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ライブ録音をただの記録から作品にまで仕上げるための方法(その1)


はじめに

 みなさんライブしてますか?コロナ禍でそれどころじゃないって感じもありますけど、僕はといえば8月から徐々に再開してるって感じです。徐々にっていうか8月だけで3本のイベントに出たのでわりと飛ばし気味だとも思いますが(当社比)

 さて、久しぶりにライブ活動を再開するにあたり、実はこれまでサボったり忘れたりしてなかなかできなかった「ライブの時に演奏を録音する」っていうことをちゃんとやろうと思い立ちまして、8月にやったライブでは全ての現場でPAさんに送る2MIXのステレオアウトをパラって録音したんですね。以下が様子です

 
 モジュラーシンセの横にレコーダーが置いてありますね。録音するだけじゃなくて演奏中のタイムカウンターにもなるのでたいへんべんり


なぜ録ろうと思ったのか

 ちなみに今までほとんどライブの録音をやってこなかった理由っていうのは「めんどくさい」とか「レコーダー持ってくの忘れた」っていうのもそうなんですけど、結局のところ「単なる記録やアーカイブ以外のなにものでもない」「あとで自分で聴き返すことがほぼない」「作曲用の音素材としては長尺すぎたり音がレイヤーされすぎてて扱いにくい」の3点に尽きます。

 が、コロナ禍の影響で僕に限らずいろんな人のライブがTwitchやYouTubeで配信され、しかも場合によってはアーカイブもされていつでも誰でも観られるようになってしまった。
 もちろん僕が8月に出演したライブは3本中2本が配信ありで、うち1本に関していえば配信専用のスタジオからの完全無観客配信という状況で、しかもこれってもはや珍しくもなんともないわけで。

 そうなってくると、これまで「単なる記録やアーカイブ」くらいにしか思ってなかったものが僕の中でも世の中的にも大きく意味を持つようになってしまったんですよね。
 
 で、意味を持ってしまったならこれを自分の手でコントロールしたくなるのがアーティストの人情ってヤツで、「8月のライブの中からベストテイク(あるいは他のテイクも)をキッチリ整音してライブアルバムとしてリリースしよう」と思いついた次第です。

 まぁ生々しい話をするならBandcamp Fridayがあるからマネタイズもしやすいかなというのも理由の一つですが……。

ちなみにこちらがその作品です。ライブレコーディングに特化したエクストラアルバムシリーズ「The Extra-Ordinary」という位置づけで、その第1弾となります。無料でフル試聴できますが、もしよろしければ買って頂けると大変ありがたい笑


ノウハウの共有

 また、せっかくなのでライブアルバムの副産物として「2MIXからリリース用の音源を起こすためのミキシング、マスタリングのノウハウ」を公開しようと思いまして。前から書こう書こうとは思ってたんですが、なんせライブが半年以上なかったもんだからなかなかタイミングがなくて今に至るってワケ。

 ライブの時の2MIXのステレオアウトをとりあえず記録用だったり後から聞き返して反省点を探すために録ってる人っていうのは結構いると思うんですよね。僕の周りにも結構います。
 それにコロナ禍で自宅からライブを配信したり演奏動画をYouTubeで公開したりって人も増えましたし。

 ただ、それらの活動が一過性で終わって残らなかったり、残ったとしてもなんだかイマイチに聴こえちゃって公開には至らなかったり……っていうのが少しでも減って世に出てくるものが増えればその方が豊かだと思うんですよね。

 まぁでも今回の内容はかなり長くなりそうなので、連載形式で何回かに分けていきます笑

 では第1回いってみましょー


第1回:録音

 制作から公開までのプロセスを順に追っていくわけですが、第1回目は当然「録音」です。

 録音自体はちゃんと録れてさえいれば道具もフォーマットも別になんでもいいんですが、それを言ってしまうと身も蓋もないので一応ちゃんと書きます笑

 そもそも身も蓋もないという意味では、2MIXよりはパラで録る方が編集のやりやすさや自由度からいってそれがベストです。ただ、これにはMTR機能を持ったミキサーや多chオーディオインターフェースとDAWが必要になります。
 自宅からの配信ならともかく、ライブの現場に演奏用の機材や楽器とは別にそれらを抱えていくのはあまりにも大変なので、さっきも言ったように「後で聴き返せればいいだけだからとりあえずポータブルレコーダー持ってってそれで録る」というのはままあることだと思います。そしてお分かりだとは思いますが、その前提で話を進めます笑


録音に使った機材や録音フォーマット

 僕は自分のライブは全て「SONY PCM-D100」というDSDレコーダーでDSD 2.8MHzで録音し、その後PCMの32bit float/96KHzに変換してます。


 DSD録音で録る理由は音の良さを買ってるというのもありますけど、それ以上に「僕のモジュラーシンセの音、あるいは僕の音楽性にはDSDの音質・音色が合う」というのが一番大きいです。

 これがテクノとかノイズミュージックとかになってくるとまた話は変わってくると思います。DSDのなめらかで柔らかい音よりもPCMの芯がくっきりしたカタい音の方が合うかもしれませんので、そこは自分の音楽と相談してください。

 モジュラーシンセなら4msのレコーダーモジュールをインストールしておくとわざわざレコーダーを持っていく手間が省けるかもしれません笑

 演奏の模様を録画しておいて後から動画の配信をするところまで見越しておくのなら、ZOOM H1nやRoland R-07といったスマートフォン用のUSBオーディオインターフェース機能を持ったレコーダー、あるいはZOOM Q2n-4KとかQ8みたいなカメラを持っておくと便利です。

 映像込みで録るという意味ならRoland GO:MIXERでもいいんですが、あれはスマホがないと話にならないので、どうせなら価格的には大差ないH1nの方がマイク付き単体レコーダーとして機能するぶんツブシがきくかなぁと……。


実際に録る時の接続方法

方法としては、

PA卓の手前でパラって録る場合
 ・二又のケーブルや分配コネクタを使う
 ・DIのThru Outから信号を引っ張る
 ・手元のミキサーのMonitor OutやTape Outを使う

PA卓以後で信号をパラって録る場合
 ・PA卓のAUXなどから信号をもらう
 ・ハコの録音サービスを活用する(ただしCD-Rの場合も……)

 などが主でしょうか。

PA卓から信号をもらうパターンは会場の設備やPAさん次第なので難しい場合もあるかと思います。
 あと会場に最適な鳴りとなるよう卓のEQやフェーダーなどを通ってるので、録音サービスを使わず自分のレコーダーで録音をお願いしたい場合は、できればプリEQで録っておきたいところです。プリフェーダーでもらうのはマスト。

 これが自宅スタジオからのTwitch/YouTube配信ということであれば、単純にステレオアウトの信号をオーディオインターフェースに送って(あるいは内部ミキサーでループバックさせて)OBSで録画したのち映像データをDAWに取り込んで音声信号だけ分離するとかでいいと思います(Nuendoだとそれができるんですけど他のDAWはよくしらないです、すみません……)。


ライブ後できればすぐしておきたい処理

 ライブ終わって帰宅したらすぐ風呂入って寝たくなりますけど、その前にとりあえずバックアップは取っておきたいところ。
 気力がまだあるうちにレコーダーのSDカードを抜いてPCにコピーし、できればその時点でフォーマットの変換などがあればついでに済ませておければベストです(DSD→PCM、サンプルレートやビットレートなど)。
 この作業をズルズル先延ばしにすると最終的にマジで何もやらなくなって、ただのストレージの肥やしになります笑

 欲を言えばAudacityのひとつも立ち上げて頭とお尻のいらない部分はカットしておくとかもやりたいところですけど、まぁそんな気力はフツー残ってない笑

 ひとまずここまで済めば、いよいよ次の工程=DAWでのエディットになります。


おわりに

 というわけで第1回終わり。

 トラックメイカーやマシンライブの経験者からすれば当たり前すぎるようなことを書いたような気がしますが、このコロナ禍で「さぁチャレンジしてみよう!」と思う人も多いと思いますので、まずはこんな感じで。

 この後に続く作業はいわゆるDTM的な作業になるので難易度は上がるかもですが、とはいえなにも電子音楽に限らずバンドマンやクラシックの演奏家の方々にも有効な方法です。
 いずれにせよ、とにかくこのコロナ禍の状況では録れないと(撮れないと)どの分野でも活動していく上で話にならない状況となってしまったので、まずは文化庁の補助金なり10万円の給付金なりでレコーダーの1台も買ってみるというのはどうでしょうか……。



本事業は「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う京都市⽂化芸術活動緊急奨励⾦」の採択事業です。


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