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【有料記事をやってみた】前々回記事:短編『恋の路』の続き。

前回、前編で11000文字の短編小説の冒頭1000文字を記事にしてみました。

この短編は、短編集を書籍化した時に入れていたお話だったのですが、最近、少し文章の勉強をしたうえで加筆修正したので、もう一度出してみようと思いました。
そして、3年間noteをやっていて一度も有料記事をやってなかったので、遊び的に有料記事をやってみたくなりました。
あ、お付き合いで読まなくて大丈夫ですよ!
やってみたかっただけなので😁

冒頭の入り方が分かりにくかったので少し過失修正しています。
あと、web小説っぽく、段落のところで一行空けてみました。

上に貼り付けの記事で、1000➡4000文字にして、前までよりたくさん読めるようにしました。
お付き合いいただける方は、そちらで十分うれしいです(^_^)v



『恋の路』(石川県 珠洲市 恋路海岸の伝承)  /  著:PJ

 
 ガラス窓を背にする私の目の前には健次(けんじ)が立っている。 

 楽器の音のしない軽音サークルの練習部屋は、主(あるじ)のいないうち捨てられた城に似ていると、私はいつもそう思う。

 そこには、かつての繁栄、舞踏会の喧騒、熱い恋の物語の、まぼろしだけが存在しているような感じがした。

 私の所属する、大学の軽音サークルの学内練習場は、防音設備がない普通の教室で、そこにはドラムセットといくつかのアンプと、簡単な音響設備があるだけだ。

 私が到着した時、部屋には健次だけだった。メンバー四人での音合わせまでまだ時間があったので、私は何気なく先日の私が出席できなかったサークルの飲み会の話をした。それはいつものたわいもない話のつもりだった。しかし、その話はいつの間にか、私を海の底に引きずりこむように、私を捉えようとしていた。
 
 埃っぽい部屋を侵食するように、せわしない蝉の声がガラス窓を通り抜け、八月の強烈な太陽が私をじりじりと焼いた。健次はさっきまでの軽いしゃべり口を止め、真剣な顔で黙ったまま私を見つめていた。
 
 もうそれ以上、話さないで。
 
 私は早くこの暑い日差しから逃げたいと思った。健次がその場所をどいてくれれば、日の当たらないところに移動できるのに。

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