【日記】本革のブックカバー

 合皮と本革の違いも知らない頃があった。もう成人過ぎた頃まで、そうだった。合皮の意味を、あえて聞くので、一から物事を聞かれることに抵抗のない人ではあったけれども、懇切に、だがその底には合皮への軽蔑意識も滲んでいるような回答を得た。その人は、革細工を作っている人だった。合皮なんて、と鼻で笑わないだけマシだったかもしれない。
 それから、意識して合皮と本革の違いを見るようになった。そういわれてみれば、皮のような見た目をしているのに、使い込んでいくうちに、だんだんけば立って来て、中の厚紙のようなものが剥き出しになってくる製品が、いくつかあった、自分の手につかまされたものは、皆そうなっているような気がする。
 元々、ものの手触りとかテクスチャーとかには、惹きつけられる質だった。金がないだけだ。今は、一ヶ月働き、無駄金を使わなければ、数万円の買い物は出来なくはない身分になったので、あえて必要性があるわけでもないのだが、本革のブックカバーをいくつか買った。
 初めは、何気なく通りかかった、作業所の製作物を売っているマルシェで見かけたブックカバーだった。文庫本サイズで、買って使ってみたら、気分だけかもしれないが、読書が捗るようになった。
 だが、読む本は文庫本に限らない。ブックカバーで探してみると、驚くくらい、文庫本が多い。七割方は文庫本のサイズなんじゃないか。一方で、ブックカバーの素材が本革であるのは、やはり五割か三割くらいで、本革の単行本サイズのものは、割合の掛け算をしたくらい、少なくなる。
 三割の五割か、三割の三割だから、一割程度。
 それもネット販売で探して買って、もう一つ買って、手元にブックカバーが三つある。それぞれサイズが違うので、使い分けている。

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