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組織変革は失敗がデフォルト

残念なことですが、組織変革は失敗の方が成功よりも多いです。「そんなことはない。ほとんど成功している」と思う方は、変革DNAの備わった組織に属しているのでしょう。しかし私の経験上、そういう組織は稀有です。

私が組織変革のプロジェクトをクライアントから要請されるとき、多くの場合、社内ですでに同じテーマの変革に取り組んでいます。それがうまくいかないから声がかかる、というケースが多いです。ですので、初めてクライアントに伺ったときは、何をどう行い、どこで躓いてしまったのかを確認します。

そういう話を何百例も聞いているうちに、躓く要因の共通項が見えてきました。下図はそれをまとめた資料です。少々極端な言葉遣いになっていますが、経営幹部にお見せすると「ウチのことですね」とため息まじりに苦笑されることが多いです。

組織変革がうまくいかない理由

ゼロベースでフレッシュスタートしよう

ただ、ここに出てくる躓き要因を一つずつ排除しても変革はうまくいきません。躓く真因を解決しなければ、モグラ叩きになってしまいます。

真因解決のためには、別の方法で変革を組み立て直す必要があります。ですので、我々が組織変革支援を請け負うときは、過去の取り組みがどこまで進んでいようと、一旦ゼロベースに戻して再出発します。ゼロベースに戻すのは、これまで社内で変革推進を担ってきた方々に受けが悪いです。私も同じ立場なら、同じように苦い顔をするでしょう。しかしフレッシュスタートが、結果的には近道になります。

というよりフレッシュスタートする、というメッセージが変革初期にとても重要な意味を持ちます。これまでも変革に関わってきた方々にとってフレッシュスタートに対してマイナスとプラスの捉え方が交叉します。大抵がマイナスといっていいでしょう。「またか」、「今までは何だったんだ?」、「何が変わるんだ?」、「いつまでやればいいんだ?」、「また失敗だろう」…。無理もないです。無意味なことを繰り返し強いられているという感覚は、希望や意欲を奪います。

今度こそ上手くいくはずとという灯火のメッセージ

だからこそフレッシュスタートをどういうメッセージで伝えるかが、とても重要になります。メッセージを発するとき、聞く側は「成功を信じていない」というつもりで、メッセージを草案する必要があります。

冷めた人々に発するフレッシュスタートのメッセージには、「もしかしたら今度こそうまくいくかも」と思ってもらえるような【理屈と熱意】が必須です。

メッセージに込める理屈

メッセージを聞く側は、まず理屈をチェックします。変革メッセージを構成する理屈は、シンプルでわかりやすい方がいいでしょう。「そもそも理屈が理解出来ない」と受け止められてしまうと、そこで終わってしまうからです。課題、原因、真因、解決の方向性をシンプルに構造的に組み立てて、「理屈はわかった」という状態をつくることは必須です。

しかし理屈だけで勝負してはいけません。「わかる」と「得心する」は異なるからです。「あなたの理屈はわかったが、それがうまくいくかどうかは別問題」。そう考える人が必ず出てきます。そして、その疑念は事を始める前のメッセージだけでは払拭できません。まだ始まっていないのですから。疑念を持つ人にも一理あるのです。

メッセージに込める熱意

そこに熱意が必要になります。「もし新しい変革の工程が上手くいかなければ、素早く新しい策を考え出す。成功に至るまで絶対に諦めない。道程が険しくとも必ずゴールに辿り着くつもりであり、その意思に一点の曇りもない」。そこまで熱意を持って言い切ることから「もしかして今度はうまくいくかも」という希望の一筋が滲み出てきます。

「もしかしたら今度はうまくいくかも」と感じる人達がマイノリティでも構いません。一穴あけるだけでいい。スタート後に疑っている人たちの疑念を一つずつ解消していけばいいだけです。

理屈が得意な人が発する変革メッセージの要点

「この人の思考は深く理にかなっている」。そう感じる方々にお会いすることがあります。Deep Thinker。お話を伺えば伺うほど惹きつけられます。

こういう方々がメッセージ発信するときに陥りやすいトラップがあります。聞き手が自分と同じ程度の理解力を持っているという前提で話してしまうことによる、伝達情報喪失です。「何を言っているのかわからない」という反応になってしまう懸念があります。熟慮も伝わらなければ効力を持ちません。Deep Thinkerは、Simple Talkerになって、深い考えをシンプルに伝えることで初歩トラップを回避しましょう。

熱意溢れる人が発する変革メッセージの要点

「この人は熱い」。そう感じる方々にお会いすることもあります。Soulful Passionist。同じ場にいるだけで胸が熱くなる。ビジネス・プロフェッショナルとしても人間としても魅力に溢れています。

こういう方々がメッセージ発信するときに陥りやすいトラップがあります。熱意という情動は他のネガティブな情動に結びつきやすい傾向があります。熱意が受け入れられないときに立ち上がる失望や怒りを抑えきれないと、感情に支配された失言で無用な反感を買ってしまうことがあります。Soulful Passionistは、Cool Talkerとして熱い想いを冷却材に包み、冷静な語りで初歩トラップを回避しましょう。

成功要因を盛り込もう

理屈と熱意のメッセージを打ち出した後は、組織変革のエッセンスを盛り込んで組み立てたプロジェクトを推進するだけです。

次回以降、組織変革のエッセンスについて語っていきます。

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