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はがゆい人間同士のすれ違い、人生におけるリアルな切なさを描き続ける小説家 朔彩人さん

ハッピーエンドはあまり好きではなくて。
現実って、そう簡単にうまくいかないことの方が多いですよね。
僕は、人間味のある、日常生活の中のリアルな感情に近いものを小説の中で描きたいんです。
そして、その小説を読んで、一人でも多くの方が何かを感じてくだされば、こんなに嬉しいことはありません。

そう言って、はにかむ若き小説家、朔彩人さくあやとさん。

彼の描く作品はその言葉通り、おとぎばなしのような綺麗な終わり方はしない。
かといって、奈落の底に読者を突き落とすような、腹黒いエンディングでもない。

「おぉ、そうくるか」という予想外の展開の後に描かれる彼のフィナーレは、複雑な人間の感情を垣間見せながら、主人公が静かに、目の前の現実を受け入れる切ない終焉が多い。

最終的な着地点は、ハッピーエンドと同じなんです。
例えば恋愛を描く小説であれば、両想いだと最後にはお互いが気付くのですが、現実は違う人と付き合って終わる、というように。

うむむ。
実に切ない…。

朔彩人の世界観

優しく、知性を感じる独特の言い回しと言葉遣いで綴られる、彼独自の世界観。
「小説家 朔彩人」が生み出す、淡く、切ない物語は、SNSや小説投稿サイトで彼の小説を読んだファンの心を、しっかりと掴んできた。

彼が小説を書く際にインスピレーションを受けるアイテムの一つが音楽。

彼は幼い頃から両親の聴く音楽に影響を受け、ジャンルを問わず様々な楽曲に触れてきた。

特にオーケストラやピアノの音が重厚に響く、厚みのある音色に惹かれるという彼は、「機動戦士ガンダム」や「進撃の巨人」のTVシリーズの音楽を手がける作曲家、澤野弘之さわのひろゆき氏の大ファンだと言う。

澤野氏の創り出す音楽は、自分の中に眠る何かを抉り出されるような、荘厳で深い音色が織りなす独特の世界。
切なく、聴く人の心の琴線に触れる旋律は、彩人さんの小説の世界観にもどこか似ている。

澤野氏以外にも多彩なジャンルの音楽をよく聞く、と言う彩人さん。
そのアーティストの楽曲、歌詞の世界観からインスパイアされて描く彼の小説が、また秀逸なのだ。

彼のインスタグラムには、心に響いたアーティストの楽曲から着想を得て書き起こされた短編小説が、何編か掲載されている。
読む者の想像力を掻き立てる写真と一緒に表現される作品たちは、彼にしか描けない唯一無二の世界観を魅せてくれる。

「春隣(はるどなり)の天使に捧ぐ」

GReeeeNさんの『おまじない』という曲から着想を得て書き上げた、という私の大好きなこの作品も、実に切ない終わり方をする、きゅんとくるお話。

2-3日でさらっとこの短編小説を書いたという彼は、主人公の実年齢よりは遥かに若い。

にも関わらず、主人公の揺れ動く心の動きと、ある女の子に抱く不可解な感情をリアルに描き、そして、最後に「あぁ・・・」と誰もがため息を漏らす結末へと誘う。

他にも切なさ一入ひとしおの作品たちが彼のインスタグラムには掲載されているので、是非ご一読あれ。

Instgram 朔 彩人
https://www.instagram.com/asahi_matudo_0927/?hl=ja

高校時代のエトセトラ

彼の魅力的な作品は、短編小説だけに止まらない。
現在、小説投稿サイト「Nola」に連載中の「月が綺麗だと素直に言えたなら」は、とある高校生男女の日常を描いた長編小説。

初恋の君の一挙手一投足に心震わせ、気の置けない仲間たちとの平凡で何気ないやり取りの中で感じるさまざまな想い。
誰もが一度は学生生活の中で経験したことのある何気ない日常と、登場人物たちの交錯するリアルな心情を、彼独自のユーモアで包みながら赤裸々に描いていく。

その中心にあるのは、主人公の切ない恋物語。

高校2年生で同じクラスとなった男女5人が織りなす、甘酸っぱくも切ない青春の一ページは、読む者を「懐かしきあの時代」へとタイムスリップさせ、無邪気で、何事にも真っ直ぐだった「あの頃の自分」の姿を思い起こさせてくれるのだ。

読んでいただく方に、昔こんなことあったよね、という当時の思い出を懐かしんで欲しい、という想いと同時に、恋愛という一つのジャンルを通じて、幼く、未熟な男女がだんだんと成長していく様子、その過程でいろいろなことを学んでいく姿を描きたい、伝えたい、という想いがあります。
恋愛って楽しいことばかりじゃないですよね。

自分自身も登場人物の世界に入り込み、こんな場面だったらこの子はこんなセリフを言うだろうな、という視点で物語を書き進める彩人さん。

この物語のベースとなっているのは、ご自身が大切な仲間と過ごした、高校時代の記憶。
無邪気で、何に対しても真っ直ぐだった、あの頃の鮮やかな景色。

小学生の頃はインドア派で、どちらかといえば大人しい子供だった彩人さんは、高学年の時に出会った友人達の影響で、次第にアクティブな学校生活を過ごすことを楽しむようになっていく。

中学、高校時代とサッカー部に所属し、チームの司令塔である「ボランチ」のポジションを任され、守備の要として活躍。

そして、「月が綺麗だと素直に言えたらなら」の主人公、鈴木蓮すずきれんも、サッカー部員。

物語の一シーンで、思いを寄せる同級生の女の子、大園芽依おおぞのめいから「放課後『いつメン』(いつもメンバー)でファミレスに行かないか」、と誘われた蓮は、部活の練習があるから、と止むなく断るシーンがある。
大好きで入ったはずのサッカー部なのに、この時ばかりは恨みがましい気持ちを抱かずいにられなかった蓮は、はやる気持ちを抑え「オフの日に誘ってくれ」と返事をする。
そしてその後の、大園芽依の無邪気なセリフ。

「あ、蓮!」
「部活頑張れー!」

大きく振られた手。
初めての下の名前での呼び捨て。
初めて会ったときのような華やかな彼女の笑顔。

もうこれだけで、恋の魔法に堕ちている高校生男子は、俄然やる気になり、その後の部活動にメラメラと闘志いっぱいで参加する。

この小説の中には、こんなほんわりとした、誰もが経験したことのある「あの頃」の恋愛の情景と、登場人物たちの心の繊細な移ろいが、彩人さんの言葉で丁寧に描かれている。

「クラス」という、独特の縛りの中で過ごす最後の学生生活の中に刻まれる、かけがえのない時間。
今思い起こせば、どうでもいいようなことに全力を注ぎ、一致一憂した初々しくも尊い思い出の日々。

そんな青春の一ページを読者の心に思い起こさせる恋愛小説「月が綺麗だと素直に言えたなら」は、現在、絶賛連載中。気になる方は↓からご一読されたし。

Nolaノベル 月が綺麗だと素直に言えたなら 朔 彩人
https://story.nola-novel.com/novel/N-a45b1619-be01-448b-ae83-cb851e42efe9

小説家 朔彩人のできるまで

彼の小説は、構成や登場人物のキーとなるセリフ、伏線などをかなり細かく作り込み、しっかりとしたプロットを練り上げ、それを元に日々の執筆作業の中で実際の物語に仕上げていく。

もし時間が許されるなら、一日中でも書き続けていられる、という彼は、根っからの小説家気質と言えるのではないだろうか。

彼が小説を書き始めたのは大学2年生の時。
そもそも、頭の中でいろいろなストーリーを想像すること、文章を書くことが好きだった彼は、当時夢中になっていたアイドルグループのメンバーをモチーフとした小説を書き始める。
兼ねてから彼の頭の中にあったストーリーに似合うアイドルグループのメンバーを登場させ、彼の最初の小説が完成する。

もともとは趣味の延長として書き始めた小説は、自分を素直に表現する大切な表現手段の一つとなり、いつしかその言葉を受け取ってくれる「誰か」に届くことを想像しながら書くようになっていく。

そして迎える就職という関門。

ライターとして出版社への就職を希望していた彼は、就職活動の厳しい現実にぶち当たり、早々に方向転換を迫られる。

そして、大学時代に4年間続けていた居酒屋でのアルバイトの経験から、人と関わる仕事も好きだと感じていた彼は、営業職の内定をもらう。

コロナ禍での厳しい就職活動の末、やっと勝ち取った就職先。
しかし、彼はこの仕事をたった6ヶ月で辞めてしまう。

組織で働く中で感じた違和感と、さらに強くなる小説家になりたいという想い。
当時は、なかなか思い通りにいかない現状に焦りもあり、このままではいけない、と一念発起した彼は、両親に仕事をやめたい、と相談を持ちかける。

そして彼の「小説家になりたい」という熱い想いを、やさしく受け止めてくれた両親の存在。
父親の言葉が、彼の背中をそっと押してくれたという。

「大学に行かせるまでは親の義務。その後のことは、自分の好きにすればいい。
お前がやりたいと心から思い、見つけた夢ならば、精一杯おいかければいい。」

なんとあたたかく、心にグッとくる言葉だろうか。

その言葉に、改めて気持ちが引き締まったという彼は、自分の夢を叶えるために小説を書く時間をしっかり作ろう、と強く決心し、ライティングに関連する仕事を見つけ、ホッと一息ついた矢先。
彼が働いていた店舗がクローズする、という悲劇が襲う。
そして、その仕事も2ヶ月ほどで辞めることになり、再び就職活動を再開。

様々な葛藤の末、焦ってもいいことはない、と腹を括った彼は、書く時間を確保するために、給料は決して高くはないがプライベートの時間をしっかりと取れる今の仕事を選ぶ。

現在、彼は生計を立てるための仕事をこなしながら、仕事が終わった後の夜の時間や休日を使って、物語を書き続けている。

そして、彼の小説家としての姿勢は、実にストイックだ。

将来的には小説家一本で生計を立てたい、と考える彼は、書き続けることが全てにつながると信じて、毎日必ず文章と向き合い、言葉に触れる回数を意識的に増やしているという。

自分の思い描く夢に向かって着実に一歩ずつ歩み続ける彼の書く文章は、今後もますます洗練され、SNSや小説投稿サイトのみならず様々な場所でその輝きを放っていくことだろう。

愛すべき「銀魂」という作品

多くの小説家は得てして本好き、漫画好きが多い。
彼も小さな頃からたくさんの本に触れてきた。
そんな彼の心を掴んだのが空知英秋そらちひであきさんが書いた「銀魂ぎんたま」という漫画。
江戸時代末期の町中に、人類と宇宙人が共存する、という独特の世界を描いたこの漫画は、下ネタや他のアニメを問答無用でパクるのは日常茶飯事、ハチャメチャで、なんでもありの世界観が青少年たちの心を鷲掴みにしている、漫画、TVアニメ共に人気のシリーズ。

一見、なんでもありの、不真面目て適当な世界観に見えるのですが、ふとした瞬間に描かれる真面目さや人情深さ、といったところが、グッとくるポイントですね。
そしてキャラクターの設定が一人一人しっかりしていて、人としての個性も確立されているところが最大の魅力です。

実は彼の小説も、この「銀魂」の影響を随所に受けているという。
彼の小説に出てくる登場人物の心境を描写する際に、様々なセリフや、銀魂のキャラクターたちの立ち振る舞いから、インスピレーションを得ているのだ。

一見、彼の描く切ない世界とは無縁のようにも思えるが、時々その文章の中に顔を見せるユーモアのルーツは、この作品にあるのかもしれない。
そんな観点で彼の作品を読み直してみるのも、また面白い。

これからのこと

現在は「月が綺麗だと素直に言えたなら」という長編小説の執筆に全力を注いでいる彼だが、次の物語の構想もしっかりと頭の中で形になりつつある。

自分でもかねてから書いてみたいと思っていたテーマである、「いじめ」、「病気」、「命」を題材にした小説。

彼が小さい頃から読んできた本の中には、母親の影響から、医療に関連する小説や親子関係を描いた物語など、「命」をテーマにした作品が少なからずあったという。

一見、重いテーマでもあるこれらの題材が、彼独自の言葉や表現のフィルターを通すとどんなストーリーとなるのか、とても興味深い。


さて、短編も長編も手がける彼が、その世界観をどのように自分の中で描き分けているのか、ふと興味を抱いた筆者が質問をぶつけてみると、こんな答えが返ってきた。

自分の物語を頭の中で映像化したときに、一本の映画やドラマとして成り立つくらいの厚みがあれば、長編として書いていきます。
一方で、コンパクトでパッと読みやすいものにおさまれば、短編として書いていく感じでしょうか。

ここで出てきた「映像化」というキーワード。
元々映画を見ることが大好きという彼は、自分の作品が将来映像化されることを想像することがあるという。

自分が書いた作品が、リアルな人間の演技と音楽とで物語として映像化され、別の視点で見られることに憧れますね。
自分がメガホンをとるというよりは、他の人が自分の小説からどういう世界観を描いてくれるのか見てみたい、という想いが強いです。

言葉だけでは表現できない、ビジュアルのイメージや音楽で彩られる、物語の新しい世界。

自身で動画を作ることにも興味がある、という彼は、インスタグラムに掲載している短編小説の予告編のような動画を作成し、TikTokなどにアップすることも、将来的には視野に入れているという。

人と違う観点がユニークで面白い、と捉えられる今の時代。
小説の世界も、既存の文字だけの世界を飛び出して、新たな手法で未だかつて見たことのない、新しい世界を魅せてくれる時代なのかもしれない。

新しいことにもチャレンジしながら、自分の小説の世界をストイックに追求し続ける小説家 朔彩人さん。
最後に、ご本人に「小説家 朔彩人」の一番の魅力を聞いてみた。

恋愛小説でいうならば、「恋愛」それ自体の物語を描くというよりは、「恋愛」という感情の中で芽生える、登場人物たちのリアルな心情を描くのが好きなんです。
生々しい当事者の気持ちの動きや心情の変化、とにかく、綺麗事ではない人間の「リアル」な部分に執着するのが好きなんだと思います。

別の例えで言うならば、特撮物のスーパー戦隊より仮面ライダーが好きなんです。
スーパー戦隊は、途中負けそうになると、パワーアップアイテムをゲットし、最後には必ず勝つ!というストーリー展開が多いですが、仮面ライダーは人間模様をよりリアルに描く、奥深い設定が多い。
かっこいい演出、ありきたりな物語の構成だけではなく、人間として壁にぶち当たる部分をリアルに描いているんですよね。
そんな小説を、今後も書いていきたいと思っています。

お互いを想いながらも、すれ違いを避けることのできない「人間」という不器用な生き物。
小説家 朔彩人が描く、はがゆく、切なくも、優しいストーリーは、これからも多くの読者の心に響き、たくさんのファンの心を魅了していくことだろう。




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