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キャッチコピー通りとは恐れ入った(映画「シン・ウルトラマン」感想)

Q.どうしてそんなに人間が好きになったんですか?
A.遥か空の星がひどく輝いて見えたから






 はい。シン・ウルトラマン観ました。観ました……………

 正直一度目では中々追いきれない部分もあり、内容についてそこまで深く理解しているわけでは無いのですが、時間が経つにつれ語りたいことが猛烈に増えてきたので、鮮度が高いうちに取り急ぎ初見感想です。ちなみに自分は好きな映画を聞かれたらシン・ゴジラとキングオブモンスターズとバトルシップを挙げるタイプの人間なので、この時点で嫌な予感がしたら回れ右をお勧めします。

前提:ウルトラマン遍歴

 ウルトラマンのソフビがかつて実家にあって(誰だったかとかすらわからん)V6の長野くんがウルトラマンってことは知ってて、でもTVシリーズとかは全然見たことがなく、学校の図書館で「お父さんはウルトラマン」読んだな〜バルタン星人かわいそかわいいな〜程度の幼少期。大人になって仮面ライダーエグゼイドを一気見し、なぜか流れでジャグラスジャグラーと出会いウルトラマンオーブを見る→ウルトラマンベリアルの存在を知りウルトラマンジードを見る ←ここまで。あと少し前からウルトラマンZを見始めてヘビクラ隊長が出てきたところで3分くらい爆笑した
 シン・ウルトラマンは、何も前情報入れずに行こうと思って予告映像や公式HPも見ず、あらすじも全く頭に入れずに行きました。













(ここから先ネタバレします。出来る限り事前情報を入れずに観て欲しいので鑑賞予定のある人にはおすすめしません。というか後半はただの呻き声みたいな限界オタク構文が延々と続きます。あと全体的に褒めてます)










で、感想


 先にここはちょっとどうなんだろう…と思った点や描写を挙げておきます。(良かったところは後述、というかリピアの話書いたら長くなり過ぎた)


・描写の物足りなさ
 これは難しいとは思うんですけどね…ストーリーがオリジナルの「ウルトラマン(初代TVシリーズ)」のエピソードから5つ抜粋して再構成しているものなので、そんなこと知らずに見た初見の自分も「なんかテレビアニメの劇場版総集編見てるみたいだなー」という気持ちになった。趣味ぶっ込み宗教映画ってのは冒頭1分で大変よくわかりましたので、あの…もう少しガチ勢でない我々のために手心というか…
 あとは登場人物の関係性も、あの限られた時間では厳しいところはあるんだろうけど、ちょっと不足してるんじゃないかと思いました。特に神永(リピア)と浅見の関係性については、劇中の描写でもわかるものではあるんだけど、欲を言うならもうちょっと欲しかったな〜…と…。神永とリピアの関係が直接描かれずに全て融合後の行動や状況から読み解かないといけないのはオタク的には万々歳なんですけど…(行間大好きオタク)。浅見との関係はもう少しわかりやすいくらいに描写してもよかったんじゃないでしょうか。TV版シン・ウルトラマン、絶対デコボコバディの二人がわちゃわちゃトラブル起こしながら任務遂行する半日常回みたいなの絶対あるでしょ。ベタに手錠で繋がれたりしてくれ(ベタなのか?)
 あとはザラブとメフィラスのくだりがかなり被ってるところ(あえてだとは思ったけど)、中盤〜終盤でちょっとダレちゃったかなという感じもしました。でも大体メフィラスのせいだと思う。メフィラスが演技含め完璧過ぎたので…。

・長澤まさみ関係
 もう散々めちゃめちゃ言われてると思うのでもはや言及する気もないんですけど、やっぱり観る上でノイズになっちゃったので。
 私は「これ大丈夫かなーTwitter荒れそうだなー」と観ながら思いました。(思うところはたくさんあります、ここで書きません)一瞬でも「これTwitter荒れそうだなー」と思ってしまうとそこで現実に引き戻されてしまうのですごく残念でした。没頭させてくれ。
 すっごい個人的意見だけど田村班長が巨大化しても面白かったのになー。いや浅見じゃないといけないのは十分わかってますが。いっそ禍特隊が室長以外全員巨大化しちゃうとか。

・画質のバラつき
 途中の会議シーンとか、室内なのに「これ合成では?」となるところ結構多かった気がする。コロナの影響で思ったような撮影ができなくて、バラバラに撮影したものを合成して作った、みたいな事情があったりするんだろうか。わざとなのか何なのかわからず結構混乱した。
 怪獣との戦闘シーンなんかはチープさとかは言われているほど気にならなかったんだけど、それは単に自分がある程度特撮慣れしてるからなんでしょうかね。あとは延々延々延々続くあの独特のカット…笑
合成シーンもそうだけど、大勢が集まるシーンが思うように撮れなかったんですかね。全体的に小ぢんまりとした規模感だなあという印象です。(街のシーンとかあったのになんでだろうね)


 ここからは良かったところの話。

・外星人の演技
 いや斎藤工すごくないですか?序盤とか「人間と融合して人間の生き方や知識を学び始めた宇宙人」の顔してた…凄い…。広辞苑や文献(しかも『野生の思考』。真面目…)を貪り読んでるシーンの「文字を読んでいるのではなく知識としてインプットしている」感とか、佇まいの不自然さとか。目はゆっくり動くし表情もぎごちないのに、それが逆に「確かに感情がある」ことを際立たせているの、感服しながら観てました。ふとした瞬間の目つきとか口元とかがちょっとずつ柔らかくなってくの、すごく良い。神永を通して人間を少しずつ理解していったんだな、という説得力がある…。それはそれとしてガボラ戦後のあのニカッ!みたいな笑顔なんなんだ。好きだけど。
 山本メフィラス耕史は100点中5億点くらい叩き出してました。何一つ文句ないです。あの方本当は宇宙人なんじゃないですか?(偏見)
 あと慇懃無礼で紳士な津田健次郎の声めちゃくちゃ良かった。自分の中の津田健次郎といえばこのキャラ、というのが新たに追加されて嬉しい。あとザラブの顔可愛い。(`*´)

・滝明久というキャラクター 
 有岡大貴さん演じる滝くん、良かったですよね〜〜。こういう人間臭くて等身大っぽい性格の人の生々しい心情の吐露、ものすごく難しいと思うんですよね。ある程度のリアリティというか、一応学者としてある程度の肩書を持つ人間が、あまりにも大いなる存在を前に無力感で自棄になるのを納得させる描写にしなければならず、かといってやり過ぎると白けた感じになっちゃう。そこを本当にいいバランスで演じていたなという印象です。こんなに頭の良い学者さんがやさぐれてストゼロロング缶キメるシーン、こういうの好き〜!!わ〜い!!!と内心大盛り上がりしながら見ました。俺はやさぐれてるんだぜアピールっぽくもあって大変かわいい。職場に酒を持ち込むな。

・ウルトラマンの造形
 ガワのことにはめっきり詳しくないので他作品との比較はできないんですが、佇まいがものすごく印象的だなっていうのが第一印象でした。なんというか、自分がイメージしてた「ヒーローとしてのウルトラマンというキャラクター」じゃなくて、「ただそこに在る生きもの」なんですよね。シンゴジのゴジラも同様にただ歩くだけの神に近い生きものであったのに対し、こちらは意思と感情のある一つの生きものとして佇んでいるのがありありと感じられてよかったです。

・リピア
 リピア………!!!!!!!!!!!!(限界オタクの鳴き声)
 1回目観た時、ハラハラし過ぎてストーリーを追うのに必死で登場人物の心情とかあまり深く考えられなかったんですけど(ブラックホール脱出のとこでもういっぱいいっぱいだった)、「おかえりなさい神永さん」からの暗転、「えっこれで終わり?」からの

遥か空の星が

ひどく輝いて見えたから

僕は震えながら

その光を追いかけた
米津玄師「M八七」


 これ

 

 イントロもなく、暗転して間髪入れずにこのメロディが流れてくるわけで…そこから始まるエンドロール、呆然として動けずにいました(辛うじてリピアの声優がわかってそこでまた固まった)劇場を後にして帰り道でM八七を聴いて、眠って起きてM八七を聴きながら出社して、そこからずっとウルトラマンとは…人間とは…生命とは…愛とは…と宇宙猫状態でした。
 M八七、谷川俊太郎の『20億光年の孤独』っぽいフレーズがあるのもまた良いんだよな…オタクの情緒をこれ以上刺激しないでくれ…



 今作、リピアと神永の関係性に情緒と涙腺を破壊された方も多いんじゃないでしょうか。というか私がそれ。お互いの対話シーンは一切なく、なんなら神永は冒頭しか喋らないし、後は融合後の神永の言動や森のシーンから各々が推察していくしかない。でも楽しい…!関係性大好きオタクだから…!!

 さっきから思い切りリピアの名前を出していますが、今回のシン・ウルトラマン独自の設定と思われるウルトラマンの本名リピアは花の名前です。

 不慮の事故とはいえ人間に被害を与えてしまい、しかもその際、自分よりも弱い子供をかばって死ぬという、リピアからしたら生産性のない行動をした神永を理解したいという好奇心(多分公式インタビューで「理解したいという好奇心」ってはっきり書かれてた気がする)からリピアは神永と融合し、外星人たちの争いに巻き込んでしまった贖罪も含め人間社会に関わっていくことになるんだけど、そこから人間の悪性も善性も見た上で、というよりむしろ悪寄りの部分ばかり見せられて、それでも守りたいと思ってくれたんだな…。
 自分からしたら一瞬のような一生を懸命に生きる命を理解したくて、最後まで完全に理解はできないんだけど、最後には人間に興味を持ったきっかけである神永と同じく自らの命を投げ出して弱い者を救う道を選ぶのがさぁ…銀河鉄道の夜…赤い目玉の蠍……(何でも宮沢賢治を結びつけるオタク)
 それを選んだにも関わらず、ブラックホールが収束していくシーン、長い尺をかけて必死に抵抗するんですよね。あのシーン最初はシュールに思えたけど最後のほうかなり涙腺にきた。応援上映ならがんばえーー!!!ってベーターカプセル型のペンライト振って絶叫してるとこだよ。はっきりと台詞を覚えてないんだけど、自らの命を投げ出すこと、生きたいと願うこと、それが人間になって知ったことだな、みたいなゾーフィの言葉が印象深い。

 というかリピアの声優高橋一生にしようって言ったの誰です?ありがとうございますほんとにね(半ギレ)
 嫌われ政次の一生を思い出してまた泣きました。俺は自己犠牲型高橋一生に弱いんだ




 あと最後にこれ言わせて


・政府の男

出るなら出るって言ってくれ



 劇場で奇声上げて人権失いそうになっちゃったでしょ…
 総理の名前からして地続きではなさそうなので、ただのサービスというかゲストキャラクター、もしくはシン・ウルトラマン世界が「最初の巨大不明生物がゴジラかゴメスか」でシンゴジ世界から分岐した世界だと勝手に嬉しい。あの人がなぜあのポジションにいるのか想像するだけでご飯いっぱい食べられる



総評

 この映画のキャッチコピーの一つが

「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」

 なんだけど、映画そのものをめちゃくちゃ端的に表してくれてますよね。「なんで地球を守ったんですか?」→「人間が好きになったから」。「なんで人間が好きになったんですか?」→「遥か空の星がひどく輝いて見えたから」。この辺でだいたい説明できちゃうのではないでしょうか。シン・ゴジラの時もそうだったけど、初見はなんだこれ??と思うキャッチコピーでも、一通り鑑賞した後だと正にその通りなフレーズだと納得できて、個人的には好き。わかりやすい映画が好き。(この映画は一見わかりやすそうで、読み解いていくとわかりにくいんだろうけども)

 あらゆる所で言われていそうですが、自分にとっては、突っ込みどころや粗の目立つところ(とまで言うと言い過ぎかも。「気になったところ」くらいの感覚)はたくさんあるけれど、愛と情熱と憧憬と空想と浪漫と友情が詰め込まれた大作だと思います。かつて初代ウルトラマンの最終回を見た子供たちが、窓を開けて空を見上げた、みたいな噂も聞いたけど、M八七を聴くとその気持ちわかるなあ…と思いました。令和になってこんな作品が観られるなんてな…




(そう思うからこそ!!!もう少し関係性の補完を!!!ください!!!!いや無くてもいい!!!!いや欲しい!!!!ウワーーーーーーーーーーーーー)





 最後に。
 ラストの「おかえりなさい神永さん」、彼はどっちだと思いますか? 思わず某テイルズ作品のラストを思い出して胸がギュッとなりました。私はどちらなのかまだわからないのでもう一度観てこようと思います…



(追記:5/18)

  先日爆音上映にて2回目観てきたので取り急ぎのメモ。言いたいこと溜まったらまたnote書くかもしれない


(追記:5/21)

  3回目観ました。IMAXは目の焦点の合わせ方(?)で酔ってしまうのでやはりちょっと苦手である(プレミアムシートは好き)


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