Kindle電子書籍出版(KDP)でつまずいたポイント

先日、Kindle Direct Publishing(KDP)で、今まで公開してきた漫画+描き下ろしを製本して販売してみました。

初めてのKDPだったので、つまずいたところを備忘の意味でもまとめておきたいと思います。電子書籍化の作業自体については多くの方が書かれているので、販売に至るまでに自分の中で論点となった内容と、参考にさせていただいたサイト等が中心になります。


1. 電子書籍販売にあたり、媒体をどう選んだか


シェアと、電子書籍ファイルの作成しやすさからKindleを選択しました。
シェアについて、MMD研究所の調査(2018年8月)では、電子書籍購入先の1位はKindleの45.3%で、2位の楽天Koboの28.1%と大きな開きがあります。実際、私自身電子書籍を購入するのはほぼKindleのみです。


また電子書籍ファイルの作成しやすさについて、色々試したのですが、Kindle謹製の無料アプリ「Kindle Comic Creator」でMOBIファイル(Kindle用の電子書籍形式)を作成するのが比較的簡単でした。フロー全体を通じて鈴木みそ先生の『アマゾンの方から来ました』(無料)がとても解りやすかったです。

実は当初、Koboなど他の電子書籍サービスにも使えるEPUBという形式に変換しようとしたのですが、変換サービスが有料であったり、無料であっても表示がおかしくなる(画像が端に寄る、縦に伸びる等)といった問題が発生したため、Kindleだけなら謹製アプリでいいやと思い至りました(お勧めのEPUB作成ツールがあれば是非教えてください)。


2. ロイヤリティプランをどう選んだか


KDPには35%と70%のロイヤリティプランがあります。また別の概念として、KDPセレクトという、自分の本をKindle UnlimitedやKindle オーナーライブラリーというサービスで読める本として登録でき、読まれた分だけ収益が発生するプランがあります。混同しやすい(私はしていました)のですが、ロイヤリティプランとKDPセレクトの登録条件は別々で、大まかに以下のようになります。


・KDPセレクト登録条件:独占販売
・ロイヤリティ70%選択条件: KDPセレクトに登録(日本、インド、ブラジル、メキシコの読者に販売する場合)+ 小売価格が250円~1250円の範囲


よって自動的に、「Amazon.co.jpでロイヤリティを70%にするためにはKDPセレクトに登録が必要であり、KDPセレクト登録のために独占販売が必要」になります。結果的には同じなのですが、私は「ロイヤリティ70%にするための条件が独占販売」と混同してしまっていました。

実質的な問題はないかもしれませんが、KDP登録しているのに35%プランを選んでしまっていたり、35%にしているから独占販売は不要と思っていても、誤ってKDPセレクト登録をしてしまうことで独占販売の必要が生じたりすることがあるかもしれないので注意が必要です。

また、KDPセレクト登録をしないで70%プランを選ぶことは可能ですが、Amazon.co.jpからのロイヤリティは自動的に35%になります(アメリカ等の読者が買うことは滅多にないことでしょうが、デメリットはないので形式上70%プランを選択するといいのではないでしょうか)。

「独占販売」の定義については、KDPのヘルプを参照すると、そのコンテンツをKindleストア以外で販売、公開しないことです。また、本の最大10%をサンプルとして他の場所で無料公開することは可能です。10%というのは、Kindleでの無料サンプルの長さに相当するとのことです。

今回私はKDPセレクト登録をしないことにより、実質的に35%のロイヤリティプランを選択しています。現状無料公開しているコンテンツ+αを製本したものなので、独占販売の条件を満たせずKDPセレクトに登録できないためです。また、AmazonはKDPセレクトのメリットとして70%という高いロイヤリティを得ることができる以外に、「より多くの読者に知ってもらうことができる」ことを謳っているのですが、その有効性についてご指摘している方がおり、KDPセレクトに登録しようか迷っている方のご参考になるかと思いますので、ご紹介します。


3. その他つまづいたこと

・税金
米国企業であるAmazonで販売するにあたり、何もしなければ米国での源泉徴収税30%が発生します。昔はそれを回避するためには米国納税者番号(TIN)を取得する必要があり、そのために時間と費用が掛かっていたようです。マイナンバー導入後は、マイナンバーを入力することで対応可能になりました。入力フォーム上、マイナンバーとは表示されず「私は米国以外のTIN値を持っています」という箇所に入力するので解りにくいかもしれません。以下のサイトを参考にしました。

・かかる時間
無料でできるMOBI作成ですが、Kindle Comic Creatorで電子書籍ファイルを作成(ビルト)する際、ページ数にもよるでしょうが数分時間がかかります。私は何回も修正したので、結構な時間がかかりました。また、このソフトでは目次の作成ができないため、以下のサイトにある通り、別途目次ファイルを編集しないといけないのですが、その後のコンパイルにも同様の時間がかかりました。

・元データのファイル名

Kindle Comic Creatorでは画像ファイルのファイル名順にページが振られるので、予め製本を想定したファイル名にしておくと良いです。私は公開日ごとにフォルダ分けしていたので、フォルダ名を振ることができるリネーマーにお世話になりました。

以上です。

漫画を描いています。本を買ったりサポートしていただけると励みになります。