ドラマ感想 - ミエリーノ柏木

ついに入手、「ミエリーノ柏木」Blu-ray BOX。

この 5 年ほどずっと、Amazon のほしい物リストに入っていたこの商品。新品の価格下落にともない中古の値も下がり、ようやく手が出た。

柏木由紀が主演というだけで観はじめたドラマだったが、それまでのドラマのどれにも似ていない新しさと独特の空気感があり、あっという間に魅せられてしまった。

主人公の柏木 (柏木由紀) は、手に触れるとその人の恋愛に関する未来が見える能力の持ち主だ。柏木が従業員として働くカフェは、裏稼業としてカップルを別れさせる依頼を請け負っており、従業員の今野 (今野浩喜) やマスターの佐野 (佐野史郎) とともに、探偵事務所ばりに張り込みや捜査を行い、依頼を遂行する。

本作は一話完結型のドラマで、それぞれの回にゲストとして様々な俳優やタレントが登場する。登場人物はみな一癖も二癖もある性格の持ち主ばかりで、それが物語に面白みや厚みを持たせている。

ほかのドラマと違うのは、恋愛観やその行動における「哲学」の説明と表現だ。これはおそらく、自身が演者としても登場する、企画・原作者である秋元康の哲学論の展開である。それらが正しいとか共感できるとかは視聴者それぞれだが、その見せ方が新しく面白い。

物語の登場人物に台詞や行動で見せるのはもちろんだが、それらの結果が出るまでに一定の「遅延」を持たせることで、視聴者の脳内で推理考察検証させる作りになっている。

全体的にゆるくて穏やかな雰囲気のドラマなのだが、まるで昔の火サスや土曜ワイドのような、刑事ものや推理サスペンスものの緻密な手法を取り入れることで、視聴者の感情だけでなく思考を使わせることに成功している。

物語そのものはさほど複雑な展開ではないが、程よく先の読めない、読みにくさがあり、その塩梅が心地よい。そして物語を差し置いても、構築された世界観の完成度が高い。主役級 3 人が働くカフェの外観・内装・雰囲気ともに完璧で、実在したなら通いたくなる良さが、映像から滲み出ている。

また、毎回どこかで秋元康が登場し、柏木ではなく柏木由紀を呼びつけ恋愛観を語るコーナーがあり、ドラマとトーク番組が混在した構成になっているのも面白い。(秋元康の "講義" の内容はともかく)

価格その他で購入を逡巡しており、気がつけば放送終了から 10 年も経ってしまったが、内容をほどよく忘れた頃に再び観る機会を得る形になったのは、結果的には良かった。うっかり一日に二話以上観ないよう気をつけよう。こういうものは急げば急ぐほど、自分の中に残るものは小さく軽く少なくなるのだから。

さて、ミエリーノ柏木といえば、同局で同じ年に放送されたドラマ、「ノーコン・キッド 〜ぼくらのゲーム史〜」を忘れるわけにはいかない。田中圭や波瑠が出演した、1980 年代以降のビデオゲームを題材とした、これまた新しいドラマだ。

この作品も放送終了から 10 年が経っているし、Blu-ray BOX の中古価格もこなれたことだろう・・・と Amazon で探してみたら、「評価: 良い」で ¥18,400、「非常に良い」で ¥56,102だった。楽天ショップの「新品」に至っては、¥237,037 もする。

テレ東えも〜ん、ノーコン・キッド再放送してよー!!

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