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大人のまなびは図書館からはじまる

無類の本好き兼引っ越しフリークの私は、引っ越すたびに近所の図書館を調べ、行きつけの図書館を作る。さらに旅行先でも図書館に寄ったりするので、おそらく人生で訪れた図書館数はわりと上位に入ると思う。ポケストップが図書館にしかない世界だったらトップトレーナーになっているレベルである。

まわりの友人も本好きが多いけれど、ビジネスパーソンのほとんどは書店に向かうので、図書館トークができる人にはなかなか出会わない。けれど「学び」を重視するならば、書店よりも図書館の方がよいケースもあると私は思っている。

私が図書館愛好家なのは、書籍代をケチりたいからではない。毎月書籍代だけで2万円近く消費しているし、そのうちの半分近くは書店で購入している。線を引いたり書き込みをしたりと汚しながら読むタイプなので、5,000円以上する専門書や絶版本もわりと躊躇なく購入している。

ではどのように書店と図書館を使い分けているかというと、私の中で書店は「エンタメ施設」、図書館は「学びの空間」と区別している。

書店は本を売るための場所なので、新刊や今話題の本などの「売れ筋」が目に入りやすい作りになっている。さらに最近は書籍と絡めた雑貨を組み合わせた売場や書店員が個人的なおすすめポイントをPOPにするなど、新しい出会いを生み出す工夫を施す書店も増えている。欲しい本が決まっているならAmazonでポチッと注文すればいい時代だけれども、「欲しいものがあるわけじゃないけど何かが欲しい」とふんわりした欲望をもってうろうろするだけで楽しめるのはリアルな場所ならではの強みだと思う。

一方で、「このテーマについて学びたい」と方向性が定まっている上で参考図書を探すならば、書店よりも図書館の方が向いている場合が多い。学術的に分類されているのはもちろんのこと、書店だと売上の観点から取り扱いがしづらいけれど内容としては価値のある本も書棚にずらりと並んでいる。

私は図書館に行った際、専門書だけでなく小説やエッセイなどの文芸書の棚を見て回るのも好きだ。好きな作家の作品も、書店と図書館では異なる出会いがあったりする。図書館で代表作以外のマイナーな作品を知り、後日調べて購入したこともある。
書店も図書館も同じ「本が集まる場所」ではあるが、棚の構成がまったく違うところが面白い。

そしてなにより、図書館には司書さんがいる。司書さんによるレファレンスサービスは、学びの質を何倍にも高めてくれるし、最適な情報にたどり着くためのショートカットにもなる。

以前Twitterで書店員さんが「書店員に司書さんのような役割を求められても困る」といった主旨の内容をツイートしているのを目にしたことがある。たしかに大多数の人にとっては書店がもっとも身近な「本の集まる場所」であり、書店員さんは本のことならばなんでも知っていると思っている人も多いだろう。
けれど、本来は本にまつわる相談、つまりレファレンス業務は国家資格である図書館司書資格保有者が担う仕事であり、高度な専門知識が必要な分野だ。最近増えてきた書店でのコンシェルジュサービスも娯楽や趣味の分野であればいい本と巡りあえるかもしれないが、専門分野の知識を深めたい場合はやはりその道のプロに相談する方が間違いがないし効率的である。

以前、「向学心が搾取されやすい時代に」という記事を書いた。向学心の高さを最新のビジネス書だけで消費していると、まさにここで書いた「向学心の搾取」に絡めとられやすいと私は思う。

ここで言いたいのは、書店よりも図書館の方がいいとかビジネス本が悪いといった二元論ではない。それぞれによさがあり、必要に応じて使い分けるリテラシーが求められているのではないか、ということだ。
さらに、ビジネス書や話題のテーマに興味をもったらそれを「深める」ことができるかどうかでビジネスパーソンとしての価値も変わってくるだろう。その方法のひとつが、図書館であり司書さんによるレファレンスサービスであると私は思う。

最近、同世代と話していると大学院進学が話題にのぼることも多いが、研究したいテーマについて自分でもうまく言語化できていない場合でも、図書館で調べる経験を通して自分の興味にあった分野を見つけたり、先行研究に出会うことは多い。大学院進学までは考えていなくても、自分の興味関心のある分野について自分の頭で考え、自分なりの意見をもつためにはトレンドの情報だけでなく、これまで蓄積されてきた叡智にアクセスすることが必要不可欠だと私は思う。

これからは、「いかに売上を伸ばすか」「どうやって拡大するか」といった "How"の情報と同じくらい、「何を正義とするか」「どうあるべきか」といった答えのない問いに向き合い続けるための知的胆力がますます必要とされる時代になっていくだろう。そのためにも自分が気になるテーマを自ら深め、歴史も含めて俯瞰して理解するためのアプローチを習得していかなければならない。

そのための入り口が図書館であり、大人の学びは図書館からはじまるのではないかと、図書館愛好家の私は思うのである。


これまで数々の図書館を渡り歩いてきた(?)私が激推しする不動のナンバーワン図書館が広尾にある東京都立中央図書館。

5階建ての立派な建物で、電源席も豊富なので参考書籍を読み比べながらPCで記事を書くといったこともしやすくて本当に最高。書架に並んでいる本の選書も素晴らしいし、書庫も大きいので国会図書館の次くらいの蔵書数があるのでは?国会図書館に行くほどでもないけどちゃんとした図書館に行きたいニーズを満たす最高の図書館。行くたびに「東京都に税金納めててよかったーーーーー!!!」と思っている。有栖川記念公園の中にあるので午前中に園内を少し散歩してから立ち寄るのもおすすめ。広尾駅からも近いので帰りに駅前のTruffleでパンを買って帰りがち。
本当にいい図書館なので都民みんな行って欲しい。都民じゃなくても行ってくれ。東京都立中央図書館本当にいつもありがとう大好き!!!!

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