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疲れていても絵を見たら元気になった (約1400字)

パリでは5つの美術館に行きました。どの美術館もそれぞれの個性があって、心に残っています。私のように絵が好きな人にとっては、パリはたまらない場所でしょう。どこへ行っても絵が山ほどあるので、その数に圧倒されます。

行く時の飛行機で眠れずに疲れがたまっていたし、たどり着くまでに苦労してぐったりしていたことも多かったです。でも良い絵や彫刻の前に立つと、背筋が伸びて心が弾むのを感じました。芸術作品の名作には、見る人を元気にする力があると改めて感じました。

一番最初に行ったのは、ギュスターヴ・モロー美術館です。重厚で見る人の心を揺さぶる、モローの作品が数多く展示されています。ここはモローの自宅を美術館にしたもので、昔のヨーロッパの住宅の雰囲気が感じられるのも好ましかったです。部屋を貫いている螺旋状の階段には、ヨーロッパ独特の美を感じました。中の雰囲気に浸っていると、21世紀を離れて、19世紀ごろのパリにタイムスリップした気持ちになります。

モローが使っていた家具も置いてあって底光りがしており、大切にされてきたことが分かりました。ヨーロッパの場合は過去の文化が、ありふれた椅子やソファーなどにも蓄積されており、歴史と文化の厚みを作り出している気がします。

ギュスターヴ・モロー美術館には、ミュージアム・パスを使って入りました。これは日本で購入できます。このパスを持っていれば、パリの多くの美術館で優先的に入場できるので、便利です。

ミュージアムパス

次に行ったのはダリ美術館です。ここはモンマルトルにあります。ガイドブックを読むと、モンマルトルはスリなどの軽犯罪が多く、治安が悪いと書いてあります。でも行ったのは朝だったので、犯罪に巻き込まれることはありませんでした。空気が澄んで、鳥の鳴き声が聞こえて美しい場所でした。芸術家たちに愛されたのも分かる気がします。石畳の道自体が、過去のパリと今のパリをつないでいるのではと思いながら、美術館に向かいました。

この美術館には、絵だけではなく彫刻やオブジェも多く展示されており、ダリの多面的な才能を知ることができます。ここに行くまでダリの絵以外の作品のことはよく知らなかったので、新鮮な感動を覚えました。例えば有名な「柔らかい時計」の彫刻もあります。

ここでダリは極度な愛妻家だったことを知りました。妻のガラの写真があって、それを見ると普通の女性で美女とは言い難いのですが、作品の中では美しく描かれており、そのギャップが可笑しかったです。ガラを通して普遍的な女性の美しさを表現しようとした面があり、その思いが結晶化したのが炎に焼かれる女性の苦しみを表現した彫刻です。神秘的な美しさと気高さを感じました。この彫刻は目に焼き付けようと思い、一度見た後もう一度見に行きました。その場から立ち去りがたかったです。

ダリは文学をモチーフにした作品を多く書いていたことを知りました。文学が大好きなので、これは嬉しかったです。例えば、『ドン・キホーテ』を主題にした連作があり、その中に原爆に立ち向かうドン・キホーテが描かれています。荒唐無稽と言えるかもしれないのですが、自分が生きている時代と切り結ぼうとした気概に心を打たれました。

お読みいただき、ありがとうございました。長くなったので、次の記事で残りの美術館のことを書きます。

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