【日記】新人賞

 とある文芸雑誌の、とある新人賞受賞作を読んだけれども、自分にはまるでピンと来なかった。ホモセクシュアルな視線から始まること、美を大時代的に語ること、その他こまかい感触から、これは頭の芯まで三島由紀夫のコピーをしたいのだな、とそう感じるような小説だった。
 なんだか現代の小説というものに絶望してしまった。
 しかし、次の作品を読んで、こんな小説もあるのかと、希望が湧いてきた。
 その新人賞は同時受賞で二作掲載していて、もう一作は、何とも言えない。何がエネルギー源だろうか。昨年三月に亡くなった大作家の追悼を、受賞の言葉に寄せている。あきらかに、大江健三郎のことだ。ああ、ここでも三島由紀夫と大江健三郎か。そんなに、彼らは対照的だろうか。シャーマニズムをつい題名から連想してしまうが、そういう定義の言葉を斥ける力が、冒頭の文体にはあった。作中の人物が、あきらかに何かを確信している、にもかかわらず、我々にはその確信が、さっぱりわからない。この感触は、やはり読んだことがあるといえばあって、『万延元年のフットボール』の文章、そこに源泉があったのだろう、だが、先の作品よりは、深いと感じる。贔屓だろうか。何でもいい。自分の感覚を信じるしかない。

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