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「ラグジュアリー」の定義が変わる瞬間に、私たちは立ち会っている

2017年、私がもっとも思想的に影響を受けた取材記事が、昨日公開になりました。

「その土地らしさ」は、すでに自分たちの中にある。佐賀・嬉野の精神性を伝え残す「嬉野茶時」ができるまで【後編】

事の発端は、2017年9月のこと。

「最所さんのおすすめのWebメディアはありませんか?」
と佐賀県庁の職員さんから質問され、間髪入れずに紹介したのが「灯台もと暮らし」でした。

そこからあれよあれよいうまに話がまとまり、編集長の伊佐さんと一緒に2泊3日の取材旅行へ向かったのが11月のこと。

取材先でもあり、宿泊もさせていただいた和多屋別荘は、隅々まで代表の小原さんの哲学が行き届いた美しい空間でした。

旅館は小宇宙ですから。この3万坪の敷地にどんな仕掛けを作っていくか。それを考えるのが私の仕事です。

旅館としての哲学を語る小原さんの言葉は、取材から数ヶ月経った今も深く印象に残っています。

場を作り、空間を彩るとは、すなわち自らの思想を持つことである。

小原さんの美意識が反映された旅館内を散策しながら、人に感動を与えるのは上辺の美しさではなく、そこに込められた思想の深さなのだと感じました。

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佐賀を取材しようと決まってから、取材先に「嬉野茶時」を選んだのは、私自身が晩餐会やラグジュアリーなものに強い興味を持っていたからでした。

嬉野茶時の参加費は、ランチで6000円前後、ディナーで2万円前後と地方にしては破格の金額です。

東京ならばいざ知らず、地方の、それも福岡や大阪といった都市ではなく、交通の便も悪い土地でこれだけの金額をとって本当に成り立つものなのか?と半信半疑で取材へと向かいました。

しかし、取材で発起人である3人のお話を伺い、さらに天茶台の静謐な空気を吸って、「きっとこれから、 "ラグジュアリー"の定義が変わるのだ」と感じました。

「ラグジュアリー」といえば、エルメスやシャネル、ディオールなどの高級ブランドや煌びやかな外資系ホテル、目も眩むようなジュエリー&ウォッチ、船上であけるシャンパン…そんなわかりやすい憧れを体現するものでした。

しかし、人は少しずつ所有欲を失い、自分が享楽的な生活をするよりも、人のために貢献することで、人生の意義を見つけ出そうとしています。

先日 "なぜ、いま「思想」が重宝されるのか"でも書いた通り、正解のない時代だからこそ、揺るがない思想の価値が上がってきています。

つまり、これからのラグジュアリーとは「深い思想と豊かな物語があること」になっていくのではないかと思うのです。

その土地だからこそ育まれた、オリジナルの美意識。

これからの時代、人が価値を感じる「ラグジュアリー」は、徐々にこの方向へ進んでいくはずです。

こうした変化が起きるとき、有利なのは連綿と続く歴史を受け継ぎ育んできた土地や人々です。

他者と比較して無理矢理つくりあげた「差」ではなく、自己を見つめ、深く理解しているからこそ花開いた「オリジナリティ」こそが、人を惹きつける磁石になっていくのです。

これまで、地方は東京に比べてお金の面でもクオリティの面でも「諦める」ことが多かったように思います。

土地代も人件費も安いのだから、商品やサービスも東京より安くて当たり前。
東京のように最先端のクリエイターがいるわけではないから、多少クオリティが低いのは仕方ない。

こうした諦めは、少し前までの時代はたしかにその通りだったのかもしれません。

しかし、これからは「絶対的にゆるがないもの」をもつ人が活躍する時代です。

そして地方には意識的にせよ無意識的にせよ、この絶対に揺るがない哲学や信念をもつ人がたくさんいます。

ここ数年で一気に地方が注目を浴び、移住が盛り上がり始めたのも、その土地が受け継いできた哲学や思想に惹かれる人が増えてきたからなのではないでしょうか。

東京で暮らしていると、「何のために働くのか」「自分とは何か」と、根無し草のような自分の価値を疑う瞬間を感じる人も少なくないと思います。
地方に暮らす人が眩しく見えるのは、そんな悩みを一切もつことなく、絶対的に信じる価値があるからなのかもしれません。

昨年一年間、私が感じ、思考し、発見したことの集大成を、今回の取材を通して言葉にできたように思います。
読んでいただいた人の中に、何か新しい気づきがうまれますように。

「その土地らしさ」は、すでに自分たちの中にある。佐賀・嬉野の精神性を伝え残す「嬉野茶時」ができるまで【後編】

(Photo by isa tomomi

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