【脳性麻痺のリハビリ】システム論から尖足を考える

『尖足』と言われてみなさんどんな状態が思い浮かびますか?
また、尖足になっているとどんな場面で困りごとが生まれますか?
本日は『システム論』を基に尖足を考えます

【従来の脳性麻痺のリハビリ】

『尖足』は脳性麻痺のリハビリで難渋する点の1つではないでしょうか。
足首が曲がらないことにより...

・立つことができない
・歩くことができない
・歩けるけど、疲れやすい、転倒しやすいなど。

尖足は立ち上がりや歩行といった動作に大きく影響を与えます。
『尖足』になる原因は【下腿三頭筋】が挙げられます。
下腿三頭筋はふくらはぎの筋肉です。
病院や訪問リハビリでは、硬くなった下腿三頭筋を柔らかくするためにセラピストが一生懸命足首を曲げます。

そこで疑問です。
20分ないし40分。長くても60分前後の時間で改善しますか?
改善後、効果は持続しますか?

従来のやり方では『尖足』に対してはマッサージやストレッチが主流だとおもいます。しかし、マッサージやストレッチだけでは改善しないことが多いです。

【システム論から考える尖足】

『尖足』になる原因の1つに下腿三頭筋があります。
なぜ、下腿三頭筋が硬くなるのでしょうか。

「脳性麻痺で、脳に障害があるから硬くなります」
学生に聞くとこんな答えが返ってきます。
しかし、この答えでは脳に原因があるということになります。
脳が原因...
私たちセラピストは脳を直接触ることができますか?
某手技を学んでいる方からはできると回答されたことがありますが...

話を変えます。
『首が座っていない子どもが体格にあっていない座位保持装置を使っている』
どんな反応をすると思いますか?
首が座っていない=不安定ですよね
そんな子どもが身体に適していない座位保持装置に座っていても安定しません。
結果、安定するためには身体や手足を一生懸命座位保持装置に接触しようとしますよね。
例えば...
座位保持装置に接触するために腰の筋肉である『広背筋』が過剰に働きます。しかし、広背筋は『下腿三頭筋』とも連結しています。
この場合、下腿三頭筋のマッサージやストレッチを一生懸命しても意味がないですよね。お子さんが安定して座ることのできる座位保持装置の検討や『広背筋』を柔らかくする必要があります。

歩くことのできるお子さん。
けど、歩くのが不安定で首や両手でバランスを取りながら歩行練習をする。
お子さんが頑張って歩いている姿をセラピストやご家族が応援する。
その歩行練習に意味がありますか?
歩行が不安定な場合、首周囲の筋肉に負担がかかります。
首周囲の筋肉も背中の筋肉や下腿三頭筋と連結しています。
この場合、歩行練習を中断することで1つの手段になるかもしれません。

システム論を唱えているベルンシュタインは
「人間の身体には多くの筋、関節があり、さらにそれらを制御するための運動ニューロンを考慮すると冗長な自由度がある」と言っています。
人間の身体を制御するには莫大な要素が関わります。
『尖足』だから下腿三頭筋をマッサージ、ストレッチするだけでは不十分です。また、人間の行動は『運動課題』『個人の要素』『環境の要素』が影響します。

運動課題:座位保持装置に座る、歩行
個人:脳性麻痺児
環境:座位保持装置、リハビリ室

上記の例えを分解するとこうなります。
この3つの要素に分解して現状を考えてみませんか。
脳性麻痺の原因は『脳が障害を受けているから』以外に考えられると思います。

次回は『尖足』に関係する筋肉について解説していきます。

※兵庫県尼崎にて脳性麻痺児者・家族の支援活動を行なっています。
ご興味のある方はこちらから(^^)

【筆者自己紹介】
 2013年理学療法士免許取得。その後、上田法・ドイツ筋骨格医学会日本アカデミー・PNFなどの知識や技術を勉強しています。現在は兵庫県尼崎市にて子どもと親のマッサージ教室を開催。 

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