それは、齢50位の女性である。
分からないのだ、彼女の下腹部はぷっくりと膨れ、妊婦のようであった。
私は、彼女に席を譲ろうと彼女のことを見た。
しかし、彼女は、ソレが分かる物もつけていない。
ここで私が｢お席、譲りましょうか｣と言ったとする。
彼女が私の憶測の通り妊婦である場合｢ありがとうございます｣や｢もうすぐ降りるので｣と何らかの肯定的なやり取りが生まれ、Twitterのネタにでもなるのだろう。
しかし、彼女がただの胃下垂や中年太りの場合、私に対してなんて失礼なやつだと思うだろう。怪訝な顔をして｢結構です｣や、嫌味ったらしく｢ありがとう｣と言われ、私は失礼な奴としてあと二駅、この車内で我慢しなければならないのだ。
と、うだうだと考えているうちに彼女が下車してしまった。
ああ、今日も善行を行えなかった。