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【まとめ】 2022/11/14 17:08 三重県南東沖を震源とする地震について(第3報)

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1.地震の概要

2022年11月14日17:08(日本時間)頃、三重県南東沖(北緯33°50.4',東経137°25.4')を震源とする最大震度4のやや強い地震が発生しました。この地震による津波はありませんでした。
震央は三重県南東沖で、震源の深さは362km、地震の規模はMj6.4と推定されています(気象庁暫定値)。最大震度4を観測したのは福島県浪江町、双葉町、茨城県つくばみらい市でした。

2.地震動について

気象庁によると、この地震では茨城県つくばみらい市、福島県浪江町、双葉町震度4を観測しました。
防災科学技術研究所のK-net強震観測網によると、福島県葛尾村の葛尾観測点で震度3(計測震度3.1)、三成分合成最大加速度40.50galを観測しています。また、千葉県市原市の姉崎観測点で震度3(計測震度3.1)、三成分合成最大加速度32.02gal、茨城県笠間市の笠間観測点で震度3(計測震度3.1)、三成分合成最大加速度29.70galを観測しています。

画像2.1 K-net葛尾観測点 加速度波形(防災科研)
画像2.2 K-net葛尾 速度・加速度応答スペクトル(防災科研)

防災科研のJ-RISQ地震速報によると、この地震で福島県双葉町、いわき市、東京都千代田区、千葉県市原市、茨城県日立市それぞれの一部の地域では震度4相当のやや強い揺れがあったものと見られています。※注1,2
(注1)これらの推計震度は必ずしも実際の震度と一致しないことに注意してください。
(注2)推定に用いられている震源要素等はすべて速報値段階のもの(気象庁速報値)です。

画像2.3 J-RISQ地震速報 震度の分布(防災科研)(〇は防災科研K-NET, KiK-net, 気象庁, 地方公共団体震度計において観測された震度、塗りつぶしは250mメッシュで補間した推定震度。)
画像2.4 J-RISQ地震速報 主要都市の推定震度(都市の最大観測震度と人口を考慮して掲載)(防災科研)

気象庁によると、この地震で長周期地震動階級1以上は観測されていません。

今回の地震は日本海溝や伊豆-小笠原海溝から沈みこんだ太平洋プレートのスラブ内で発生した地震です(3参照)。深さ362kmの場所は、マントルの流動性が高く柔らかい部分である「アセノスフェア」以深の場所になります。波の伝わる速さは硬い物質では速く、逆に柔らかい物質では遅くなりますので、地震波はスラブ内を高速で伝わり、マントル内を低速で伝わります。その結果、マントルを伝わる地震波は減衰し、太平洋プレート内部ではあまり減衰せず地震波が伝わるため、関東地方や東北地方南部で揺れが強くなりました。こうした現象は「異常震域」とよばれますが、スラブ内で発生する深発地震ではよく見られる決して異常では無い現象です。また、異常震域は地表との間にマントルを挟む深発地震ではより顕著ですが、構造線やプレート境界でも地震波の減衰が見られます。

画像2.5 異常震域を説明した図(気象庁)

3.地震のメカニズ厶

気象庁のCMT解では、東西方向に圧力軸を持ち東北東-西南西走向でやや高角の右横ずれ断層の型(南南東側下降の正断層成分を若干含む)、あるいは北西-南東走向の高角左横ずれ断層の型(北北東側下降の正断層成分を含む)となっています。
Mw6.1で、セントロイドの位置(緯度,経度,深さ)は(33°44.4'N,137°24.8'E,355km)です。

画像3.1 気象庁CMT解(暫定値)

この地震は沈み込んだ太平洋プレート内部(スラブ内)で発生した地震です。

4.緊急地震速報

気象庁は17時09分11.5秒に地震波を検知し、地震波検知から4.1秒後の17時09分15.6秒に緊急地震速報(予報)を発表しています。緊急地震速報第一報提供の段階でS波が到達していた地点はありませんでした。一般向け緊急地震速報(地震動警報/特別警報)は発表されていません。推定される深さが150km以深であったため、緊急地震速報(予報)第1報から第7報までは「最大予測震度なし」でしたが、第8報から最終第13報まではPLUM法と組み合わせた予測震度ありの緊急地震速報(予報)になっています。

画像4.1 緊急地震速報第1報提供から主要動到達までの時間及び推計震度分布図(気象庁)

5.過去の地震活動(時系列順)

三重県南東沖の深さ300km以深では、1970年以降Mj≧6.0の地震が4回発生しています

2003年11月12日の17時26分頃、三重県南東沖を震源とするMj6.5/Mw6.3の地震(最大震度4)が発生しています。
震央は三重県南東沖(SE OFF KII PENINSULA 33°9.8′N,137°2.0′E)で、震源深さは395kmです。東西に圧力軸を持ち、北東-南西走向でやや低角の右横ずれ断層の型、あるいは北北西-南南東走向で高角の左横ずれ逆断層(西南西側上昇)の型となっています。

画像5.1 2003.11.12の地震の気象庁CMT解(気象庁地震月報[2003]より)

2019年7月28日の3時31分頃、三重県南東沖を震源とするMj6.6/Mw6.3の地震(最大震度4)が発生しています。
震央は三重県南東沖(SE OFF KII PENINSULA 33°9.6′N,137°23.8′E)で、震源深さは393kmです。東西に圧力軸を持ち、北東-南西走向でやや低角の右横ずれ断層の型、あるいは北北西-南南東走向で高角の左横ずれ逆断層(西南西側上昇)の型となっています。

画像5.2 2019.7.28の地震の気象庁CMT解(気象庁地震月報[2019.7]より)
画像5.3 気象庁 今回の地震の周辺のCMT解

2022.11.14 20:18 第1報
20:42 第1報-修正1 画像2.5の追加と誤字の修正
23:54 第1報-修正2 一部修正
2022.11.15 21:54 第2報 気象庁暫定値に更新
2022.11.16 19:41 第3報 気象庁CMT解を更新 画像5.3を追加

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