風の吹くある日の午後

画像1 祖父母の家を掃除に訪れた。祖父は数年前に他界し、祖母は認知症を患っていて今はこの家には住んでいない。人のいなくなった家とはなんと急速に老いていくものだろうか。庭は雑草で荒れ、家の中はほこりだらけ、二階のベランダにはコウモリの糞が落ちていた。庭の草むしりを始めた。しゃがみながら黙々と伸びきった草を抜いていく。独特な匂いを持つ湿った空気が南風で運ばれてきて肌をなでた。風は長い周期で旅をしている。一年ぶりに触れる季節の風は冷然と時間の本質の答えを浴びせてくる。家も草も動物も人も同じ時を経ている。草をむしる。

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