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ブランドは「なる」ではなく「ある」もの

『なんでうちを選んだんですか?というアンケートをとったら、一番が "雰囲気のよさ"だったんですよ』

とあるブランドの話を聞いたとき、これこそが代替されないもっとも重要なブランド価値だ、と思った。

私たちはつい成功の理由を知りたがるけれど、本当に強いブランドの成功要因を一言で言い表すのは難しい。よしんば説明できたとしても、要因はそれひとつではない。

なぜならば、成功とは多層的なものだからだ。

しかも外部環境やタイミングなど、コントロールできない要素にも大きく左右されるので完全に再現性をもたせることは難しい。すでにライバルが成長した後で同じ施策を打っても効果は低いだろうし、世の中の風潮という追い風で成長のスイッチが入ることもある。

『○○のようなブランドを目指したい』と目標を掲げて同じ仕組みや施策を取り入れても成功しないのは、そのブランドを作り上げているのは実は本人たちすら気にもとめていないほど小さな決断の積み重ねだからだろうと思う。

ブランドの世界観は、立派な思想を声高に宣伝したりクレバーな戦略を展開することではなく、日々の立ち居振る舞いや使う言葉といった選択によって作り上げられている。

つまり根っこにある価値観や姿勢がすべての決断に滲み出し、その集合体が結果的に世界観を形成するのだ。

だからこそ成功の秘訣を聞かれても一言でパッと答えることは難しいし、顧客側も選んだ理由や彼らの強みを言語化できない。

言語化できないからこそ再現性が低く、他者に模倣されにくい。それこそが本来の意味の『ブランド』の価値だ。

そしてそうしたブランド価値は、他の人が成功したやり方を真似るよりも、自分たち自身が『これだよね』と自然に選んだ結果によって積み重ねられていくものだ。

幸福の青い鳥と同じく、ブランド価値も追い求めている間は手に入らず、ふと足元を見てみると『そこにあった』と気づくものなのだと思う。

最近巷でよく言われる『ストーリーを語る』も同じことで、高尚な哲学や思想を無理に語ろうとする必要はなく、ただ自分の姿勢や考え方を等身大で語ることが、結果的にその人のストーリーになっていく。

発信しようと考えたとき、人はついブランド戦略やキャラ設定を考えてしまうものだ。なるべく人によく思われたいし、早く結果を出すためには人がやっていないキャラで打って出るのが効果的に思えてしまう。

しかし、そうやって無理に何かになろうとしても、いつかどこかで限界がきて続けられなくなってしまうタイミングがくる。

人も企業も自分以外のものになることはできないからだ。

以前『人生は自分らしさに回帰していく旅』と書いたけれど、これは企業も同じことだと私は思っている。

無理に何かになろうとするのではなく、より自分らしくあろうとすることこそが、知らず知らずのうちに唯一無二のブランドを育てていく。

人も企業も、何か他のものに『なろう』とする必要はない。ただ自分たちらしく自然体であること。その結果、ブランド価値がそこに『あった』ことに気づくのではないかと思うのだ。

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