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足の前にスタートラインを引くという考え方をしたいです

色々と考えごとが多かった近頃は全く本を読まずの生活でしたが、ようやくその時間を取りました。

宮武 蘭 著『アイアム カタマヒ』

脳内出血により右半身麻痺となった宮武さんの闘病体験です。闘病記にありがちなポジティブ過ぎる表現や演出的なそれがなく、「それをただ受け入れる」という視点に大きな共感を抱きながら読めた一冊でした。また、含みのある終わり方もよかったです。続きを読みたくなります。

本書では、右半身麻痺となった宮武さんのリハビリ記録を具体的に知ることができます。ところで、リハビリという言葉にはどんな意味があるのか?と気になり調べてみました。

熊本保健科学大学Webサイトでの解説によれば

リハビリテーションは英語で書くとRehabilitationになりますが、その語源はラテン語のRehabilisと言われています。これは「再び」を意味するReと「適する」を意味する「Habilis」が組み合わさったものです。直訳すると「(人が)再び適する状態になる」ことを示すわけです。

ということらしいです。

宮武さんは絵画製作という楽しみをお持ちです。しかし、利き手であった右手が麻痺となり今までのようには描けない。それでも、以前は半分左利きであったこともあって、リハビリ初期段階の彼女は自由の利く左手で絵画製作を続けます。本書のカバーでも確認できる見事な作品のタイトルは『Re:Start』です。

このタイトルと「リハビリ」という言葉の意味を知った時、「リスタート」という言葉の方がしっくりくるな、と思いました。
なぜなら、失ったものを取り戻すというアプローチよりは、失った状態を起点として再出発することの方が現在・未来志向を生み過去に囚われないで済むと思うからです。

欲張りな私は、過去にできていたことがスムーズにできなくなった一部のことをとても悔しく思う瞬間があります。それを受け入れられればよいのですが、それができずに過去の能力や気力を取り戻そうと老いに抗い、その結果いつまでも物足りなさや喪失感を抱くという悪循環に陥っていることを痛感しています。
老いは抗うものではなく受け入れるものですね。つくづくそのように思います。このような自身の体験も大いに踏まえて、リハビリよりもリスタートというアプローチが適していると思うのです。

では、「リスタート」とは何か?ということを説明する時の私には、「過去との決別」とか「今だけを生きる」という抽象的なボキャブラリーしか持ち合わせていませんでした。
それに悶々としていた昨夜、あるラッパーの歌詞を聞いて「これだ!」と思ったんです。リスタートとはこのことだと。
それは、「自分の足の前に線を引けばそれがスタートラインになる」というものです。過去がどうであれ、眼の前にスタートラインがあればそれは正にリスタートですよね。

そのラッパーとはFRANKENさんのことです。ラップバトルでは「老害」とディスられることもありますが、その生き様やリリックはとてもカッコいいです。ちなみに、同年代です。推し活的にその歌詞を紹介させてください。

転んで泣いて立ち上がって 立ちはだかる目の前の壁にひれ伏して それでもgive up出来なくて 汗ダクで駆け出して 勝てなくて挫けそうになって

だが物語の主人公が立ち上がる限り ストーリーは続くんだ 挫折の味を知ってるか こんなに辛いもんはないさ 奈落の底に落ちる気分 なんとか正気を保つ自分

夢見た場所に見放され 再起不能と感じても 気持ちの何処かに希望があるなら 止まらず前見て走って行こう 涙ぐんだ目こすりながら

バカと言われても懲りなかった 逃げる事が怖かった
だから夢をずっと追い続けて来た 裏路地で1人潰れていた 自分の居場所を求めていた 顔で笑って心で泣いて 周りに愛想振り撒いて 冷えた心に愛を求めて

栄光に近道なし 地道な努力が実を結ぶ解けたシューレースまた結ぶ 約束の土地で会おうと誓う
躓いた時は足元見て 自分の足の前に線を引けばそれがスタートラインになるはずさ パッー!!

シコって寝ろ (feat. あべみかこ & K-JACK) by FRANKEN 

featuringしたあべみかこさんのYouTube公式チャンネルでこの曲のMVを確認することができます。気軽にgive upできない性格の方はぜひご視聴を。

「過去に囚われるな」とか「未来を見ろ」という考え方は最もなことなのですが、それを助言する時には具体的な言葉を用いたいものです。大切なこと故に。

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