【考察】THA BLUE HERB 「RIGHT ON」

かつてのヒップホップの歴史を語る上において、ブラックパンサー党、黒人解放運動については触れなければならない必須事項ではある。そういった世の社会的な表現が日本のヒップホップの歴史を語る上でも実は音源として数多く存在する。本日はその音源の一つを紹介する。

THA BLUE HERB 「RIGHT ON」
4th album  「TOTAL」 収録

例にならい、歌詞を全てそのまま転記するのは差し控える。
この作品は2012年にリリースされた作品で、いわゆる「2011.3.11」の翌年にリリースされた。日本人であれば、いや、世界中の誰もがこの日付を忘れることはないだろう。数多くのアーティストが「3.11」関する音源は出してはいるものの、ここまで明確に己の意見を提示し、己の属しているカルチャーをレペゼンし、批判や揶揄を恐れずに人を鼓舞するための歌詞を書いてる曲というのは数少ないのではと思う。この曲はその数少ない人の心を動かす曲である。
冒頭はあの悲劇について触れていきながら、旅立った者、残された者への哀悼のリリックから始まる。そこからは、悲観するのではなく、時の経過や人の生き方を語っていっていく。そんな中で自らの属するカルチャーの立場や役割がどういうものであるかと言うことを交友のあるラッパーの名前を挙げながら高らかに宣言をしている。
ここについては、震災の際に感じたのも勿論、コロナ渦や、世界的な紛争を目の当たりにした時に、誰しもが考えうる自己感情の中で、自身が一体社会へどれほど貢献しているのか、といった疑問に他ならない。いつも感じることではあるが、彼のリリックの凄いところで、時代を超えて自己の内面部分と重ねて聴くと非常に心が動かされるラインであることがよくわかる。
そこから徐々に聴いている者を鼓舞する歌詞に変わっていく。その中にもソウルミュージシャンの名前を引用したり、CDの値段をあえて数字で表したりの音楽的要素であったり、勿論冒頭からではあるが、ライミングやフローといったものは耳心地がよく、音楽的作品として聴いても完成されたものであることがよくわかる。そして時には腹の中で味を占めた売名目的の人間に対しての強烈な皮肉を挟みながら、ハッキリしない世の中に対して自分達の存在証明を高らかに宣言し、戦い続ける重要さを語っている。
ここまでの考察を聴いてわかったとは思うが、彼のリリック多くの部分は、「自己」「自分」についてであり、これはヒップホップ的な表現で言うところの基本的なところである。「自分」と周りを対比することによって己の逃げ道を無くし、それにより言葉の説得力が生まれていくことに他ならない。
それを体現しているのがこの音源であり、THA BLUE HERBといったグループなんだと推察する。
最後にお気に入りのラインを紹介し終わりにする。

"覆い隠されたままの日本の傷を
曝け出すのが hip hopの義務と"

"吠えたきゃ吠え 咬みたきゃ咬め
後ろ指刺されたって 振り返って中指立て
あいつが最初にやったって奴になれ
我、線香花火には興味ありません" 

"味占めたストマックがほざく you don't stop"

"今日もはっきりしねえ空模様 だからこそ
ここではっきりさせる雑青葉の登場"

THA BLUE HERB
RIGHT ONより引用


はい、というわけで。
皆様明けましておめでとうございます。
年明け一発目は音源考察していきました。
いや~ブルーハーブはやはり凄い。
パンチラインだらけ。
当たり前だよ、なんて言われそうですが。笑
是非音源もチェックしてみてください。

今年も宜しくお願い致します。

それでは、また。

※1/12 誤字訂正してます。失礼致しました。

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