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【CI刷新プロジェクト Pt.03】 コーポレートステートメントの考察

前回お届けした「現行ステートメントの現在地、ヒアリング、分析」に引き続き、今回は「ステートメントの解剖」について書いていきます。CEO&CTOの伝えたいメッセージが、既存ブランドメッセージにてしっかり表現が出来ているか、そうではないのかを、解剖していく作業になります。

コーポレートステートメントの考察
1.  現行ステートメントの現在地、ヒアリング、分析
2.  ステートメントの解剖(←本記事)
3.  ステートメントの整理・細分化、イデオロギーの定義

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既存ブランドメッセージの整理

まず、前回の記事でピックアップした2つのワード、「エンパワー」と「シンプルに美しくする」に注目しました。ヒアリングフェーズにて絞った、CEO徳尾とCTO廣重が持つそれぞれのキーワードに、「エンパワー」と「シンプルに美しく」が関連づけられている点は、前回の記事で分析を行いました。

エンパワー
徳尾の「人生の転換期(変化)を作って行きたい(社内外問わず)。人生観が変わる様な瞬間やキッカケをつくりたい。」は、「力や機会を与える」という点において、エンパワー(empower)という言葉がフィットします。この言葉は、「権限を与える」「力をつける」「自立させる」などの意味を表し、個人や団体が自分の力で目標を達成できるようにサポートすることを表します。そういった観点から、エンパワーは徳尾が持つ意見に最も近しい意味合いである点が分かります。

シンプルに美しく
一方で、廣重の「Qlipは成果を出すために一生懸命考えてアウトプットする、人(人材)を大切にする会社。」は、制作視点の要素が含まれており、Qlipのクリエイティブをずっと担って来た廣重ならではの意見です。その点を踏まえると、「シンプルに美しく」する対象が制作周りのアウトプットに起因することが想起できます。

今回の「ステートメントの解剖」は、この結果をさらに深ぼって、「対外からブランドメッセージを見たときに、どれくらいCEO・CTOの意味する言葉が伝わっているのか」を、分析するフェーズになります。様々な分析方法があると思いますが、今回は、以下の点に絞って分析を行いました。

  • 言葉の意味のおさらい

  • 対象となる目的語の明確化

  • 瞬間的な理解速度(コミュニケーションスピード)

まずは「エンパワー」から見ていきます。

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「エンパワー」

●意味のおさらい

この工程は至ってシンプルで、辞書などを用い、その言葉の意味を改めて確認することです。「エンパワー」について調べると、以下の様な意味が出て来ました。

「権限を与える」「力をつける」「自立させる」などの意味。この言葉は、個人や団体が自分の力で目標を達成できるようにサポートすることを表す。

ここで何となく理解していたエンパワーの意味の、その「何となく」を、できる限りクリアにします。

次、行きます。

対象となる目的語は?
こちらも基本的にはシンプルで、言葉が意味する対象を明確にします。
目的語を記さず、情緒的にキャッチーなメッセージを作ると、日本語として奥行きを持たせる表現が作れる一方、目的となる対象が書かれていないことで、「何を伝えたいのか分からない」ということに陥りがちです。キャッチーな文体として、目的語を書かずに、粋な文章にすることは、雰囲気やメッセージの温度感を表現でき、それはそれとして素敵なのですが、「目的となる対象ってなんだっけ?」となると、本末転倒なので、ここでしっかりその対象を明確にしていきます。

●目的語の明確化

エンパワーする対象は?→ 人と社会
人に力をつけてあげることで、社内であれば新たな成長の場やチャンス、社外であれば先方のビジネスや、細かい点で言うと、プロジェクト担当者の社内での評価などを含めて、力をつけるためにサポートする、という意味になります。

●瞬間的な理解速度「コミュニケーションスピード」

この工程では、言葉に対する一般的な理解速度について分析していきます。
まず、理解速度についてですが、これは「言葉を見た・聞いた瞬間に、頭の中でその言葉のイメージを鮮明にビジュアル化できるまでの速度」を指します。少し分かりづらいので、例を挙げると、例えば、オレンジ(Orange)やアップル(Apple)をイメージしてください、と言われたとします。もちろん色々な捉え方や認識の仕方は千差万別だと思いますが、恐らく、0.1秒くらいで、脳内にミカンやリンゴのビジュアル的なイメージが浮かぶかと思います。この「0.1秒」が、事象への理解速度になります。(これを弊社ではコミュニケーションスピードと言います)
それを前提にして、「エンパワーをイメージしてください」と言われたときに、オレンジやアップルほどのスピード感で、脳内にビジュアル的なイメージが浮かぶかと言うと、恐らく、脳内の最初の鮮明なイメージに辿り着くまでに3〜5秒くらい掛かるかと思います。もちろん、言葉自体の意味の幅が広いので、致し方ない部分はありますが、瞬間的に理解する上では、時間が掛かる言葉であることが分かります。

この様に改めて言葉の整理を行うことで、どういったタイプの言葉で、どのレベルで一般的に認知されているのか、ということが徐々に分かってきます。「じゃあこっちの言葉の方が伝わりやすそうだね」や、「そっちの言葉の響きの方が一般的だね」などの判断ができる様になります。

それでは2つ目のワードである、「シンプルに美しくする」を同じ様に分析していきます。

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「シンプルに美しくする」

●意味のおさらい

「美しい」という言葉は、辞書によると、以下の様な意味でした。

色や形などが見ていて快いと感じられること。行いや態度などが立派で、素晴らしいと感じられること。形容詞。

●目的語の明確化

シンプルに美しくする対象は?→ 世の中
捉え方が多様な言葉だと思いますが、広義で捉えれば、解釈の幅が広い言葉なので、人によってイメージするものが異なりやすい特徴があります。例えば、対象が世の中なので、「世に存在する複雑な事象を整理する」と捉えることもできますし、「既存のなにかを一掃して、アップデートする」と捉えることも可能かと思います。または、「見た目をとにかくカッコ良くする」という捉え方もあります。
つまり、対象とするものが、「世の中」という無限に解釈が広がるワードチョイスとなっているので、対外的に見たときに、Qlipのコンセプトとして一貫性がある言葉として伝わるかどうか、といった点が、ポイントになって来ます。

●瞬間的な理解速度「コミュニケーションスピード」

まず、何かを「美しくする」ということについて、一考してみる必要があります。もともと「美しい」という言葉は、形容詞として使われる言葉であって、動詞として使われる言葉ではないからです。
例えば、「躍進する」という言葉は、何かが前に進むイメージがパッと浮かびます。「躍動する」は、活発でエネルギッシュな活動が想起できます。それぞれ、0.1秒ほどで意味とイメージが浮かぶ分かりやすい言葉だと捉えることが出来るかと思います。
一方で、「美しくする」はどうでしょう。「かっこよくする」「綺麗にする」「見栄えを整える」「整理する」「アップデートする」「より良いものにする」など、多くの言葉が浮かんできます。ここでお伝えしたいのは、多くの意味を含む言葉として多様な捉え方が出来る「美しくする」という言葉自体は、表現としてありだと思いますが、その意味するものが、「明確に伝わるのか、伝わらないのか」ということがポイントです。内的に共通意識として理解がある言葉であれば、それはそれで社内浸透という意味において、成功かもしれませんが、前述した通り、対外的に見たときに「美しくする」という言葉に対する感じ取り方は様々なので、コミュニケーションスピードが遅い(もしくは複雑な)言葉であると捉えることができるかと思います。(また、そもそも動詞として存在しない言葉なので、「美しく”する”」という表現の正確性にも疑問が持たれます)

この様に、2つ目のキーワードである「美しくする」も、コミュニケーションスピードに難がある言葉ということが分かってきました。その上で、改めて「エンパワー」と「シンプルに美しくする」をキャッチフレーズとして見ていきます。

文体の考察をしてみると、本記事で分析した、コミュニケーションスピードが速くない(及び複雑な)言葉が羅列されていることが、改めて確認できます。

また、それぞれの文がそれぞれの意味を持って乖離しているので、一見文章として繋がっている様に見えますが、複雑なワードが入り組んでいるため、キャッチフレーズ自体のコミュニケーションスピードが遅いことが分かるかと思います。(ん〜、何となく分かるけど、どういったことがしたいの?という再質問がしたくなる感覚)

そして改めて、「エンパワー」と「美しくする」にフォーカスを当ててみると、文章としての意味がちぐはぐしてしまい、キャッチフレーズ自体をより複雑化させている要素である点が、浮き彫りになってきました。こうなると、伝えたいメッセージの本懐がごちゃついてしまいます。

つまり、Qlipが伝えたいメッセージは、「対外的にうまく伝わっていないかもしれない」という見立てを、このフェーズで出来る様になりました。内々的には(僕個人の意見も含めて)、Qlipらしく仕事をするコンセプトとして良い言葉だなと腹落ちしていましたが、対外を意識したときに、果たして正しいキャッチフレーズなのか、対外から見た時に理解されづらいキャッチフレーズは、社内浸透という意味においてしっかり機能しているのか、などの気づきをもたらしてくれます。こういった気づきまで深掘りするために、既存のコンセプトやキャッチフレーズの解剖は、とても重要になります。

まとめ

本記事で分析してきたキャッチフレーズの解剖は、自社の現状をより理解させてくれる、重要な工程です。コーポレートアイデンティティを刷新する際は、まずは根本的な部分からの整理を行うことで、やっと未来へ向けて、目線を変えていくことができます。不都合な真実や、痛みを伴う結果が見えてくることもたくさんありますが、結果的には、それが進むべき方向の道標となるので、とにかく整理を行い、解剖し、そこに何があるのかをあきらかにすることが非常に重要です。

今回の記事は以上となります。
次回は、「Qlipは何を大事にし、どんな志をもってビジネスに臨んでいるのか」の分析、及び再定義の内容へ移っていきます。この深掘りを通して、Qlipの根源たるピュアな部分を、あきらかにしていきます。

弊社Qlipは、案件においてもこういった前段の整理をしっかりする会社です。そこに技術と経験、独創的なアイディアとチームの共創力を加えることで、潜在的な価値をあきらかにすることをミッションとしています。ご興味がある方は、下記よりお気軽にお問い合わせください。
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