私たちが戦うべき本当のライバル

企業の戦略を考えるとき、私たちはいつも『ライバル』について考える。

市場を知るとはライバルが誰で、彼らがどんな手を打っているかを知ることであり、自分たちの立ち位置がどこかを認識することだ、と。

業界内でマーケットシェアがどれだけあるか、他業種と比べて市場規模はどのくらいか、そうやって常に『他者』と比べている。

しかし、ふと自分がモノを買う時になって思うのだ。

最大のライバルは、『買わない』ことなのかもしれないと。

自分の購買行動を振り返ってみても、ここ最近の買い物は必需品を除けばほとんどが指名買いしているものだ。

バッグが欲しいとかスカートが欲しいとかではなく、『このブランドのこれが欲しい』、もっと言えば『この人が作ったこれが欲しい』で買うようになったように思う。

そしてその根底にあるのは、何かが欲しいと思って調べるコストが上がり、選ぶことのコストが上がっている、という状況ではないだろうか。

例えば私は昨年夏に引っ越したのだけど、半年経った今も家具がまったく揃っていない。ダイニングテーブルも本棚も欲しくて探すものの、これが欲しいと思えるものになかなか出会えずいまだに購入に至っていない。

冷蔵庫や洗濯機など生活に必要なものは『これでいいや』でそのときベターだと思ったものを買うしかないけれど、とりあえず何かで代用できるものは、これという決め手がなければ購入へのハードルがとても高いように思う。

それは選択肢が膨大に増えたからでもあり、機能が横並びになった分共感したり応援したりできるポイントがば購入の決め手になりつつあるということでもある。

これはモノに限ったことではなく、無形のサービスでも同様だ。

以前友人と『どこか温泉に行こう』と雑誌やインスタを見ながら相談したとき、これという決め手がなく結局いつどこに行くのか決まらないままに解散してしまったことがある。

行きたいところがなかったのではない。むしろどこも素敵すぎて、絞り方がわからなくなってしまったのだ。

この場合、温泉旅館が顧客を奪われた先はライバルの旅館やホテルではなく、『行かない』という選択肢だ。しかも積極的な選択ではなく、本人たちもその選択をしたとは気づかないほど、消極的に選んだ結果である。

私たちはすでに豊かすぎるほど多くのモノやサービスに囲まれていて、日々の中でそれらを選ぶだけでも膨大な時間と労力をかけている。だからこそ何かが欲しいと思っても調べる行程だけで疲弊し、決めることを後回しにしてしまう。

しかし欲しいという気持ちは常にバックグラウンドで動いているので、ピンとくるブランドや人に出会えば『こういうものが欲しかったんだ!』とすぐに財布の紐を開く。

つまりこれからモノを売る上で重要なのは、いかに選ぶというめんどくささと戦うかなのだ。

その解決方法のひとつが、まるっとコーディネートを任せてもらうことだろう。

例えば前述の引越しにしても、ひとつひとつの家具家電を選ぶのは骨が折れる。かといって『新生活応援セット』が自分の部屋のサイズや雰囲気に合うかはわからない。

そこでもし自分の好みや予算、間取りを鑑みた提案をしてくれるコーディネーターがいたらどうだろう。自分では見つけられなかったいいモノを見つけ、しかもそれぞれが調和するように全体をコーディネートしてもらえるとしたら。

これまでは百貨店の外商がつくようなお金持ちしか享受できなかったことも、AIをはじめとするテクノロジーが効率化してくれるようになった今、普通の人でも利用できるようになるまでそう時間はかからないだろう。

また、もうひとつの解決方法は、『指名買いされるブランドになる』ことだろう。これまでと異なるのは、機能よりも思想への共感が重要になりつつあるということだ。

参考:「これからは『世界観』が商品になる

もちろん機能が優れているに越したことはないが、機能はすぐに模倣されうるし、そもそもこれ以上の機能改善が望まれていないことも多い。

例えばTシャツやトートバッグのようなベーシックアイテムは、利便性を追求するよりもロゴがプリントされているだけで買いたくなるようなブランドを目指した方がいいだろう。

それらは身につけるだけでそのブランドのファンだとわかるし、ひいては思想の表明につながる。

今はIntagramを通せば体験を可視化できるようになったので、これは無形のサービスにも同様のことが言えるだろう。

どんなカフェに行き、レストランで何を食べ、どこのホテルに行くか。

機能自体に大した差がない場合、私たちが選ぶ決め手は『人に語りたくなるポイントは何か』になる。

単にSNSに投稿して自慢したいわけではなく、誰かに語りたくなるほど感動的な体験ができるかどうか。私たちは無意識のうちにそのタネを探しているのだ。

だからこの時代にモノを売るなら、『選ぶ』という行程をいかになくすかを考えなければならない。

そしてそのためには自分たちの思想や哲学を言語化し、滲み出る自分たちらしさを構築していくことが必要不可欠なのだ。

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今日のおまけは、『Amazon Momentsはスモールビジネスのキャンペーンをどう変化させるか』について。

まだ日本だとあまり話題になっていないAmazon Momentsですが、めちゃくちゃ可能性のあるサービスだなと思っていて、これからどう活用されていくのか?について私なりに考えたことをば。

ちなみにAmazon Momentsについて日本語で書かれた記事がなかったのですが、下記の記事は比較的読みやすい英語なのであわせてどうぞ。

Amazon Momentsがどんなサービスなのかというと、端的に表現すれば

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最所あさみ

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最所あさみ

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