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2023年6月に読んだ本

ああ、もう7月も終わろうとしているけど、けど・・・・・

角田光代『希望という名のアナログ日記』小学館

著者にとって、作家になることは夢でなく、目標であり、
他のことはわからないので「作家にならないと困る」と思っていたという。
「何かになりたい、何かがほしいと思ったら、
漠然と夢を見るのではだめで、そうなるための、手に入れるための、
正しい努力をしないといけないのだ」
自分は夢が叶う、というきらきらしたものが自分の人生には
存在しないので、その都度目標や目的をひねり出してきたと作者は言うが、
結果として「作家になる」という夢のような出来事を
成し遂げているのである。

青山美智子『猫のお告げは樹の下で』宝島社

神社の猫が教えてくれる葉っぱに書かれたキーワードのお告げ。
キーワードを通じていろいろな人に伝えられる言葉は、
ひとつひとつが皆作者が大事に思っていて、
みんなに伝えたいと思っていることなのだろう。
『鎌倉うずまき』よりは猫の方がミステリアスな存在として自然かも。
登場人物も、一般の人という感じで身近に感じた。
自分も就活に苦労したので、就活生の話に特に共感。
ただひとつ、実家も近くにあるのに、
夫の実家で舅と同居を選ぶ嫁はいないんじゃないかなぁとは思いつつ。

寺地はるな『どうしてわたしはあの子じゃないの』双葉社

『大人は泣かないと思っていた』が面白かったので次にこれ。
前回も思ったのだけど、
谷川史子とかいくえみ綾とかのマンガの読後感と似ている。
恋愛成就を夢見るだけじゃなく、
うまくいかないこともあることを知っている大人の少女マンガというか。
田舎の街と幼馴染間の片思い、都会から来た美少女という組み合わせ。
田舎の負の面を書きつつ、重すぎず、
若者の爽やかで甘酸っぱい青春を書いている。

角田光代『大好きな町に用がある』スイッチ・パブリッシング

旅のエッセイ集。
東京を旅する外国人を見た時の気持ちに共感。
台湾に行きたくなった。
著者が好きなのはタイらしい(特にタオ島)。
のんびりしたいときに読むのによさそう。

垣谷美雨『もう別れてもいいですか』中央公論新社

「夫源病」という言葉を初めて聞いたのは、
上沼恵美子さんの発言が話題になったときで調べたら2018年で5年前。
この小説の連載は2019年からスタートしている。
作者の垣谷さんは話題になっていることをタイムリーに題材にすることが
上手だなと思う。そしてつい手にとってしまうネーミング。
こんな抑圧された環境でお金のために離婚できずにいる人が
沢山いて、この本を読んでスッキリしている世の中ではなくて、
皆が「ここまでひどい夫はいないでしょ」と思いながら読んでいる
世の中であってほしいと思う。

山下賢二・松本伸哉『ホホホ座の反省文』ミシマ社

京都旅行時にホホホ座浄土寺店でつい購入した本。
良く知らなければてっきり、「自分らしく」とか「丁寧に生きる」的な
おしゃれ本屋の主張を集めた本なのかと思ってしまうじゃないですか。
そういう風潮に対する危機感を持って、反省文として書いている。
個人的に印象に残ったのは、
閉店前になって懐かしむ人で店があふれる現象への厳しい一言。
「無くなると決まってから嘆いても手遅れです。
最終日に一斉に駆けつけるのは、
目撃者としての意識がそこに足を運ばせているだけです。
<最後だから>優先順位を一番上にあげたにすぎないのです。」

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