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ハワイに住んで幸せだなあと思うこと・3つ:②マグロの頭をもらう

海外在住クリエイターの共同マガジン VACILANDO のリレー企画のバトンが、フランス在住のアリアリさんから回ってきた。お題は「ハワイに住んで幸せだなあと思うこと・3つ」。
 
今回の記事はその二つ目。ハワイにいて幸せに感じることが多くて3つに絞れないので、ある日(昨日)、幸せに感じたことを3つ選んで書いている。前回はハワイでは空が近いことを書いた。

今回はマグロの頭をもらった話だ。
 
新居に入居したのは2ヶ月前になるが、まだ家は完全には完成していない。当初1月末には届くと言われたコンロは2月末に着く船に積まれていなくて、3月末まで待たないといけない。またドライブウェイも舗装されていなかったが、こちらはやっと業者の人がやってきて準備が始まった。
 
その指揮を取るアナルーは肉体労働をしてきた人らしく日に焼けた肌と引き締まった体を持つ陽気な60代のハワイアンである。夫が聞いたところによると子供の頃に義父から暴力を受けたため、早いうちに家を飛び出し自分で人生を切り開いてきた苦労人である。
 
ハワイの人はおしゃべり好きが多いが、彼もその例にもれず挨拶をするとしばらくおしゃべりをする。ある日、おしゃべりは魚の話になった。彼は魚の頭を食べるか聞いてきたので、私は「もちろん」と答えた。そこから魚はほお肉が一番美味しいとか、カマもいけるよねとか、目玉は食べるかなどを話してで盛り上がった。
 
アメリカ人の多くは目があることを嫌って魚の頭を食べることはない。目玉の周りを食べるなどもってのほかだ。だから彼は私が初めて会った魚の頭を食べるアメリカ人だ。さすがハワイの人は魚の美味しさを知っていると感心した。
 
彼はおしゃべりの最後に、「じゃあ、今度マグロの頭を持ってきてあげるよ」と言った。アメリカでは知り合ったばかりの人がこういう親切なことを言ってきても、それが実行に移されることは少ない。それは嘘をつこうとしているわけではなく、こういう言葉を好意の印としてかけているのだ。日本人だって「近くにお越しの際はお立ち寄りください」と言っても本当に招待している訳ではないのと同じだ。だからその好意の気持ちは受け取っても、期待して待つことはない。
 
アナルーも魚話で盛り上がった勢いでそう言ってくれたのだと理解して、そのことはすっかり忘れていた。
 
しかし昨日、仕事の合間にリビングに来てみると、ちょうど彼が何かを抱えて家に向かってきているところだった。夫に用事があるのかと思ってドアを開けると、「マグロの頭を持ってきたよ」とビニール袋の包みを渡してくれた。知り合いの魚屋から分けてもらったらしい。ちょっとした立ち話を覚えていて、わざわざ持ってきてくれたことに驚き、また感激して思わずハグをした。
 
アメリカ本土では人との関係が少しドライだと感じることがあったので、こういう心遣いを受けて乾いた心が潤うような気持ちだった。ハワイに引っ越してきてよかった、幸せと思う瞬間だ。
 
ちなみにもらったのは頭とカマはこちら。



これをさばけるような包丁がないので、ともかく霜降りし大きな鍋に入れ、卓上コンロを外に持ち出して煮付けにしてみた。臭みは完全に取れなかったが、久しぶりの魚の煮付けと人の優しさを味わった。
 
アリアリさん、後一話続きます。もう少しお付き合いください!


シリーズ3つ目の記事はこちらからお読みください。


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