2020年のポストガイア理論

ガイア理論で知られるジェームズ・ラブロック氏の「ノヴァセン 超知能が地球を更新する」という本を読みました。私がガイア理論を知ったのは今から30年くらい前になります。バービーボーイズのエンリケさんがbicycleというバンドを結成してアルバムを出したときに、地球を1つの生命体として捉えるガイア理論のことを熱く語っていて、それで知りました。その後、ガイアシンフォニーの映画化などで、多くの雑誌でも取り上げられて目にする機会が増えましたが、当時紹介されている記事の多くは環境保護のトーンが強く、そのときはあまりラブロック氏のことを深く知ろうとは思わなかったです。
今回、本の帯に、100歳の大家が放つ衝撃の未来像と書かれていたので、気になり手に取りました。産業革命以来のアントロポセンの時代が終焉した後の、ノヴァセンと呼ばれる新しい世界のことを予見しています。すなわち人工知能と人類がどう共存していくかということですが、よくあるディストピア的なことではありませんでした。
温暖化に対して超知能が貢献していくことや、宇宙の成り立ちや真理の理解に超知能が欠かせないこと、さらに、超知能の存在が宇宙にとって必然であったことなどが書かれており、これまでのガイア理論を補完するような視点で書かれていたのが興味深かったです。
これは、単に私が誤解していたのですが、ラブロック氏が技術の進歩が地球をダメにしてきたから、自然に戻ったほうが良いという懐古的な考え方ではなく、むしろエンジニア的な視点を持ち、テクノロジーによって環境問題を解決しようと考えていることは新たな気づきでした。システム思考も持ちながら、直観的・大局的な視点も大切にして述べられていたので、大変わかりやすく書かれていたのが印象的でした。(30年前にエンジニア的な思考があることを知っていたら、ラブロック氏のことをもっといろいろ調べていたと思うとメディアに惑わされていたことを後悔いたしました)
ムーアの法則が、皆がその速度を目標に技術開発を進めていったことで、結果的に50年後の未来像を作っていったように、ノヴァセンの考え方が今後の地球の道標になっていくと良いなと思いました。
これからの未来は過去の延長線上にはないと考えられます。ですから、正確に予想していくことよりも、想いがある人が未来像を語り、それに向かって皆が未来を作り上げていくことが大切だと思っています。楽観論かもしれませんが、ノヴァセンの考え方に皆が向かって技術を発展させていくことで、温暖化対策だけでなく超知能と人類の共存が進み、何十年か経った後に「そういえば、2020年頃ラブロック氏が言っていたような社会になっているな」と言えると良いなと感じました。

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