『ユリシーズ』の名詞句①

「ビーグル!」のようなものを一語文として文とみとめるかどうか、という問題。認めない、とするなら、それはなぜか。認めるとすれば、それは主語なのか述語なのか?これも何を文と認めるか、というところに戻ってくる問題。

「主語」だとするとどうなるだろう。主語だけでも「文」になりうると考えるか、あるいは「ビーグルがいる」のように述語が省略された形と考えるか。
「ビーグル!」だけで「ビーグルがいる」を表している場面であれば、「ビーグル!」単独でその存在を陳述する働きがあると考えられるので、やはり主語よりは述語だろう。


 ただ、名詞だけのものは主語でも述語でもない、という立論も可能だろう。そうすると「文」ではなくなる。

 名詞だけの「文」(といっていいか微妙なもの)と名詞句だけからなるものが大量に出てくる文学テキストにジョイスの『ユリシーズ』がある。私は『ユリシーズ』の日本語訳を検討したことがあるが、果たしてこれは言語学的にどのように考えられるだろうか。

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