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太陽光発電のCO2排出量とペイバックタイム

発電時にCO2を排出しない太陽光発電(再生可能エネルギー)ですが、一方で再生可能エネルギーは化石燃料や原子力に比べてエネルギー密度が小さいことから同じ電力を得るのに規模を大きくする必要があります。
環境への影響は比較的小さいものの資源消費や社会との調和は課題であり、適正な廃棄物処理や資源循環が必要だと前回の記事で紹介しました。

今回の記事では、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーや各種発電方式でのCO2排出量とエネルギーペイバックに関して紹介していきます。


<データ・資料に関しての注記>
以下で紹介するデータ・図表等は各発行元の資料によるものであり、それぞれ異なる結果となっています。
各資料の前提条件や数値の整合性は確認しておらず、全体的な傾向の把握を目的として掲載しています。
またあらゆる地域や個別の事例について、以下で紹介するデータ等が該当するものではありません。


発電方式による二酸化炭素排出量

発電そのものでCO2を排出しない再生可能エネルギーですが、製造時などライフサイクルを通じてのCO2排出量を考える必要があります。

発電方式の違いによるライフサイクルCO2排出量は様々なデータが公表されており、再生可能エネルギーによる発電はライフサイクルを通してもCO2排出は小さいと考えられています。

各電源のライフサイクルCO2排出量比較(引用元:資源エネルギー庁
各発電のライフサイクルGHG排出量比較(引用元:米国エネルギー省
発電・蓄電技術のライフサイクルGHG排出量比較(引用元:NREL
ライフサイクルでのGHG排出量(引用元:UNECE

一方で化石燃料による発電は燃料由来のCO2排出量が大きく、CCS(Carbon Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯留)を併用しない限り、CO2排出量を抑えるのは難しいと考えられています。

エネルギーペイバックタイムとは

製造から運転、廃棄にいたるまでの発電におけるライフサイクルでのエネルギー源の性能の表す指標として、『エネルギーペイバックタイム(EPT、Energy Payback Time)』があります。
ライフサイクルを通じて投入されるのと同じエネルギーを、発電によって節減できるまでに必要な稼働期間を表し、これが短いほど優れていることを示します(詳しい定義はこちらから)。

太陽光発電の場合、ライフサイクル中の投入エネルギーはその殆どが設備の生産に要したエネルギーとなり、これにメンテナンスや廃棄時に要するエネルギーが加わります。

同様に、温室効果ガス排出量で見て元が取れるまでの期間は『CO2ペイバックタイム』と呼ばれ、この数値が小さいほど温暖化抑制効果が高いことになります。

太陽光発電のエネルギーペイバックタイム

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の報告書によれば、太陽光発電によるエネルギーペイバックタイムは2~3年程度となっています。
本資料が2009年時点の数値であり、現在は太陽電池モジュールの性能向上などから、さらに少ない年数となっていると考えられます。

太陽光発電システムのエネルギーペイバックタイムとCO2ペイバックタイム(引用元:NEDO)

ドイツの研究機関Fraunhofer ISEの直近の資料によれば、屋根置きの太陽光発電でエネルギーペイバックタイムは2年を下回る結果になっています。

屋根置き型太陽光発電システムのエネルギーペイバックタイム(引用元:Fraunhofer

少し古いデータですが、既存の発電方式や他再生可能エネルギーとの比較を参考に紹介します。
(2008年時点の資料のため、最新のデータではないことに注意が必要)

発電方式によるエネルギーペイバックタイムの比較(引用元:産総研

リサイクルによるCO2削減効果

太陽光発電(再生可能エネルギーによる発電)が多くの資源を必要とするものの、ライフサイクルを通してのCO2排出量が従来の発電方式と比べて小さいことを見てきました。
一方で、資源消費の観点から太陽光発電所の撤去・廃棄時には適正なリサイクルを通じた資源循環が求められます。

適切なリサイクルを進めることは、資源循環を実現することに加えて、CO2排出量の削減といった点でも有益だと考えられます。

太陽光パネルのリサイクルによるCO2削減効果(引用元:資源エネルギー庁

資源の安定供給やコスト削減、CO2排出量削減など、リサイクル技術と回収スキームの重要性が明らかです。

まとめ

発電時にCO2排出がない太陽光発電(再生可能エネルギー)は、ライフサイクルを通してのCO2排出量は少なく、数年でエネルギー・CO2をペイバックできます。
製造時のエネルギー消費などを考慮しても、数年以内に回収できると考えられており、温室効果ガスを削減できる効果が期待できることから気候変動対策として有効な手段と考えられます。

持続可能な太陽光発電にはリサイクルによる資源循環や環境負荷低減が求められますが、さらにリサイクル技術や適性なリサイクルシステムの構築が必要となります。



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参考資料