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ブルーノ・メジャー『Columbo』

ロマンチックな楽曲に甘いヴォーカル、洗練されたサウンドプロダクションで人気の男性SSW、ブルーノ・メジャーの新作アルバム『Columbo』(2023年)。日本盤CDはBEATINKから2023年7月21日に世界先行リリースされます。この日本盤CDの解説を書かせていただきました。このnoteでは、ブルーノ・メジャーのこれまでの活動やおすすめの楽曲などを紹介します。

まず簡単に略歴を。ブルーノ・メジャーは1988年イギリス生まれのシンガーソングライター/ギタリスト。大学ではジャズを学び、セッションギタリストとしてキャリアをスタートさせる。2014年にEP『Live』でデビュー。その後、2017年にファーストアルバム『A Song for Every Moon』、2020年にセカンドアルバム『To Let a Good Thing Die』、そして2023年に三作目のアルバム『Columbo』をリリースする。

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Bruno Major - Columbo
まず最新作のアルバムタイトル曲です。ブルーノ・メジャーはコロナ禍のロックダウンが終わるとすぐにアメリカ西海岸へ渡った。そこでヴィンテージのメルセデスベンツを購入し、アイボリー色の車体から「コロンボ」と名付けるも、交通事故で大破してしまう。この曲はその時の悲哀を歌にしたもの。ジャケットデザインも、大破したコロンボがモチーフになっている。

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さて、ここでブルーノ・メジャーの初期楽曲から順を追って聴いてみよう。

Bruno Major - Home
2014年のデビューEP『Live』より。ギターやキーボードの弾き語りの全4曲で、アレンジも演奏も荒削りなところがあります。でも、演奏する姿はめちゃくちゃ格好良い。彼が26歳位のときの映像です。

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Bruno Major - Home
2016年から毎月1曲ずつ12曲の楽曲を発表し、2017年にはそれらをまとめたファーストアルバム『A Song for Every Moon』を発表する。この「Home」は、上でも挙げた2014年のEPに収められていた曲の再演ですが、新ヴァージョンの方がモダンで洗練されたサウンドに生まれ変わっている。これは共同プロデューサーのファイロ(Phairo)の功績が大きい。

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Bruno Major - Places We Won't Walk
ファーストアルバム『A Song for Every Moon』からもう一曲。個人的にはアルバム中いちばん好きな曲です。ほぼピアノだけをバックに歌うシンプルな曲ですが、ロマンチックな楽曲を甘いヴォーカルで歌うスタイルから、世界中で少しずつ注目を集めることになる。

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Bruno Major - Nothing
2020年リリースの二作目『A Song for Every Moon』より。彼の楽曲の中でも代表曲のひとつ。メロウな楽曲を甘美なヴォーカルと洗練されたサウンドプロダクションでまとめている。これもファイロとの共同プロデュース。歌詞に「任天堂」という言葉があって、途中でマリオのゲーム音が入っている。

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Bruno Major - Old Soul
二作目『A Song for Every Moon』からもう一曲。こちらはより16ビートが強調されたR&Bテイストの曲です。ドラムの打ち込みも抑制が効いていて、すごくイギリスっぽいサウンドだなぁと思う。

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stories ft. Bruno Major - My Funny Valentine
ブルーノ・メジャーがゲスト参加した曲も聴いてみましょう。これは米国LAで活動するバンド、ストーリーズの楽曲に参加した際の映像。アコースティックなアンサンブル、ブルーノ・メジャーのファルセットヴォイスがすごくきれいです。

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Eloise - Who's She
ブルーノ・メジャーは他のアーティストの楽曲もプロデュースしている。これは英国の女性SSW、エロイーズのアルバム『Somewhere In-Between』(2021年)に収められている曲。スウィートで切ないメロディの名曲で、ブルーノ・メジャーらしさが発揮されている。

ちなみに、ビリー・アイリッシュがエロイーズの曲を"絶対的に美しい"とSNSで賞賛したことから、エロイーズ&ブルーノ・メジャーが多くの音楽ファンの注目を集めることになる。こちらの映像です。

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Laufey - Regent's Park
ブルーノ・メジャーはミュージシャンズ・ミュージシャン的な側面もあり、多くのアーティストが彼の楽曲をカヴァーしている。これはアイスランド出身で米国で活動する女性SSW、レイヴェイがカヴァーしてる動画。彼女自身が演奏する3本のチェロのアンサンブルが素敵です。

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민니 of (여자)아이들 (MINNIE of (G)I-DLE) - Nothing
ブルーノ・メジャーの曲をYouTubeで検索してみると、いろいろな人がカヴァーした「Nothing」がヒットする。やはりこの「Nothing」という曲は圧倒的な人気があります。特に韓国ではブルーノ・メジャーの人気がすごくて、こちらは韓国のMINNIE of (G)I-DLEという男女デュオによるカヴァーです。

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Bruno Major - We Were Never Really Friends
最後は最新作『Columbo』からの一曲で締めましょう。アルバムに先立って何曲か先行シングルが発表されていますが、最初にリリースされた曲がこちら。この曲からは英国のロックバンド、クイーンの影響が伺えます。ブルーノ・メジャーの音楽的ルーツはジャズにあるのだろうけど、クイーンやエルトン・ジョンのような英国の音楽家、さらにランディ・ニューマンやポール・サイモンといった米国の音楽家も好んでいることが分かる。

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コロナ禍でたまった鬱憤が、彼を自由の国アメリカに向かわせた。そして愛車コロンボを失ったことでクリエイティヴィティの泉が決壊してこのアルバムが誕生した。これまでになく彼自身のパーソナルかつ根源的な魅力が詰まったアルバムとなっている。ぜひ日本盤CDを手に取っていただけたらと思います。

2023年7月20日 渡部 徹 (pwm)

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おまけの一枚(一曲)は、ブルーノ・メジャーの意外な一面に焦点を当ててみます。

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