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解体ショー

最近リニューアルしたばかりの近所のスーパーへ行ってみると、

入り口が開いた瞬間、「らっしゃいませ」が幾重も飛んできてびっくりしました。

従業員の気合の入り方がリニューアル前と明らかに変わっていたんですね。

台車を押す人もらっしゃい、陳列する人もらっしゃい、どこを見渡しても従業員のほとんどが「らっしゃい」を叫んでもはやらっしゃい祭りの状況で、カゴをぶら下げた自分が長芋を高く持ちあげて「らっしゃい」を叫んでもおそらくばれないだろうなぐらいの活気で店内が溢れかえっていました。

特に鮮魚コーナーの熱気が恐ろしいほど強く、

なんだか人だかりができているなと思ってそこに近づいてみると、なんとマグロの解体ショーが始まるところだったんです。

都会のスーパーの事情は知りませんが、少なくとも私が生む地方のスーパーでマグロの解体ショーをするなんて見たことも聞いたこともなく、リニューアルに合わせて心機一転頑張っていこうというスーパー側の熱い気持ちが伝わって来るようでした。

とにかく従業員みんなが全力疾走、笑顔満開。そんな姿にすごいことになったぞと関心する一方で、一つの懸念が生まれました。

「このペースで続けて、後でばてないかな」

というのは、以前私の家の近くにオープンしたコンビニに通っていた時の話なのですが、

そのコンビニがまだお祝いの花が飾られたオープン間もない当初、店員さんは、お手本のようなお辞儀をしながら「いらっしゃいませ」と爽やかに迎い入れてくれました。

店員さんの笑顔ときたら、とても真似できないような弾けんばかりのニコニコっぷりで、店を出るときも元気に大きな声で挨拶してくれて、

近くに雰囲気の良いコンビニが出来てよかったなとしばらくそのコンビニに通い詰めていたのですが、

数カ月経ったころにはお辞儀どころかいらっしゃいませすら無くなってたんですね。

間違いなくバテたなと。

最初無理に飛ばし過ぎたばかりにペースダウンしたなと。

確かに接客を疎かにすることは商売としては良くないことでしょうが、かといって商売する側も人間、自分にあった程よい接客を心がけることも大切でしょう。

最初が肝心とはよく言いますが、最初から全力を出すことが必ずしも正解だとは思いません。

店側の100をお客がその店のスタンダードだと認識すると、以降100を継続していかねばならなくなるからです。ちょっと疲れて99にでもなると「ちょっと接客悪くなった?」と言われます。下げしろしかないことは首を絞めることに繋がります。

で、そのコンビニは結局潰れてしまいました。直接的な原因は分かりませんが、店人さんの接客に関して言えばほぼ無関心を貫いているように見えました。

オープン間もない時の全力の接客と潰れる前の無気力な接客。店のバテていく姿を生々しく見たような気がします。

リニューアルしたスーパー。マグロの解体ショーをやってめちゃくちゃ盛り上がっています。身を落としていく度に従業員みんなが拍手で場を盛り上げようと頑張っています。その姿は間違いなく商売としてあるべき姿のはずです。

でもいつかアジの解体ショーになってないか心配になります。


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