【1日1文献】化学療法誘発性末梢神経障害による異常感覚を呈した悪性リンパ腫患者に対する作業療法 ─理容師としての復職を目指した症例─#がん#感覚障害#職場復帰

参考文献:化学療法誘発性末梢神経障害による異常感覚を呈した悪性リンパ腫患者に対する作業療法 ─理容師としての復職を目指した症例─
筆者:佐久間 由香五百川 和明藤田 貴昭山本 優一甲斐 龍幸
発行日:2019年
掲載元:作業療法38 巻 (2019) 6 号
検索方法:インターネット
キーワード:がん(化学療法誘発性末梢神経障害)感覚障害職場復帰

【抄録】
・化学療法誘発性末梢神経障害による異常感覚を呈した悪性リンパ腫の症例に対し,理容師としての復職を目標に作業療法を行った.
・症例は,両側手指末梢に痺れや痛みを主体とした異常感覚を有し,巧緻動作が困難であった.
・作業療法では,巧緻動作練習,書字や箸操作の課題志向的練習,さらに理容作業練習を段階的に行った.
・結果として,症例の異常感覚の変化はわずかであったが,巧緻動作は可能となり,理容師として復職できた.
・このことから,異常感覚を有した手の使用を促進するためには,脱過敏療法を参考とした段階的な物品操作課題や,課題実施において手の健常感覚部位の触覚を活用すること,また症例の役割に立脚した目標と作業練習が重要と考えられた.

メモ
・造血器腫瘍 の化学療法として用いられているビンカアルカロイド 系抗がん剤のうち,悪性リンパ腫の治療で用いられる ビンクリスチンは,容量依存性の末梢神経障害を引き起こす

・ビンクリスチンによる化学療法誘発性末梢神経障害(Chemotherapy Induced Peripheral Neuropathy;以下, CIPN)は,治療開始から数週間以内に軸索障害を起因として発症し,そ の初発症状は指趾先端の異常感覚や腱反射の減弱であり,特に手指先端の異常感覚が現れやすいのが特徴で ある1,3).
・このCIPN は,神経細胞体の機能が比較的保たれていることから,早期の抗がん剤投与の中止に より症状の回復が期待できる1,3)
・しかしながら,多 くの患者は抗がん剤投与の中止や減量を望まず4),化学療法期間中は CIPN の症状を抱えたまま日々の生活 を送ることになる.

・R-CHOP 療法は,CHOP 療法で使用される抗がん剤 のシクロフォスファミド,ドキソルビシン,ビンクリ スチン,プレドニゾロンに加え,リツキシマブを併用 する治療であり、びまん性大細胞型 B 細胞リンパ腫 の進行期における標準的治療である.
・通常は 21 日間 を 1 クールとして 6~8 クール行われる
・CHOP 療法 1 クールのスケジュールは,シクロフォスファミド,ドキソルビシ ン,ビンクリスチンが 1 日目に,プレドニゾロンが 1~ 5 日目に投与され,それ以降は休薬期間となる.
・この CHOP 療法の前日あるいは当日にリツキシマブが投与されるのが,一般的な R-CHOP 療法のスケジュー ルである.

・森岡10) によると,痛みなどの理由で患肢を使用しな くなることで,自分の意のままにならない自己身体への嫌悪感が生じ,最終的に仕事など社会に復帰できない理由を痛みに帰結させる場合がある.
・症例においても,異常感覚による手の不使用が当初認められたが, 様々な物品操作課題を通して痺れや痛みへの慣れが生 じ,異常感覚を有しながらも作業ができることの経験 を通して,自身の手に対する前向きなイメージを形成 することができたと思われる.
・さらに,目標とした理 容作業を退院前に実際に経験できたことが,症例の自信を回復させ,退院後の復職につながったものと考え られる.

参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jotr/38/6/38_698/_pdf/-char/ja 

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