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人は、情景を感じるのが一番強い。

Voicy No.0218 2022年9月21日放送
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個人のブランディングでは世界ナンバーワンを目指す必要はありません。好みが合うものに人は強く引かれます。優劣や強み弱みではなく、その人や商品のある情景がありありと浮かぶブランドづくりをしていきたいものです。


リスナーの質問にお答えします。


今日は「人は、情景を感じている。それが一番強い」という話です。

このテーマで話そうと思ったきっかけは、VoicyにYACさんから「個人のブランディング オレが『強み弱み』を使わない理由」という放送について質問を頂いたからです。


「強みについて質問です。
私には、ここじゃなきゃダメという何年も通い続けている美味しい餃子屋があったり、時々サダハル・アオキのマカロンが無性に食べたくなって買いに行ったり、そこじゃないとダメという味があります。
これまで食べ物の味はスキルのようにも思っていました。味というのはブランドなのでしょうか? 強みなのでしょうか? コテツさんの見解をお伺いしたいです。」

いいですね!
YACさん、質問ありがとうございます。

最近、個人のブランディングシリーズを定期的にしゃべっていて、「個人のブランディングで強み弱みをあまり言わないので」と言ったら、気になる点があったようです。


得意なことには必ず上がいる。


オレが強みとか弱みを企業のブランディングでも個人のブランドプロデュースでも使ってない理由と、事業戦略の大元に強み弱みを置いていない理由を前提としてお話しておきます。

強み弱みが好きな人、いますよね。「得意なこと」という言い方をする人もいますが、結局、強いとか弱いとか優劣というのは、もう上には上がいる時代。

優れている、優れていないとか強み弱みが成り立っていたのは、地域や商圏で、勝負するエリアが物理的な地域に限られていたから。

ネットのない時代は、地域の工務店とかは『タウンページ』という電話帳で広告を出して、地域で一番安くて一番腕が良ければ仕事があった時代というのがありました。

工務店に限らず、どの商売も物理的距離を越えられなかったものがいくつかあるのです。

だから他の地域で売っているものが全く違うとか、例えば東京にいながらにして佐賀で腕の良い工務店があってもなくても頼めないといったことは、かなり長い時代続けたわけです。


世界で一番か、狭い世界で勝負するか。


しかし、やはりネットの出現は、全てのビジネスの競争環境を変えてしまい、優劣とか強み弱みをある軸によって比べると「一番」が明らかになってしまいました。

世界で一番の品ぞろえといったらAmazonに勝てないでしょう。百貨店が「地域で一番の品ぞろえ」だったとしても、そこに買いに行くよりもネットで探せばもっと細かくあるから、優劣とか強み弱みじゃないよという話をしているわけです。

そうなると、ビジネスは二極化された「どちらか」を取るしかなくて。

1つは、強み弱みとか優劣の比較になっても、圧倒的に勝てる何かを用意して世界を全て取ることです。ワールドワイドで一番になってビジネスを成立させる方法です。

それはiPhoneをつくるとか、GoogleとかAmazonとか、いわゆるGAFAみたいになるか、市場を細かく区切って、お客様の好みとかライフスタイルに合わせてニッチを取りに行くか。

ニッチはもう成り立たないといいますが、オレの言うニッチは100万人とか1000万人を対象にするものを含むので、1億人しかいなかったとして10%が1000万人、1%が100万人、0.01%が10万人です。

毎年10万人ずつ新規が必要なビジネスは、中小企業とか個人の場合にはほとんどありません。0.01%の人が納得したとしても、10万人が顧客になることからいけばスーパーニッチは全然少なくない。

それは別なテーマになるので、いったん話を元に戻します。

「強み」より「好み」が問題だ。


その中で個人が強みと言っても、全然売りになると思ってないわけ。
もっと優れている人が出てくるから、強みなんてどうでもいい。

つまり、好みが合う人との間で、ブランドとファンの関係ができればいい。ブランド側が打ち出す好み、スタイルと、ファンが求めている好みが一致するかどうか。

パンジーがいい、バラがいい、ヒマワリがいい、タンポポがいいとなれば、「タンポポが好き」「ヒマワリが好き」はもう好みの問題です。

優劣で言うと、甘いトマトを糖度で比べたとたん、日本で一番うまいトマトは1種類しかなくなってしまうわけ。それで競っても個人の場合はブランドになり得ないし強みは使えないのです。

YACさんはとても例えが面白くて、センスいいと思います。何度も買い続けている美味しい餃子があったり、サダハル・アオキのマカロンが無性に食べたくなって買いに行ったり、「ここじゃなきゃ駄目」という味があって、食べ物の味はスキルなのかと思っていたそうです。

味というのはブランドか強みなのかという質問を頂きましたが、人が最も強く印象に残って、最も強く追い求めるものはトータルの情景です。

ですから、ブランドづくりにしても個人のブランドイメージづくりにしても、トータルの情景がファンの方の心の中に残ることが、一番引力としては大きいわけ。

何年も通っておられる美味しい餃子屋さんの餃子を冷凍にしてコンビニに並べて、YACさんがコンビニの冷凍ショーケースから、その餃子を取って自分でレンチンして食べる。

そのとき同じように美味しさを感じられるのか。

つまり、餃子を食べに行こうと思ってお店まで足を運ぶ時間、そのお店のムード――照明や周りのお客さんのガヤガヤ、いつものお店の亭主がつくって出してくれるときの、あの声の感じとかも含めて、人は味わっていたりします。

サダハル・アオキは日本からフランスに行ったパティシエのブランドで、本当にマカロンが美味しいです。フランスでつくられたものを日本に持ってきています。

フランスのチョコレートブランドを扱っていたからわかりますが、サダハル・アオキのマカロンのレシピを元に、どこか日本の山の中の工場でつくったものを「これ、レシピが一緒なんで」となったら、パリでつくったのと一緒ですよね。

具体的な地域名を入れようと思いましたが、そこの田舎を下げているみたいなのでやめておきますが。

近所の工場で作って「レシピが物理的に一緒だから同じ味ですよ」と言われたら、YACさんは納得するのでしょうか。

人は味だけを感じているのではありません。

その情景とかシチュエーションをトータルで好きになっているから、愛情が続くところがある。


風を感じ、においを感じ。


人が死ぬときに、文章を思い出すことはなく、ピンチになったり大病になったりして、入院しているときに思い出すのは情景です。

家族で行った海で、スイカ割りをして失敗したシーン。
子どものとき炊事遠足に行って、夜キャンプファイヤーで火を燃やして
みんなで眺めているシーン。

一個一個の会話のフレーズは思い出さないのです。

こういう情報を伝える仕事をしているオレがこんなことを言うのもなんですが、訳のわからない理屈やメソッドなんていうものは、記憶に留めたりキャッチしたりするのは弱すぎる。

やはり情景です。
その雰囲気、空間、そこまでのプロセス、におい、光を合わせて
それトータルでブランドです。

サダハル・アオキのマカロンなら、同じつくり方をしている近所のマカロンで納得するのかというと、違うような気がするのです。

以上、コテツでした。

本文は
コテツがVoicyの「ブランディングと商売の話」で語った内容を
文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
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久々野智小哲津
二十数年にわたり、のべ7社ほど(8社目準備中)会社を経営。ITの会社を大きく成長させた後、新規事業でさまざまな事業を立ち上げ、フランス、イタリアを中心にヨーロッパからブランドを日本に持ってきたことをきっかけに、ブランドづくりができるようになった。
海外ブランドの日本進出や、日本国内の会社、サービス、商品、人(タレントさん、議員さん、スポーツ選手など)のブランドプロデュースにも関わっている。
Instagram https://instagram.com/q.kotetsu/?hl=ja
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