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NEE 5th TOUR「JOKE」2023.5.20 @EX THEATER ROPPONGI


はじめに

先週末に六本木EXシアターで行われた、NEE 5TH TOUR「JOKE」のライブレポです。このツアーは2nd アルバム「贅沢」のリリースツアーであり、東名阪全3公演で構成されました。ツアーファイナルは前回のツアーと同じ六本木EXシアター。以前よりまた一段と知名度が上がったこともありSOLD OUT公演となりました。

本編

SE 破棄
 照明が消えてアルバム1曲目のインスト曲「破棄」が流れ始めると、リズムに合わせて5拍の手拍子が起こる。バッチリ揃うところからもこのアルバムを聴き込んだ人達がライブに来てるのだとわかる。手拍子が終わるタイミングでメンバーが登場すると驚くほどの大きな歓声が上がった。客もメンバーも、声出しのできるツアーを待ち望んでいたかのよう。途中で切られることなく「破棄」が最後まで流れると、1曲目に繋がるセッションに突入した。

1 生命謳歌
 アルバムの流れからいっても順当ではあるが、曲前のセッションでもそれっぽいフレーズが挟まれるのでより確信を強く得る。MVが公開され既に60万回再生されてるリード曲であるだけに、盛り上がりは十分。大樹(Dr.)による最後のかき回しは音源より長くド派手で、ここでも大きな歓声が起こる。

2 バケモノの話
 間髪入れずにアルバムの中で1・2を争うロックチューンへ。そういえばこの曲は前回のツアー(緊急全国逃避行)のファイナル、同じEX THEATER ROPPONGIで未発表の新曲として披露されたんだったなと思い出す。ワンマンツアーの前にフェスでも披露されていたこともあるが、配信リリースからのアルバム収録で既にこの曲もすっかりファンに馴染んでいる。アルバムでは終盤に配置されているこの曲がツアーでは2曲目というのも面白いし、こういう曲の落ちサビでくぅ(Vo.&Gt.)のみになる部分ではやっぱりこの人ギター上手いなと実感する。

3 九鬼
 ここでアルバム曲ではないがライブ定番曲の九鬼へ。イントロはライブの時の長いバージョン、1番終わりでは音源とは違うギターのみの音のブレイクが入るのもライブでは定番。イントロから畳み掛ける展開がいかにもNEEらしいこの曲だが、サビや間奏の夕日(Gt.)のプレイはいい意味で大味でスケールがでかく、それこそイントロのような速弾きもできる人がこういうギターを鳴らすとまた違った魅力があるんだなとライブで再確認できる曲である。

4 緊急生放送
 くぅによる短いMCの後、少し不気味な赤い照明と共に始まったのは前回のツアーのリード曲でもあった「緊急生放送」。フェス等ではあまり披露されない楽曲なだけに、初めてワンマンに来るファンは待ち望んでいたのだろう、イントロの時点で大きな歓声が起こる。シングル「SEKAI」の1曲目でもあるこの曲は、イントロからして「始まり」感が強い。3曲を終えてMCを挟み、ここからアクセルをかけていこうという意気込みが見える。

5 本日の正体
 続いてもアルバムに収録されている曲。「SEKAI」の次に単曲で配信リリースされたこの曲は、MVも含めてNEEの中でもバンド感が強く、少し初期を思い出させるような曲調でファンからの人気も高い。2番に入る前のかほ(Ba.)のスラップもバッチリ決まっていた。ここからは完全なる持論なのだが、本日の正体とバケモノの話という連続でリリースされた2曲はNEEの中でバンドサウンドへの回帰をテーマにしているように思う。

 それは前回のツアーでの「ハッタリ」や「ぱくちー」が同期音源なしで披露されたことからも分かるように、生の楽器だけでできることが広がったということである。同期音源が少ない分、サビではアーミング奏法でぎゅんぎゅん言わせる夕日のギターが飛び道具の役割を担っているが、そうなってもバンドサウンドが薄くならないくらいにくぅもギターが上手いし(夕日をして「カッティングがめちゃくちゃ上手い」と言わしめる程)、リズム隊も単なるリズムキープの枠をはみ出して派手にやれる実力があるからこそだと思う。

6 嫌喘
 曲に入る前に軽く弾かれたギターフレーズで(ただの手癖か…?いやまさか)と期待してしまったこの曲がまさかのセトリ入り。嬉しい悲鳴がフロアの各地から上がる。nee時代にはキラーチューンだったこの曲も最近では本人達がレア曲扱いするほど披露される機会が減ってしまったが、アルバムツアーだろうとこのような初期の曲をセトリに織り交ぜてくれるのは本当に嬉しい。ピンクの照明をバックに2人が向かい合って弾くギターのカッティングは妙に色気があった。

7 病の魔法
 続いて披露されたのはアルバムでも7曲目に配置される病の魔法。Aメロでの大樹の手数の多いドラムはライブで聴くと圧巻の一言。青い照明に包まれ、少し残酷なまでに美しい景色を見せるこの曲ではファンも静かに聴き入っていた。こういうシリアスな曲でも客を飽きさせずにステージに釘付けにさせるパフォーマンス力は流石だ。アウトロの夕日さんのギターメロディか綺麗すぎて思わず少し泣いてしまったのはここだけの話。

8 歩く花
 少し前はキーを上げて披露されることが多かったこの曲だが、今回は原曲キーでの演奏だった。言わずと知れた、最初にneeとしてMVがYouTubeに出た曲。私もこの曲で知ったので思い出深いし、フェスではやらなくてもワンマンではまだやってくれるのがとても嬉しい。2ndシングル「コメカミ中毒」から嫌喘も含めて2曲も演ってくれたことになるが、最新アルバムのツアーに入れても違和感が全くないのはNEEの音楽が初期からずっと一貫したものであるからだと思う。

9 おもちゃ帝国
 「みんな元気?楽しんでる?NEEのライブは楽しいね」と誰よりもこのライブを楽しんでそうなくぅのMCの後に披露されたこの曲ではスマホによる撮影が許可された。アルバムの中から先行して配信リリースされた時から人気を博していたという肌感覚だが、「若者のすべて」や「JAPAN JAM」で演奏された際も大きな歓声が上がっていたことからもその認識が間違っていなかったことが窺える。曰く「東京のことを歌った」この曲が都心のど真ん中、六本木で鳴らされることに対しては感慨深くならざるをえない。

10 不革命前夜
 そんな人気曲「おもちゃ帝国」の次の曲目は、NEEの知名度を最初に押し上げた、言わずと知れた代表曲。イントロからクラップが巻き起こり、「革命は起こりません」を合図にみんなが飛び跳ねる様は最早見慣れたもの。この曲を中盤で切ることができるくらい今のNEEにはキラーチューンが多い。声出し解禁を受け、落ちサビやアウトロを客に歌わせるということが叶うようになったくぅは本当に嬉しそうだった。

11 DINDON
 「俺が音楽を続ける理由は、有名になりたいというのもあるけど、その一番の理由はこいつら(メンバー)と一生バンドをやっていきたいから。そしてここにいるみんなとずっと音楽をしてたい。めっちゃめんどくせえ世の中だけど一緒に変えていこう。愛を歌わせてください」というMCから始まった「DINDON」。声を絞り出すように歌うくぅのボーカルがとても印象的だった。

 この曲がリリースされたのはちょうどロシアによるウクライナ侵攻が始まった頃で、「支配者も正義も家に帰れば隣で眠る誰かがいるんです」という歌詞からはこのことに対してくぅなりに思うことがあったことが窺われる。奇しくもこのライブの日は日本で行われるG7サミットのためにウクライナのゼレンスキー大統領が来日した日。ただの偶然だが、世界についてNEEなりに歌ったこの曲でもう少し世界が平和に変わればな、というようなことを夢想した。

12 TAX!!!
 恐らくNEE史上一番優しい曲だと思うDINDONが終わると、時間にして1分くらいだっただろうか、爆音のギターや打ち込みの音、大樹による不規則なリズムのドラムがフロアに響き渡る。メタルへの造詣も深い夕日のギターが炸裂するこの曲ではスモークが焚かれ、落ちサビの前まではくぅがマイクスタンドを横に向け真横に向かって歌うという演出があり、普段とは違う視点で、ライブに向かうくぅの熱量を実感できた。音源を聴いた時から思ってたがライブ映えがえぐい1曲。

13 年頃です。
 続いてもアルバムから、ピアノのイントロが途中で一瞬途切れたりと不安を煽るような「年頃です。」が披露される。音源にある特徴的な子供の声のような高いコーラスは同期音源とかほが担い、音源通りの世界観を展開していく。先日のTikTok Liveでも披露され大きな反響を呼んでいたこの曲だが、この日もくぅがバンドボーカルでラップをしながらステージを自在に歩き回り客の目を釘付けにする。こういうヘヴィな曲でこそNEEの演奏力の高さが再認識できる。

14 第一次世界
 アルバムから重厚なサウンドで2曲が届けられた後は、NEE第2のキラーチューン「第一次世界」。今年の初めにTikTokでバズり、一段とNEEの存在を世に知らしめたこの曲を聴きたいとこのライブに来た人もいるだろう。定番曲であるだけにイントロのかほのベースから歓声が上がる。アルバムからの初披露曲を2連発した後にいつもの曲で揺り戻しをかける流れの作り方は上手い。サビでどうしても跳ねたくなるような魔力がこの曲にはあると思う。

15 なんで
 アルバム収録の新規曲で、NEE的にはあまり多くはない英語詞が特徴的な「なんで」では客は静かに聞き入りゆっくりと顔を左右に揺らしていたのが印象的だった。なんというか、手を挙げて左右に振るほどの主張はせず、でもこの曲に横乗りしたくて、みんなで顔を横に揺らすっていう光景がとてもNEEのファンだなって光景でとても微笑ましかったし、大団円的なコーラスも相まってこの曲でライブが終わってしまうかのように錯覚してしまうほどだった。それほど美しい曲だった。夜中の風船と歌詞が類似しているのは何か理由があるのだろうか。

16 こたる
 メンバー全員によるMCが入り、このツアーへの感想がそれぞれ述べられる。大樹の番を飛ばすというくだりは毎回のお決まりっぽいが、ワンマン故のアットホーム感で展開されていくこのMCコーナーではメンバー同士の仲の良さが伺えた。その後には1stアルバム「NEE」以前のキャリアからの選曲が続く。こたるは地味に演奏率が高く、こういうミドルチューンにおいても間奏で夕日の爆裂ギターソロが展開するという絶妙なバランス感覚がNEEらしい。

17 万事思通
 先日の「若者のすべて」でアンコールの曲を募った際に現地のファンの声で採用されたことも記憶に新しい万事は、neeがNEEに改名した後に初めてMVが公開された曲(監督はくぅが務めている)であり、どこがサビだかわからないほど目まぐるしい展開にも関わらず合いの手が完璧なところからもファン人気の高さがわかる。こんな展開の仕方をする曲でも全くテンポがブレない大樹のドラムはさすがだし、間奏のかほのベースソロにクライマックスでの夕日のシャウト等、それぞれの見せ場もありフルコースみたいな1曲だった。

18 月曜日の歌
 続いてはイントロでコーラスが巻き起こっていた「月曜日の歌」。ファン以外からの知名度はわからないが、フェスやイベント等で最後に披露されることも多くなってきたこの曲はNEEの必殺曲になりつつある。サビで客が飛び跳ねる光景は最早見慣れたもの。YouTubeで昨年「NEEてれ『月曜日の天才くん』」という番組が配信されていた際、学校にあまりいい思い出がないとメンバーが語っていたが、同じようにしんどい思いをしてきたNEEからの、学校や職場に月曜日からまた立ち向かう「戦ってばかりの主人公」へのエール曲として背中を押されている人も多いのだろう。

19 アウトバーン
 2年前、1st TOUR「鬼ぎりTOUR」の東京ファイナルにてメジャー1stアルバムからの先行曲として披露され、その日の24時に配信リリースもされたアウトバーン。当時のライブで「ドイツの高速道路の意味」とくぅが語っていたが、その名の通りライブでは音源以上にノンストップで駆け抜けていく。イントロからかほの重厚なスラップベースが響き渡ったり、Bメロではドラムのリズムパターンが変わったり、落ちサビでのキメのかっこよさだったり、ロックバンドNEEを堪能できる1曲。

20 ボキは最強
 NEEの代名詞とまでなっているグッズのゴーグル「ボキのゴーグル」の元ネタとなっているボキは最強。私の位置からは見えなかったが、どうやらくぅは前方にいるファンのゴーグルを借りていたと聞いて羨ましい限りである。イントロやサビでは四つ打ちで飛べる曲だが、転調や展開の変化、Bメロではフックのあるリズムになり、2番Aメロは1番Aメロと大きく違うなど、インディー時代からやっていた曲にしては尖りすぎている。1サビ終わりと間奏ではお馴染みの「ボキポーズ」をくぅと観客がバッチリ決める。

 最近のライブでは間奏はかほと夕日のソロ対決というわけではなく、夕日のギターソロの後にかほのベースソロという展開が多いが、この日も例に漏れずそのパターン。だが即興でやってるんじゃないかと思うほど好き勝手なソロに、リズムを完璧に合わせられる大樹のドラムプレイも流石だった。曲途中でこの曲がラストであることが知らされると少し寂しい気持ちもあったが、とにかくこれまでが特盛級のセットリストだったので満足感が半端ない。これまでのツアーで育ってきた曲達で〆るというのもNEEからの信頼を感じる。

アンコール

EN. 1 ごめんなさい
 アンコールでの「帰りの会」の合唱を受けてステージに再度登場したくぅは「ファイナルだしアンコール違う曲やりたい」と言い出したが、とりあえず元からやる予定だった曲をまずやって、その次にやる曲を観客のアンケートで決めようという結論に落ち着く。ということで本来のアンコール曲「ごめんなさい」だが、くぅの内に秘められた劣等感のようなものが曝け出されているこの曲は歌詞が歌詞カードに載っていない。それは前回のアルバムの最後の曲である「帰りの会」もそうなのだが、今回はその時とは違うような意味合いを感じた。このツアーが終わったら披露される機会は少なくなりそうだからこそ、皆1音1音に聴き入っていた。

EN. 2 aLaLe
 声出し解禁になったこともあり、アンコールでやる曲を客に募るメンバー。3階スタンド席ではaLaLeが優勢、2階スタンド席は無言(おそらく関係者席だからだろう)1階アリーナ後方ではaLaLe、びりびりのーん、ハッタリ等の声が上がる……が、ここで夕日がPCで同期音源を調べ、今準備ができているのがaLaLeとハッタリしかないことが発覚し、aLaLeに決定する。「この曲割と難しいんだよな……」とぼやくメンバーに対して「がんばれー!」という声がフロアから上がる光景はファンとの距離の近さを感じてなんとも微笑ましい。

 aLaLeは不革命前夜がバズった後に出された曲で、曲名の元ネタはくぅの実家で飼われている犬の名前なのだが、こむぎこ2000とのタイアップでより広い層に知られた次に出した曲がよりくぅの内面に迫るような曲だったことに、ある種の安心感を覚えた記憶がある。それ故かアルバムに収録されていないにも関わらずこの曲はファン人気が高い。5分近い曲の中で色んな展開があるが、「落ち着いたら夢でも見てなよ」「苦しくなったら飯でも行こうよ」と語りかける優しさを感じる曲である。

総括




 アンコールも含めて22曲、最近行ったワンマンの中でも最多曲数だった。アルバムの曲は「ハッタリ」以外披露したうえで、今までの曲も組み込んだセットリストでとても充実していた。MCが必要以上に多くなく、畳み掛けるように曲をやってくれるから集中が途切れないのでありがたい。それだけ深くNEEの音楽観に浸れるからである。かと言って近づきがたい感じでもなく、身近にあるからこそNEEの音楽は染みる。
 今回のセットリストや「ここにいる全員でどうかNEEをよろしくお願いします。」というMCからは、どれだけ人気になろうとNEEの音楽の根幹は変わらず、今いるファンの誰1人として見捨てないという覚悟を感じる。それはより名前が広く知れ渡りライブの動員も増えたからこそ湧いた感情なのかもしれない。何にせよ、依然これからがまだまだ楽しみなバンドだ。次は6月23日、東京キネマ倶楽部にてファンクラブイベント。FC会員向けならではの濃密なライブを期待したい。


参照:DINDON前の MC  https://twitter.com/nee_no_qoo_daaa/status/1660554234784526336?s=46&t=BD1tQTOqswb8yRMmJqGBpA

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