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いろいろな句読点類の日本語呼称

9月24日はアメリカで句読点の日です。

今回は欧文のものを中心とした句読点類の日本語名を取り上げます。
明治時代に欧文句読点の日本語名が多数考案され、昭和20年代に日本語の訓令式ローマ字表記のために欧文句読点の日本語呼称が制定されました。

記号の名称表記の見出しは、便宜上、現行漢字と現代かなづかい表記に置き換えております。

FULL STOP/PERIOD/DOT - ピリオド【.】

代表的な名称に〈終止符〉があります。

・とまり〖止まり〗……『羅馬字書き方調査報告』(1900年11/5『官報』)。
・とめ〖止め〗……出典:田丸卓郎・著『ローマ字文の研究』(1920年・日本のローマ字社)/『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月)。
・かんしょうてん【完章点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(1888年・顔玉堂) - 文章が完了したことを示す。典拠の書籍では〈ペリオッド〉とも呼称。
・だんらく【段落】……出典:松島剛, 星野久成・編『英語学大全.後編』(1898年・春陽堂) - 次の文章に移行することにちなむ。
・だんらくてん【段落点】……出典:島田豊・編『英語玉手箱』(1887年・顔玉堂) - 段落の終りを示すことにちなむ。

COMMA - コンマ/カンマ【,】

日本語の横書き文章では読点》の代わりに用いられることが主流です。

・くぎり〖句切り〗……出典:田丸卓郎・著『ローマ字文の研究』(日本のローマ字社)/『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月)。
・くてん【句点】……出典:松島剛, 星野久成・編『英語学大全.後編』(1898年・春陽堂) - カンマと同義の読点》を“句点”と解釈していることにちなむ。
・くとう【句読】……出典:島田豊・編『英語玉手箱』(顔玉堂)
・くとうてん【句読点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - カンマ=読点のみを“句読点”としている名称。
・しょうくぎりふ【小区切り符】……出典:『ローマ字の話』(1909年・英語出版社)。

SEMICOLON - セミコロン【;】

・おおくぎり〖大句切り〗……出典:田丸卓郎・著『ローマ字文の研究』(日本のローマ字社)/『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月) - 中間ではなく大幅な意味合いがあることから。
・なかくぎりふ【中区切り符】……出典:『ローマ字の話』(英語出版社) - カンマの上位に当たることに由来。
・はんじゅうてん【半重点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 重点=コロンの下半分がカンマになっていることにちなむ。

COLON - コロン【:】

日本では大きな区切りを示すコロンの代わりに全角スペースで区切る方式が多く採用されています。

・ふたつてん【二つ点, 2つ点】……[二つ點]出典:田丸卓郎・著『ローマ字文の研究』(日本のローマ字社)/『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月) - 中間ではなく大幅な意味合いがあることから。
・おおくぎりふ【大区切り符】……出典:『ローマ字の話』(英語出版社) - カンマの最も上位に当たることに由来。
・じゅうてん【重点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - ピリオドが楯につ並んでいることにちなむ。

EXCLAMATION MARK - 感嘆符/エクスクラメーションマーク【!】

日本語における感嘆符は、語末だけでなく語中で強調を示す目的で使用されます。日本語のローマ字文章では感嘆符の前に“半角スペース”を入れるフランス語方式を取り入れています。
日本では感嘆符が固有名詞で《i》の代わりの文字として使用されるケースがあり、この場合はツイッターでハッシュタグに対応できるU+01C3ǃ》を用います。

・かんどうのしるし〖感動のしるし〗……[感動ノシルシ]『羅馬字書き方調査報告』(1900年11/5『官報』)。
・つよめるしるし〖強めるしるし〗……『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月) - 日本語文においては感嘆符が強調を示す目的で使用され、語末だけでなく語中にも用いられる。
・かんとうてん【間投点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 間投詞に用いることにちなむ。
・よぶしるし【呼ぶしるし】……出典:田丸卓郎・著『ローマ字文の研究』(日本のローマ字社) - 呼びかけに用いることにちなむ。

QUESTION MARK - 疑問符/クエッションマーク【?】

日本語における疑問符は、句読点類ではなく一般的な“記号”と扱われていることから、[ハテナ]と読む文字として扱われることがあります。

・といのしるし〖問いのしるし〗……[問ヒノシルシ]:『羅馬字書方調査報告』(1900年11/5『官報』)

APOSTROPHE - アポストロフィー【'】

日本語の訓令式ローマ字や国際音声記号などに使用されるものはU+02BCʼ》を使用し、明治33年の『羅馬字書方調査報告』ではフランス語由来の〈アポストロフ〉と呼称されます。ユニコードでは文字扱いのためツイッターでハッシュタグに使用できます。
英語のものは〈右シングル引用符〉を示すU+2019》が正しいとされています。

・おんきり〖音切り〗……現在の日本語ローマ字教育で用いられている呼称。
・きるしるし〖切るしるし〗………『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月) - 撥ねる音のN》と母音字及びヤ行Y》を分けることから。
・はぶき【省き】……[はぶき]出典:藤岡勝二・著『羅馬字手引』(1906年・新公論社) - 省略することにちなむ。
・りゃくじてん【略字点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 英語で省略に用いられることにちなむ。

QUOTATION MARK - 引用符【"】

・いんようのしるし〖引用のしるし〗……出典:藤岡勝二・著『羅馬字手引』(新公論社)/『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月) - 引用符全般を指す。
・いんようてん【引用点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 形状は《“ „》と《‘ ‚》で、現行正書法と異なる。

SINGLE QUOTATION MARK - シングルクォーテーションマーク【‘ ’】

・ひとえいんよう【ひとえ引用】……[ひとへ引用]出典:藤岡勝二・著『羅馬字手引』(新公論社) - 引用符における“従”。引用文における更に引用であることを示す。

DOUBLE QUOTATION MARK - ダブルクォーテーションマーク【“ ”】

・いんしょひょう【引書標】……出典:青木輔清・著『英学童子解:無類捷径.初編』(1886年・同盟舎) - 書籍の内容を引用―出典元の書籍(文章はモンゴル文字のように左から右へ向かう縦書き)では“引證”と呼称―することにちなむ。
・にじゅういんよう【二重引用】……出典:藤岡勝二・著『羅馬字手引』(新公論社) - 引用符における“主”。

HYPHEN - ハイフン【‐】

・つなぎ〖つなぎ〗……[感動ノシルシ]:『羅馬字書き方調査報告』(1900年11/5『官報』)

EM DASH - ダーシ/ダッシュ【—】

日本語の文章でダーシは《——》のように2つ連続で使用したり、《—◌◌—》のように説明文を記載したり、副題を囲むために用いられる。

・ぼう〖〗……『改訂ローマ字教育の指針』(1950年3月)
・とんざてん【頓挫点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 文章が途中で止まることにちなむ。
・へんかせん【変化線】……出典:岡本信・著『英学必携作文独学』(1885年・大東館) - 文章が途中で変わることにちなむ。

HORIZONTAL ELLIPSIS - リーダ【…】

日本語では《…… / ⸽》のように6点=3点リーダ2字分で用いることが原則とされているが、沈黙の長さでリーダの数が異なる。出版社によっては2点リーダ》が用いられる。

・しょうりゃくのしるし【省略の標し】……出典:田丸卓郎・著『ローマ字文の研究』(日本のローマ字社) - 多数のリーダで省略を示すことから。
・りゃくごてん【略語点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 3点リーダ《》の他にダーシ》やアステリスク***》も含まれる。

PARENTHESIS - 括弧/丸括弧/パーレン【( )】

日本では丸括弧はオールマイティーな用途に用いられます。

・そうにゅうてん【挿入点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - パーレンだけでなくブラケット[ ]》も含まれる。

BRACKET - 角括弧/ブラケット【[ ]】

・かぎ【】……出典:島田豊・編『英語玉手箱』(顔玉堂) - 前述の丸括弧の補助となることから、当て字で表記。

BRACE - ブレース【{ }】

・れんごせん【連語線】……出典:島田豊・編『英語玉手箱』(顔玉堂) - 大型の半分のブレースで意味をまとめることから。

ASTERISK - アステリスク/アスタリスク【*】

文章の注釈の他に、伏せ字表記にも用いられます。
国際音声記号に存在しない発音記号を示すラテン小文字エックス《x》と同じ幅の拡張ラテン字母がありますが、ユニコード未登録です。

・せいこうてん【星光点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂)

SECTION - セクション【§】

・しょうひょうてん【章標点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂)

PILCROW/PARAGRAPH - パラグラフ【¶】

・てんせつてん【転節点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 文章の内容が一転することにちなむ。

CARET - キャレット【‸】

・かいじてん【楷字点】……出典:生方織衛・著『英学独修指針』(顔玉堂) - 空白の箇所など正しい手本を示すために用いることから。
・てんちゅうひょう【添注標, 添註標】……[添註標]出典:島田豊・編『英語玉手箱』(顔玉堂) - 注釈を書き加えるために用いることから。
・りゃくてん【略点】……出典:岡本信・著『英学必携作文独学』(大東館) - 文章の一部が抜けて略されることにちなむ。

CORNER BRACKET - カギカッコ【「 」】

・くかく【勾画】……[勾畫]出典:漢文会同人・編『漢文講読通則.前編』(1912年・金港堂) - 改定常用漢字に採用されたカギの意の《》は中国語の二簡字で《鉤・鈎・钩》の略字として採用されていた。

参考HP

文化庁 | 国語シリーズ
https://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/series/index.html

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