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XIIX TOUR「XIIX」@LINE CUBE SHIBUYA 2023.10.20 ライブレポ

はじめに

 2019年10月20日に結成されたユニットXIIX。渾身のセルフタイトルである3rdアルバム「XIIX」をリリースして夏にTOUR「2&5」を回った彼らの、もう一つのリリースツアーがこの全編5人でのバンド編成によるTOUR「XIIX」だ。この日はツアー6本目にして結成4周年の日、通称「テントゥエンティの日」。昨年と同じくLINE CUBE SHIBUYAにて行われた。

本編

1 シトラス

 クラップを基調としたSEと同時にスクリーンに幾何学模様が映し出される。観客のクラップに誘われてサポートの3人、少し遅れて斎藤と須藤が登場。そのまま流れるように「シトラス」へ。前回のツアー「2&5」では2人編成で観客のクラップをルーパーでバックで流すというスタイルだっただけに、音源で聴いてるはずなのにライブで聴くと新鮮になるというマジック。「東京こんばんは。XIIXです最後までよろしく」と一言告げる斎藤宏介。

2 E△7

 最新アルバムのツアーでありながら、そのアルバムの曲を1曲目に披露した後に演奏されたのはXIIX史上恐らく最古参組のうちの1曲であろうこの「E△7」。以前行われていた斎藤ソロのイベント「SK's session」時代からある曲で、ギターのコードから名付けられたこの曲は作曲家としての斎藤の原点に当たるものだろう。ライブでも定番だがこの粂・斎藤の2ギタースタイルで聴くのは初めてなだけにやはりこちらの曲も新鮮な響きをもつ。

3 ユースレス・シンフォニー

 続いては前アルバム「USELESS」のリード曲であるこの曲。エレアコ・エレキの2ギターのハーモニーが綺麗だ。序盤に披露されるのは珍しいだけに1ブロック目の3曲目ですでにもう大団円的な雰囲気を演出していたが、この曲の間奏の「Wow Oh」という部分は2ndアルバムリリース当時はまだ声出しが禁止されていたこともあり、ようやくマスクも来場者登録も声出し制限も不要となった今観客とバンドが1つになりとても美しいシンフォニーを演出していた。

4 Vivid Noise

 2ndアルバムからの選曲が続く意外な展開。この曲はちょうど1年前「SANITY」ツアーのファイナル、同じLINE CUBE SHIBUYAにてSKY-HIがゲストで参加したことも記憶に新しいが、今回は感想でそれぞれのソロを入れるというアレンジ。ドラム(岡本啓佑)→ギター(粂絢哉)→キーボード(山本健太)→ベース(須藤優)→ギター・ボーカル(斎藤宏介)という順で斎藤が紹介からのソロを回していき「5人でXIIXです!」という「2&5」でも使っていた台詞で改めて強烈な自己紹介をお見舞いする。

5 おもちゃの街

 「XIIXというセルフタイトルアルバムを出してXIIXという名前のツアーを回っていて今日は10月20日、テントゥエンティの日。最高なライブになる気しかしてないです。」という無敵感溢れるMCから、今回のツアーで久々の披露となった「おもちゃの街」へ。須藤がシンセサイザーでベースラインを弾くこともあるこの曲の、「ユースレス・シンフォニー」と並んで前アルバムの中でも最も美しいメロディが満員のLINE CUBE SHIBUYAに響く。

6 Fantome

 おしゃれなピアノソロから始まったのは1stアルバム「White White」収録の「Fantome」。「一度きりと思うほど 溶ける 溶ける 甘い果実が」というXIIXでしか感じられない斎藤の色気のある歌詞が会場の空気に染み渡っていく。ファルセットもこの日は絶好調だ。斎藤のギターと須藤のベースによるアウトロで静かに〆。ここまでアルバム「XIIX」のツアーでありながらその収録曲が少なめではあったが……

7 次の朝へ

 落ち着いた曲が続くが、この曲はBメロの3拍子の感じが意外とロックで、サビでもしっかりと重厚なサウンドが奏でられる。「2&5」ではセトリに入ってなかったが、こういう曲は2人編成でも十分映えると思うがあえて5人でのバンド編成で演奏されることでXIIXとしてのバンドの強さが伺える。良いバンドはバラード曲ほどロックだ。青い照明に包まれて静かに曲が終わる。このブロックで思ったのは、XIIXのライブは客がギターのミュートやドラムのフロアタム+バスドラで曲が締められるまで拍手を待てるのが心地良い。

8 タイニーダンサー

 全ツアー「2&5」やテレ朝のイベントの六本木ヒルズアリーナでのライブでは2人編成で1曲目に披露されていたこの曲。もちろんバンド編成で演奏されるのは今ツアーが初めて。幕開けの1曲目としても相応しいが、こういうブロックの最後の位置に置かれてもまたグッとくるような名曲である。斎藤の低い声に観客が息を呑むのも伝わるほど空間を支配していた。Cメロではキラキラ光る星みたいな照明が心を高鳴らせた。

9 魔法の鏡

 「ここからはXIIXによるアルバム『XIIX』の世界へより深く潜っていきます。」という高らかな宣言のようなMCから、斎藤と粂が向かい合ってオリジナルのギターイントロを弾いてから始まったのはアルバムの1曲目。ここから新たなブロックが始まるのだが、この曲もやはりバンド編成で生で聴いてこそ真価が発揮される。落ち着いた歌い出しでありながら1番Bメロでキメで一気にバンドの音が入るところでは赤い照明が落ちてきたり、こういうちょっとした心地良い違和感で刺しにくるのが実にXIIXという感じ。スクリーン上の映像もこの曲の世界観を十二分に引き出していた。

10 アカシ

 ここで現状XIIX唯一のアニメタイアップ曲でライブでも定番の「アカシ」が、スクリーン上に映し出された東京の夜景をバックに演奏される。Bメロではメビウスの輪の模様が出てくるのは以前にもやっていた気がする。この5人でのバンド編成で聴くのは初めてだったが、粂が加わったことによりサウンドに厚みが増していた。赤と青の照明はこの曲のMVを思い出させるようだ。

11 月と蝶

 斎藤がエレアコに持ち替え、先刻の言葉通りアルバム「XIIX」収録曲が続く。「2&5」でもバンド編成で披露されていたこの曲だが、やはりスクリーンを演出に組み込んでおり、「赤い月明かり」の歌詞で赤い月が、「光に吸い込まれてく蝶」の歌詞で蝶が映し出されるなど曲の世界観に十二分に浸らせてくれる。アルバムのリード曲というのもあり盛り上がりも十分で、今後のXIIXの代表曲の1つとなっていくだろうと確信した。

12 4:43 AM  13 曙空をみつけて

 ここで上にあった方のスクリーンが降りてきて、星のような煌めきが映される。須藤のベース1本からなる「4:43 AM」では音源よりもたっぷりと余韻を取りながらライブならではの演奏をしてくれた。そしてバンドボーカルで斎藤が加わっての「曙空をみつけて」ではベース+バンドボーカルというこのバンドでしか観られないような組み合わせが見られ、そして歌詞の中で時間が経過していくにつれてスクリーンの風景が星空→朝焼け→日の出というように変化していくのがとてもよくできていた。

14 まばたきの途中

 先ほどバンドボーカルでボーカリストとしての力を如何なく見せつけた斎藤が次はギター1本での演奏で魅せる。この曲のサビのメロディをギターで弾いたあと、音源のイントロはカットで山本のピアノと共に歌い出し曲が始まるスタイル。XIIXとしての初のコラボ曲で、2番を橋本愛がメインで歌うという構成なので今回もツアー「2&5」と同様2番はカット。間奏のアレンジも原曲とは違いあらゆる意味でライブでしか聴けない「まばたきの途中」だった。

15 正者の行進

 ドラムの岡本の、タムとバスドラムを駆使したマーチングっぽいビートから始まったこの曲だが、スタッフが傍から斎藤・須藤の前に持ってきたのはなんとフロアタム2つとスティック2対。なんと岡本のビートに乗せて2人が向かい合い交互にタムを叩くというここでしか観れないドラムソロ対決だ。「ユースレス・シンフォニー」のMVで斎藤がドラムを叩いたり、過去にインスタのストーリーズでも須藤がドラムを叩いていたりしたこともあったが、やはり優れたミュージシャンは万に通ずるのだなと思った。
 そのまま体は横に向けフロアタムを叩きながら歌い出す斎藤。「2&5」での須藤のキーボードにも驚いたがまさかXIIXで斎藤のドラムボーカルが観れるとは。サビではハンドマイクでお立ち台に立ち熱量高く歌い上げる。そして2番からはギターボーカルモードに切り替えるという忙しさ(しかもなんとこれは後から分かったことだがフロアタム連打時にギターを落としたことによる即興だった)。去年のCDJで聴いた時(初披露時)から比べてここまでこの曲が成長するようになるとは。間違いなく今回のライブのハイライトだった。

16 No More

 さらにラストスパートをかけるべく、2ndアルバムの人気曲が投下される。ライブでの演奏率とファンの人気が高いこの曲はクライマックスの幕開けを告げる曲としてピッタリだ。親しみやすいポップなメロディながら、Aメロや間奏では斎藤のカッティングの技巧が光るいかにもXIIXらしい曲。秋を思わせる歌詞もこの時期に演奏されることでより解像度を増していく。歌いながら手を動かす斎藤や、間奏でベースを掲げる須藤が本当に楽しそう。2番Aメロのブレイクでは斎藤が須藤のベースに手を伸ばして弾くなど微笑ましい一面も。

17 うらら

 この日リリースされたツアー「2&5」でのライブバージョンとは違いいきなり歌から始まる音源と同じアレンジ。斎藤のスキャットや粂のワウの効いたギターなど聴きどころも満載な曲。この曲での斎藤はハンドマイクで縦横無尽にステージを駆け回り、1番終わりの間奏で粂のギターにマイクを当て、2番Aメロでキーボードの山本にちょっかいをかけ、Bメロでスティックを持ちクラッシュシンバルを連打するという自由っぷり。果てはスタッフから渡されたビデオカメラを片手にパフォーマンスをするなど、本当に終始楽しそうな1曲だった。

18 あれ

 「どうもありがとうございましたXIIXでした。ラストッ!」の声で粂のギターと岡本のドラムから始まったのはファンキーなリズムとフックの効いた斎藤のボーカルが印象的な「あれ」。今回も「2&5」と同じく最初は粂によるギター1本スタイルだったのが、間奏の尺を倍にして途中から斎藤のギターも加わり中央で竿3本が間奏を弾き倒すというカッコ良すぎるバージョンだ。ハイライト続きのライブ本編が終わりアンコールを求める拍手が長く鳴り響く。

アンコール

EN. 1 フラッシュバック

 「アンコールありがとうございます。それではもう少し遊びましょう。」という短いMCから始まった「フラッシュバック」では、その言葉通り間奏でメンバー達による「遊び」が展開される。斎藤が観客も巻き込み、「5回!」「3回!」「3連2回!」とメンバーにキメを要求したり「今月誕生日の人!」「ジャイアンツ派!」などと即興でソロを弾かせたりする。音楽スキルを高めた人達同士による豪華すぎる遊びだった。

  2 All Light

 アルバムで最後に置かれるこの曲は「すべての光」「大丈夫」というダブルミーニングを持っており、今回の一部のグッズに刻まれている「Everything is going to be fine」というフレーズの元にもなっている。今までとこれからが交わる場所に立てられたこのXIIXというアルバムの形をした旗印をライブを通して体験して、またアウトロで原曲にはないギターソロを弾く斎藤宏介の姿を見て歌詞通り「きっと大丈夫」なんだと実感した。

  3 スプレー

 アルバムと同じくツアー「XIIX」も「All Light」で終わりか……と思っていたらまさかのサプライズ。山本によるピアノのイントロとハンドマイクの斎藤によって始まったのは「スプレー」。「日高さん気をつけてあんた立場が」ではなく「斎藤さん気をつけてあんた立場が」と須藤に歌わせたり、「ダチのすってぃ!」と斎藤が指さした先の須藤がベースソロを弾くというアレンジ。そういえば、去年の同じ日に谷中敦、SKY-HIと共にこの曲を演奏した際ラストサビで斎藤が中央のお立ち台に立って歌ったのが印象的だった。
 それは彼にとって「喜び悲しみ半分半分」でありながら、ここまで音楽を続けてきて「僕らは今ここにいる」と言い切れるようになった姿にグッときたのだが、今回は序盤からお立ち台を利用しまくっていた斎藤・須藤の2人がこの曲のラストサビで中央の同じお立ち台に立っていたことがこの1年の進化を象徴しているようだった。つまりは渾身のセルフタイトルアルバムをリリースする過程でようやくXIIXが2人のバンドになったんだという実感である。2人で1つの生命体のような、そういうふうになれたことがよくわかるラストサビだった。

  4 魔法の鏡 w/内澤崇仁(androp)

 ここでサポートメンバーが1人ずつ紹介され、3人が退場した後須藤に「やっと2人きりになれたね♡」と言う斎藤。せっかくの記念日なので今日はこのまま特別に少しだけ遊ぼうという。そうしてステージに呼ばれたのはandropの内澤崇仁。「魔法の鏡」の制作秘話などをトークした後、アコースティックスタイルで3人による魔法の鏡が披露される。今年のSWEET LOVE SHOWERの斎遊記で演奏されたのと同じキーで、内澤の歌声はしっくりくるし、斎藤の歌声は一周回って新鮮に聴こえるという豪華なコラボだった。

おわりに

 2年半ぶりのオリジナルアルバム「XIIX」をリリースして自分たちのアイデンティティを確立したXIIX。活動開始当初から「ユニゾンの斎藤が新しいバンドを始めたぞっていう目線を無くしてバンド自体が評価されるためにアルバム3枚分はかかる」という見立てをしていた斎藤だが、かくしてその通りこの3枚目のアルバムをもってXIIXの何たるかが示された。そうして同じくバンド名を冠したツアーで、そのアルバム「XIIX」の曲を中心としたセットリストが組まれるのだからもうヤバくないわけがないのだ。
 ところどころの即興性や音源以上のアレンジでサポートメンバー全員の技術の高さを滲ませつつ、ただライブ空間に身を置くと素直にかっこいい、楽しいと思えるというとても高いレベルのことを両立している。音楽的なハイスペックさと聴きやすさという二律背反を何より本人達が笑いながら楽しそうに実証していく、2人によるXIIXという遊び場はまだまだ続く。まだ知らない音がする方へ行く彼らの足跡を未来と呼ぶ。
 


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