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時空警察NoT -Chapter 6/6-

「・・・え?・・・消えた・・・?」

確かに、光一には拳銃を撃った記憶がある。鈍い音がした記憶もある。なのに今、遺体となっているはずの「彼」の姿がまるでない。ほんの一瞬の出来事だ。

空島が後ろの千里を引き連れて、つかつかと歩み寄る。

「奴は、舞洲 鶴見(まいしま つるみ)という。自称『時空の流浪人』。この部署ではもう見飽きたくらい、お馴染みの厄介者だ。このように未遂で終わらせて、現行犯逮捕ができないように仕向けてきやがる。律儀なことに、ひと月に一度だけ。実に鬱陶しい!」

「空島部長、それを顧みた上で?」

「どうせいつものごとく、撃たれる前にバックレるだろうと踏んでな。まあ、撃ったところで正当防衛と言い張って我々の手柄にするつもりだったがな」

「・・・引き鉄をひくの、やっぱり怖いです。まだ、ほら・・・」

つい数分前に覚悟を決めた光一の右手の人差し指が、小刻みに震えている。険しい顔をしながら差し出したが、空島は無情にそれを振り払う。

「震えずに、躊躇なしに、撃てるようになれ。時空警官だけじゃない、この国の警官はすべて、場合によっては相手の生命も失わせなければならない」

少し間を置いて、ぽつりとこう付け足す。

「もちろん、自分の生命を失うこともある」

光一が固唾を飲む時間を持たせず、空島の後ろでモジモジしていた千里が喋り出す。

「はははははじめの一歩!はじめまして!私の名前は津雲 千里(つぐも せんり)です!苗字は覚えなくていいんでせんりちゃんと呼んでください!自分の名前、気に入ってまして。ふつつつつか者ですがなにとぞよろしくお願いいたします!好きなポテチの味はバタークリーム味です!」

「よ、よろ・・しく・・」

その更に後ろでは、藤木が頭を抱え込んでうずくまっている。

「だまされたあああああっ!くやしいいいいいっ!うわあああああっ!」

「あっ、さっきの髪の毛燃えてた人!大丈夫?酔っ払い追っ払ってくれてありがとう!」

そう言って、千里は藤木の手をギュッと握る。

「え?あ?あ、あーあー、あ・・・」

藤木は完全にのぼせ上がり、声を発せなくなってしまう。なにしろ、女の子に手を握られるなど、産まれて初めての経験なのだ。

「・・・やっぱ、死ぬのやめとこ。こわいし」

あまりにも緊張感が緩んでしまったため、光一は思わず首を傾げる。

「タイムパトロール、続けられるかなあ、俺・・・」

初出勤の日の空はとても穏やかで、とても日常的だ。

-完-

#連載 #ライトノベル #PoNoT #NoT #時空警察NoT #最終回 #はじめて完結させられた中編のお話 #とにかく1話ぶん書くという目標は達成 #続くかもしれない #来年また会えるかもしれない

サウナはたのしい。