyeux」
この曲については前編で口から出せるもん全部出したくらいの勢いで語らせてもらったので、曲の良さについては今更語りません。ただ、私がこの曲を聴いて感じた凄まじい解放感は、間違いなく麗生のものだったのでしょう。仲間を得て、罪を乗り越えて、そして今私の歌を聴いて涙する人が居る。そうして麗生は居場所というものから解放され、真の意味で自由の翼を手にしたと言えるのではないでしょうか。何を歌うかなんて、もうわかっていたも同然なのに歌詞の一文を目にした瞬間、ちょっと色々と思うことが多すぎて思わず涙がこぼれまてしまいました。
「Son macabre(死の旋律)」に対して「Son joyeux」。この曲の意味は何の因果か、ベートーヴェン作交響曲第9番第4楽章(楽章も一緒なの狙った?)の俗称とよく似ている、いや同義と言ってしまおうか。

「Son joyeux(歓喜の歌)」



終演後 「無条件Surrender」

無事に麗生のライブが終わり、事件が終息した後のお話。
露李が目覚め、すべてを公の前で自白した麗生。歩楼も恐らくもう表立った活動はできなくなるなど、各々がそれぞれの道を歩いていく。
後は夜日が、蝶花と感動の再会を果たして大団円…なんですが。
…じゃあこの「無条件Surrender」ってなんだ?と思って読み進める私。
ああ、なるほど。ふっと腑に落ちた。

このシスコン兄貴ィ!

この曲やたらハイテンションで踊りだしそうな雰囲気満載なのは、この時の夜日の心情を100%反映してるからだったのかよ!!!そりゃあ超絶イケメンにもなるわ!!!だって相手が最愛の妹だもんね!!!知ってから歌詞見返したらこの歌詞、めっちゃ浮かれまくってるじゃん!!!この「無条件Surrender」って「全て可愛い可愛い妹の手のひらでした!ああ、もう降参!」ってことやん!!!
一週回ってこんだけ明るい歌がエピローグの表題に使われてるなら、もう安心って感じですけどね!他5曲の背景が背景なだけに、すごく身構えてたんですけど!

…でも幸せならOKです。


というわけでここまでお疲れさまでした。
前編との質の違う叫びがお楽しみいただけたでしょうか(限界オタク)
小説観る前と後で随分と印象が変わったな~というのは勿論ですが、
しっかりと歌詞のネタが小説にふんだんに盛り込まれていて、どの章を読んでいてもすごく読み応えのある小説でした。でも案外スラスラと読めてしまうんですよね…これでいてちゃんと読みやすい文章になってるんだから、
たむには脱帽です。改めて当日早朝ギリギリまでお疲れさまでした。
この通り、めちゃくちゃ楽しませてもらって大満足です!

棗いつき先生。次回作も期待しております。

それでは皆様こんな駄文にご足労頂きありがとうございました!

トレミーでした。

※「前編」時点で約5500時、この「後編」が7300字。端数込みで約13000字の書き散らしになってしまいました。
お付き合いいただきありがとうございました。


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