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0630「毒物オン毒物」

昨夜は、どうしても外に飲みに行きたくて、許しを得て飲みに行ってきた。一昨日だったか、アメリカで日本のテレビ番組(主にNHK)を放送している「テレビ・ジャパン」というチャンネルがあるのだが、そのチャンネルで夜中に「世界の居酒屋」という番組をやっていて、「ニューヨーク ハーレム」の回で、その番組を観た。NHKで一度やった番組だと思う。

NHKオンデマンドにないかなーと思って調べたら、あった。が、同じ素材の別編集だった。

世界入りにくい居酒屋 「ニューヨーク ハーレム」

こっちが元ネタなのだろう。この元ネタの番組のほうもちらっと観てみたが、この酒場の素晴らしい雰囲気は伝わってくるし、良いのだが、一部字幕も含めて気になる表現が目立つので、あんまり良くないところがあるが、総じて良い番組だ。要するに、実際には本人たちが「African American」って言っているのに「黒人」っていう字幕を当ててしまう感覚というのは、ニューヨーク地元民としてはやっちゃいけないやつなので(「黒人」という言葉は、身体的特徴由来の言葉なので、まあ差別用語ということになる。ので、こっちの学校では生徒が「Black」なんて言うと問題になる。)、そのへんの配慮がすごく、日本の放送局のそのへんへの感覚が欠如していて困ったもんだなと思った。ハーレムがテーマだから「黒人」って何回も言うのだが、まあ、いろんなコンテクストがある言葉ではあるけど、私はちょっとドキッとしてしまう言葉なので、ヒヤヒヤしながら番組を観た。

それはさておき、ここで取り上げられているハーレムの「67 Orange Street」というお店の酒がめちゃくちゃ旨そうで、「ここで飲んでみたい!」と思った。番組中で紹介された、「スモークガン」というもので葉巻の煙を注入したバーボンが、めちゃくちゃに旨そうに見えたのだ。で、これが地元民の役得で、調べたら家から7分で行けるところだった。ハーレムなのでアポロシアターとかも近い。いわゆる、隠れ家というかスピークイージースタイルの、表に看板がない感じの店だ。

そんなわけで、行ってみた。番組で紹介されたそのまんまのお店と、店員さんがいて笑った。

カウンターに座って、早速、葉巻の煙を注入したバーボンを注文する。ニヤッとされる。番組で、このバーテンダーは、カメルーン出身だって言っていた。

で、その彼がウイスキーボトルにショットを注いで煙を注入する。こんな感じのものが供される。白いのが、葉巻の煙だ。これを適当に自分でシェイクしたりしなかったりしてロックグラスに注いで飲め、ということだった。

これはめちゃくちゃ旨かった。大人の毒物の味がする。毒物に毒物を混ぜて、やばい毒物になっていた。煙草をやめて4年くらい経つので、ニコチンを摂取するのもかなり久々だが、これはひどい飲み物だ。完全に健康に悪い。しかし、健康に悪いものはおいしいと相場が決まっている。

野暮なので、「日本のテレビで観たんだよ」とか言わないで、黙って何杯か飲んだ。うまい。

結構酩酊して家に戻った。普段、そこまで悪酔いすることはないのだが、今日飲んだのは毒物に毒物を入れたやばい毒物だ。気持ち悪くなってしまって、家に戻ってトイレに駆け込んだ。汚い話だが飲んだものを吐いたら、吐いたものが真っ赤だった。

「やばい! 血が出たぞ! やばいやばいどうしよう」

「坂の上の雲」の正岡子規を思い出した。ホトトギスだ。ドリフの舞台転換の音楽が流れ出す。「地球滅亡」のあれだ。何か身体を壊したのかもしれない。ハッと素面に戻って鏡を見ると、鼻から結構な量の鼻血が出ていた。喀血じゃなくてよかったが、自然に鼻血がドバーッと出る程度には毒物だったということだ。

翌朝、ちょっとだけ煙草を吸いたくなっていて、あ、これは良くないな、と思ったので、もうやめておく。

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