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穴 セイテンノヘキレキ

わかってしまった
あたしの穴が空いた理由
そういう事なのか


私は影谷かげたにみづき 28歳
背中に穴は空いているが、普通に会社員として働いている。
もちろん、背中の穴は普通なら見えない。

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今日は久しぶりに親友の谷中直美やなかなおみとランチの日。
何年ぶりだろうか。
何年会ってなくても、昨日の続きの用に会話が始まるのがまた良い。

家の前で待っていると、直美の車が目に入った。
私は大きく手を降る。
彼女は大切な存在なのだ。

車が私の前に止まる。
「久しぶりー元気だった?」
と、車に乗り込む私をジッと見つめる直美。

「何?」

「まだダメみたいだね」

「は?」

「背中だよ、この前よりは小さいけど
まだまだ空いてる」

「!!見えるのっ?」

「言わなかったっけ?
お葬式の日にもうあったよ
その前からあったけどね…
あたしが帰る時に背中叩いたの覚えてる?」

「うん、ずっと背中撫でてくれて、最後にとんとんって
で、大丈夫だよって…」

「うん、あの時ね、何かいたんだよね
だから引っこ抜いたw」

「あ…そういえば…
何?グニュってしたよって言ったよね
思い出したわ」

「ねー、この前背中に穴空いてますよって知らない人にも言われたの」
私は鈴山実優すずやまみゆとの話を
直美にする。

とりあえず、ランチ行こか、と
直美が車を走らせた

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お互いの近況報告や懐かしい思い出話に
花を咲かせたあと、本題に入る

「あのね」
直美が口を開いた

「前からあったんだよ。背中の穴は。
みづきの抱えきれない物が溢れるために
必要だったの」

「見えるほど大きくなったのは
おじさんが具合悪くなったのがきっかけで、間違いないと思うよ」

「でお葬式の日にみづきに会ったら
中に何かいるじゃん!
うわ、これは…と思って引っこ抜いたんだよ
もう浄化したから、それは平気だけどね」

「だけどね、みづき」

直美はジッと私の目を見て言った

「穴を空けてるのもみづき
中にいる変なヤツもみづきなんだよ
わかるかな」

「あたしが…」

「そう。やり切れない気持ちにあんたが耐えきれなくて、逃げ場として穴を空けて気持ちを外へ吐き出してた。

中にいたのは気持ちの擬人化したもの。
浄化したって言ったのは、哀しみに凝り固まってあまりに苦しそうだから、解放したんだよ」

鈴山実優すずやまみゆから聞いた話とほぼ同じ。
直美の方が力が強いから、そこまで見透かされたのだ。

原因は私
私が弱いからこうなったのか…
なんて事を考えていると

「あんたが弱いからじゃない
誰にでも起こる事なんだよ
自分に何も影響がないから、みんな気が付かないだけ
何がきっかけかなんて、誰にもわからないんだよ」

気がつくと、私は泣いていた。
背中から何かが出ていくのを
微かに感じながら…



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