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Magalí Datzira / Des de la cuina

スペインのバロセロナで活動するマガリ・ダッチラ。彼女のファーストソロアルバム『Des de la cuina』が2023年はじめにリリースにされ、特にシングルカットされたアルバムタイトル曲「Des de la cuina」が各所で話題になりました。

3月25日にはインパートメントから日本盤CD『デス・デ・ラ・クイナ』がリリースされるのですが、僭越ながらわたくし(渡部)がライナーノーツを書かせていただきました。このnoteでは、ライナーノーツで触れた映像や補足情報を交えて彼女の音楽を紹介したいと思います。CDを聴きながら、ライナーノーツとこのページをあわせて読むと、彼女の音楽がより楽しめると思います。

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まずはシングルカットされたこの曲から。日本語にすると「キッチンから」という意味。アコースティックなアンサンブルに彼女の透明感あふれるヴォーカル。まるで地中海の柔らかな日差しのようなナンバーです。MVでも彼女がキッチンで料理を作って食べたり、ガラケー(!)でメッセージを送る姿を見ることができます。

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時代は遡って2009年、YouTubeで観ることのできるおそらく最初期のマガリ・ダッチラの映像だと思う。彼女が12歳のころの映像のようです。彼女は幼い頃からベースを演奏してきましたが、ここではソロでヴォーカルをとっているのが面白い。バンドマスターのジョアン・チャモロ(Joan Chamorro)は彼女のヴォーカリストとしての才能にいち早く注目していたようです。

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上で挙げたジョアン・チャモロはスペインのジャズアーティストの育成に注力していていて、今を輝くアーティスト(アンドレア・モティスなど)を多数排出している。これはジョアン・チャモロとマガリ・ダッチラの共作名義ですが、ある意味彼女のデビューアルバム『Joan Chamorro Presenta Magalí Datzira』(2014年)。ストレートなジャズ・ヴォーカル作品です。

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アルバム発表後はジョアン・チャモロの元を離れて、自分だけの音楽に向き合うことになる。これは2019年の屋上でのセッション。マガリ・ダッチラはここではエレキベースを演奏している。最新アルバム『Des de la cuina』に収められている「Move out」の原曲ですね。

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同じく2019年、フランスのLe Natioでのライヴ映像です。ビル・ウィザースの「Ain't no sunshine」をカヴァーしている。マガリ・ダッチラはヴォーカル&ダブルベース、そしてサックスを演奏しているのはマガリの兄のIscle Datzira。終盤のオーディエンスの盛り上がりにぐっと来ます。

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2021~2022年は、マガリ・ダッチラ名義で多数のシングルをリリースしているほか、他アーティストと積極的にコラボレーション作品をリリースしている。彼女の試行錯誤の時期だったのだと思う。これは2022年に発表したシングル。

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そして2023年、ファーストソロアルバム『Des de la cuina』をリリースする。2022年に1年間かけてじっくり制作されていて、アルバム前半は弦楽トリオとの共演が中心、後半はアコースティックギター弾き語りのシンガーソングライター的な曲が中心となっている。中でも僕の好きなアルバム終盤に収められている曲「Cançó de bressol」です。美しいピアノとスキャット〜コーラスの名曲で感動する。

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『Des de la cuina』からもう一曲。このアルバムはドラムやパーカッションが入っていないのがサウンドの特徴になっているのですが、唯一パーカッションが入っている曲がこちら。タイトル通りサンバのリズムが小気味好いナンバーに仕上がっている。

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以上、マガリ・ダッチラのファーストソロアルバム『Des de la cuina』についてご紹介しました。CDのブックレットには各曲の歌詞のようなものが掲載されているのですが、実は歌詞ではなくて、各曲にインスパイアされた「詩」が掲載されています。詩を眺めながら曲を聴くと、曲のイメージがさらに膨らんで来ます。ぜひこちらもチェックしてみてください。

2023年3月24日 渡部 徹(pwm)


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