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隣りの芝生は青い

僕が企業向けセミナーやコンサルで伝えている経営手法は、基本オリジナル。

『経営はドラエモンに聞け!』
『理屈はいつも死んでいる』
『今が全て』
『隣の芝生は青い』
『自分の芝生が1番』

などなど。。挙げたらキリがない。

今日はその中から『隣の芝生は青い』について紹介しようと思う。

売上クリエイターとして、僕がいつも意識していることがある。

昨日より今日、今日より明日、去年より今年、今年より来年を少しでも良くすること。

良くする対象は会社であったり、人材であったり、インテリアであったり、品揃えであったり、商品であったり、サービスであったり。いろいろ。どれもが売上のクリエイトに繋がるテーマだ。

「より良く」するためのアクションは3つ。

『死筋処分』『売筋拡大』『新規導入』

ちなみに人生におけるアクションも3つ。

『やめること』『続けること』『始めること』

表現が変わるだけで、意味は同じだ。

1日24時間、1年365日。時間には限りがある。その中で今より未来を良くするために、初めにしなければならないアクションが、『死筋処分(やめること)』だ。

死筋処分は、上手くいっていること(売筋拡大)や新しく始めること(新規導入)の時間を作るために不可欠なアクション。

今回紹介する『隣の芝生は青い』は、死筋処分した後に行う、新規導入に関する経営手法のひとつになる。

この手法の特徴は、売上をクリエイトするために、業界の枠や常識を超えた所から新しい何かを導入することにある。

つまり、『隣の芝生は青い』とは、新しい発想を異業種に学び、異業種の商品を導入することなのだ。

マクドナルドとセブンイレブンの100円コーヒーを例にして見てみよう。

マクドナルドは10年前に斬新なコーヒーの改革を行った。これはスタバとドトールをベンチマークしたものだった。

当時、マクドナルドの業績は低価格路線の舵取りに失敗し、長きにわたって低迷していた。新しくCEOに着任した原田社長は、業績のV字回復の切り札として、コーヒーに白羽の矢を立てた。

彼は、それまでドリンクのジャンルの中の1アイテムに過ぎなかったコーヒーを、その他のドリンクと切り離してジャンルに格上げした。その効果は絶大だった。

毎日飲むコーヒーに300円かけていたのが、マクドナルドなら100円で済む。味も今までのハンバーガーチェーンのイメージを打ち破り本格的。価格訴求の高い客層はコーヒーチェーンからマクドナルドに流れることになった。

お客さんの来店頻度の増加は、ハンバーガーなどの関連商品の購入にもつながる。売上・利益をクリエイトすることに成功した。

この原田流の戦略が奏功した理由は、新コーヒーをハンバーガーチェーンの商品開発の発想ではなく、コーヒー専門店の発想で、開発・導入したことにあった。

次に、セブンイレブンの100円コーヒー。

こちらは先のマクドナルドのコーヒー改革の成功に触発されたものだった。

セブンの考えはこうだ。

マクドナルドでコーヒーが売れるなら、コンビニでも売れるはず。マクドナルドで毎日コーヒーを買える人は、日本の人口からすれば僅かしかいない。店舗数、立地、利用動機から考えれば、コンビニコーヒーの潜在需要は計り知れない。

マクドナルドの成功で、ニーズは顕在化している。あとはセブンの成功の方程式、そう、「絶対の追求」を始めるだけでよいのだ。いつものように。粛々と。その後のセブンのコーヒーの大成功 は周知のことだろう。

そもそもコンビニの売場にはコーヒーと相性の良い食べ物が溢れている。にもかかわらず、40年近くもコーヒーを主力商品化できなかったのは、セブンイレブンをもってしても、コンビニ業態の枠や常識を超えた視点・発想で商品開発ができていなかったから。

皮肉なことに、マクドナルドのコーヒー戦略の大成功が、セブンにブルーオーシャンの存在を知らせることになったのだ。コンビニコーヒーの台頭により、マックコーヒーは話題にならなくなっていった。

「私たちはハンバーガー屋です!」
「私たちはコンビニです!」

このような無意識の枠決めが、自由な発想と行動を阻害している。これは全ての企業やビジネスに当てはまる。もちろん、私たち個人においても。

発想の壁の向こうには、いつも宝の山がある。

最近、トヨタ自動車がレクサスのブランドでランドセルを発売した。販売価格は15万円。

そもそもトヨタ自動車ほどのブランド価値を有する企業ならば、業界の垣根を越えて、異業種の売れ筋をベンチマークして、より良いモノに作り変えることは、それほど難しいことではない。相当数の異業種参入が可能であるはずだ。

今まで本業で十分に潤ってきたので、社内的にそのようなムードにならなかったのだろう。

ここで、僕がトヨタのコンサルを手がけると仮定して、「隣の芝生は青い」を活用したビジネスモデルを1つ紹介する。

** ベビーカー業界への参入。 **

この業界、現在、日本に60近いブランドが参入していると言われているが、実際の市場は3つのメーカーによる寡占状態にある。

この市場に、トヨタが自動車産業で培った世界最高水準のノウハウを集結させたベビーカーを投入したらどうだろうか?

躯体、ハンドル、タイヤ、フード、デザイン。それら全ての設計がトヨタ基準で行われるのだ。間違いなく日本トップブランドになるだろう。既存のベビーカーのメーカーが、本気で商品開発と営業販促に取り組んだトヨタに勝てるとは思えない。

発売後もトヨタ式カイゼンにより、利用者の声を反映した改良が重ねられ、究極のベビーカーが生まれるだろうことは想像に難くない。

このように「隣りの芝生は青い」は、売上をクリエイトするのに非常に効果的な経営手法なのだ。ただし、効果を出すのには、一定の条件がある。と付け加えておく。

僕がこの手法を導入する前提条件として、導入先の企業や個店、及び個人が、既に強力なプラットフォームを持っている場合だ。その場合の成功率は高い。

企業なら、トヨタやセブンイレブン、楽天やアマゾンなど。個人なら堀江貴文さんやイケダハヤトさんなどが、このプラットホームを持っている。

このような著名なサンプルだけだと、僕の経営手法に対して少し距離を感じると思う。そこで、もう少し身近に感じることができるよう、スモールビジネスにおける実例も併せて紹介したい。

以前、紹介した6坪のカレー屋だ。

6坪カレーは、欧風カレーとインドカレーの2種類で営業していた。開店後2年を過ぎて、地元では認知度が高まってきた。さて、3年目。僕はいつものように考えた。

「今年はどういうアクションで去年より良くしようか?(売上をクリエイトしようか?)」

僕は3年目のアクションを新しいカレーを導入することに決めた。具体的にはグリンカレーの導入だ。

グリンカレー。カレーと名は付いているが、既存の2種類のカレーとは全くの別物。

既存のカレーはスパイスの調合で味が決まる、いわゆるカレーのジャンルに属する食べ物だ。一方、グリンカレーはカレーではなくタイ料理のジャンルにカテゴライズされる食べ物。

カレージャンルにカテゴライズされる食べ物を新規導入した場合、当該新商品は、目新しさも手伝い、ある程度は売れる。反面、客層がバッティングする既存商品の販売減を引き起こす。

結果として、期待する程の売上のクリエイトには繋がらない。「諸刃の剣」。トレードオフだ。

前にも書いたが、売上クリエイトの本質はトレードオフの克服にある。

グリンカレーはタイ料理。今までお店を利用していなかった新しい客層の獲得に繋がった。

実際、6坪カレー屋では、グリンカレーを導入した事により、それまで2割程度だった女性客比率が4割に増えた。

さらに、グリンカレーを注文するお客さんは、毎回グリンカレーしか注文しない。彼らは、グリンカレーがなければ、6坪カレー屋を利用することのない客層なのだ。

僕は3年目の売上を、前年度比で140%も伸ばすことに成功した。人件費と設備投資に変化はなかったので、単純に利益だけが増えた。

経営は効率も大事。提供する側の手間暇が同じなら、違うジャンルから導入した方が売上・利益に対する効果が高いことが多い。

これがトレードオフを克服するということ。この時に僕が使った経営手法が「隣りの芝生は青い」だったわけだが、状況・条件によって経営手法は臨機応変に変えればよい。

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