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XIIX TOUR「2&5」@Zepp Shinjuku (Tokyo) ライブレポ


はじめに

 2023年8月9日に行われた、XIIXによる東名阪全3本のツアー「2&5」のファイナル公演のレポです。この2週間前にリリースされた3rdアルバム「XIIX」のリリースツアーの1つ目として、斎藤・須藤の2人編成とバンドスタイルの5人編成の両方が観られるというコンセプト。10月には全てバンド編成のツアー「XIIX」が控えています。

2人編成

1 タイニーダンサー 

 幻想的なSEに包まれ上手から須藤優(Ba.)、斎藤宏介(Vo.&Gt.)が登場する。斎藤がエレアコを手に持つと、軽くアルペジオを弾いた後にXIIXでも屈指の低音ボイスで弾き語りを始める。4カウントで「頭の上飛行機が」の部分からはすってぃのベースも入り曲の世界が広がっていく。歌詞が載ってない「流れる時の真ん中で息をして〜」の部分は歌唱なしだった。2人編成=最小編成の1曲目にこの「tiny」dancerが選ばれるのはある意味必然と言えようか。


2 アカシ

 斎藤が高速でギターを弾き倒し、すってぃがベースを激しくスラップする。歌い出しと共に歌とギターのみになり、Aメロ折り返しの部分で再びベースが合流するのもいつものパターン。この曲がアコースティックで披露される時には定番だが、これも歌詞に載ってない「Show must go on until we die」の部分はベースだった。アウトロは「掲げて」を2度繰り返し、2回目は音が下がっていくパターン。新しいアルバムを出し手札が増えたことにより、珍しくも序盤に配置されたアカシだった。

3 White Song

 ここで斎藤によるMCが挟まれ、今回の「2&5」というツアーの要旨が説明される。前半が2人編成、後半が5人編成となることが明かされたうえで「新曲も増えたので色々な味付けで楽しんでいってください」と語った通り、なんと須藤が座って弾き始めたのはなんとアコースティックギター。アコギ2本でXIIXの曲が聴けるとは……と思っていたら2番でおもむろにギターを置き、今度はキーボードを弾き始める須藤。本当にこの人は多彩すぎるな。アルバム屈指のバラード曲だが、ともすれば単調にも聴こえてしまう曲調に変化が生まれて良いアレンジだった。

4 Light & Shadow

 先日の六本木ヒルズアリーナで行われたものと同じアレンジだった。ルーパーでドラム、ギター、コーラスを重ねていく。分かってはいても斎藤宏介による3重のコーラスには思わず息を呑んでしまったし、周りにもそういう様子の人が多い。ルーパーを足で操作して、ドラム、ギター、コーラスの音を自在に操りながらその上に生音のギターと歌を重ねていく斎藤宏介。この人も多彩すぎる。間奏のファズの効いたベースソロも決まり、最後は「Wow...」のコーラスで終わった。

5 ハンドレッド・グラヴィティ

 須藤によるベースから始まる定番のセッションからスタート。他の人のレポを観てみると各地で色々なギターアレンジが弾かれていたらしい。こんな感じでイントロセッションで遊ぶことのできる即興性が2人のスキルの高さを際立たせる。同じin the Roughシリーズだと「Talk to me」とも「あれ」とも違い歌詞の追加がない分、イントロやアウトロのアレンジが目立ち技巧を実感させる構成だった。

6 シトラス

 ルーパーで斎藤がギターのボディを叩くそのリズムで次の曲を勘づいた人も多いと思うが、当の本人は「イロモネアのシンキングタイムみたい」「(音を止めて)モノボケで。」とリラックスして楽しそう(須藤には伝わっていなかったが)。ここで須藤による恒例のクラップのレクチャーが行われ、そのリズムに乗せて曲が始まる。サビ前には須藤が4発のクラップを煽るが、それも煽られる前から叩く準備万端の人が多かった程待ち望まれた曲だった。

7 Answer5

 ルーパーのリズムをそのまま流し続け「前半、ラストッ!」の言葉から始まる歌い出し。in the Rough 1ツアー、SANITYツアー、サマステといいこの曲はラストが定位置になりつつあるみたいだが、こういう曲に限っていきなりセトリの前半に置かれてハッとさせられたりするものだ。間奏はベースソロを決めた須藤が「こーすけー」と呼びかけ斎藤がギターの速弾きアレンジを取り入れたソロを決める。鳴り止まない拍手に導かれ、サポートメンバー達がステージ入りし。。。

5人編成


8 Stay Mellow

 オーラルの4本打ちのような、1発ずつ増えていく全楽器によるキメに乗せて斎藤がメンバーの名前をコールしていく。1発「ドラム岡本啓佑」2発「ギター粂絢哉」3発「キーボード山本健太」4発「ベース須藤優」5発「ギターボーカル斎藤宏介、ここからは5人でXIIXです!」観客の拍手ともバッチリ呼吸が合ったのちキーボードが聴き覚えのあるイントロを弾き始める。かっこよすぎる。先ほどまでとは音の厚みが段違いだ。

9 魔法の鏡

 斎藤と粂がギターを向かい合って弾くイントロアレンジから曲が始まる。ユニゾンでもXIIXでも、基本的に特別なコラボを除きステージに斎藤宏介以外のギタリストがいることに見慣れていないのだが、2本あることでより原曲の音の厚みが増していてこれはこれでアリだなと思った。背景には鏡を思わせる、反射を繰り返す円の映像が流れる。最後は信じられないほどの高音で斎藤が「ラララ」と歌い、不穏なストリングスが大きくなっていって曲が締められる。

10 スプレー

 バンドボーカルに切り替えた斎藤とキーボードの山本が向かい合って曲が始まる。昨年のツアーファイナルでSKY-HIと谷中敦を迎えて披露されたのも記憶に新しいが、SANITYツアーはその渋谷公演しか行ってなかったので、個人的にはワンマンで斎藤宏介の2番のラップを聴くのは初めてだった。2番Aメロでギターがせっかくいいフレーズを弾いてるのにDJの音だとどうしても目立たない感があり、それを生音で聴けてよかった。須藤に「斎藤さん気をつけてあんた立場が」と言わせたり、「ダチのすってぃ!」という斎藤の呼びかけに応じてベースブレイクを入れたり、「20年後」という歌詞の部分で客席にピースしたりと遊び心満載だった。

11 あれ

 サポートミュージシャンとはもう15年来の付き合いであることに触れつつ「5人編成のXIIXです!」と改めて自己紹介してバンドボーカルで歌い始める斎藤。「色眼鏡」という歌詞の部分で手で作った輪っかを目に当て眼鏡のジェスチャーをするあざとさ。間奏でサポートGt.の粂さんが前出てきてギターソロを弾いている間にローディーさんから斎藤がギターを受け取り、後半はギターソロに合流した。左から須藤、粂、斎藤の竿持ち3人が前に出てソロを弾く場面は間違いなく今回のハイライト。「綺麗に咲けばどれだって素敵さ赤青黄色」の歌詞の通り色の三原色の照明にメンバーが照らされる。

12 正者の行進

 岡本によるドラムのマーチングみたいなリズムに乗せて斎藤が歌い始めたのは、昨年のCOUNTDOWN JAPAN 22/23でまだ曲名も決まってない新曲として披露された「正者の行進」。Yeahのところで観客の腕が上がる。ラストサビ前のラップは斎藤の手癖が激しくなり、韻の踏み方も原曲より野生味を感じた。ギターの音が分厚く迫力を感じた一曲。この曲を終えた後、ローディーさんが斎藤に次曲のMVで用いられているギターを渡し。。。

13 まばたきの途中

 そのギターをぶら下げたまま、マイクを持ってキーボードに近づく斎藤。ボーカルとピアノのみで「まばたきの途中」の1番が披露される。その後他の楽器隊、および斎藤のギターも演奏に加わるが、原曲と異なりジャズっぽいリズム。そして2番をスキップしCメロの「目を離したその瞬間に」に飛ぶ。この曲は原曲が歌詞になぞらえて1番を斎藤、2番を橋本愛が歌う構成になっているため、全てを斎藤が歌うライブではある意味このアレンジが正解にすら思えた。

14 No More

 ギターを持ち替えた斎藤が須藤にグッズ紹介の話を振る。須藤「僕は仕事が速いので、斎藤さんがサインを描いてる間になんとなくのイメージで絵を描いて、それがシトラスのタオルのデザインになってます。」斎藤「XIIXって絵が上手い2人で組んでるんだね!」須藤「いつか2人が描いた絵を背景に映しながらライブしたいね」斎藤「それは台無し感がすごいね」そんな仲の良さが伺えるやりとりがありつつ「ここからだんだんギアを上げていきます。『No More』」という言葉に続いて披露された。ギター2本になったことでカッティングの良さがより際立っている。今回のアルバムに入っていてもいい程メロディが聴きやすくキャッチーな曲。

15 うらら

 バンドボーカルに切り替えた斎藤の「TuTuTu ...」に合わせて打ち込みのホーンセクションの音が派手に鳴り響く。もうこの時点で次の曲が分かっていた人が大半だろう。個人的に好きな2曲が続いてテンション爆上がりだったが、まさかこの曲までがバンドボーカル曲になるとは。ステージ上を縦横無尽に移動しながら歌う斎藤はドラム台に上って向かい合ったり、須藤のベースに顔を近づけてマイクを掲げたり。どポップ王道でありながらバンドアレンジが素晴らしい曲だった。

16 月と蝶

 エレアコを持った斎藤が歌い始めたのは今回のアルバムのリード曲、「月と蝶」。曲が始まると背景のスクリーンが赤く染まり、Zepp Shinjukuのサイドの壁にも赤い光が走りサイケデリックな空間へと染まっていく。「足りない」×7に合わせて手を挙げる人の多さはこのフレーズがどれだけ特徴的かを表している。間奏に入る前にはサブリミナル的に蝶の画像が象徴的に映し出される。バンドアレンジで聴いたのは初めてだったがギターが2本になるとエレキとエレアコという弾き分けができるのかと感心した。

17 Answer5

 5人編成最後の曲は2人編成と同じこの曲。同じ曲を2つのバージョンで聴き比べてもらいたいという趣旨だろうか、しかしまるっきり同じものだと飽きてしまうとの気遣いだろうか、曲は1番をカットして2番から入るアレンジ。そしてバンド編成ということで各楽器によるソロ回し が行われる。ここでは須藤は「斎藤宏介〜」と呼んでいた。この微妙な温度感の違いが2人編成と5人編成の時の差なのだなと思った。1stアルバムのロック曲枠を未だにライブでの定番曲にしてくれるのが嬉しいし、これからも、形を変えつつも5人でこの「Answer5」を奏でてほしいと思った。

アンコール(5人編成)


1 LIFE IS MUSIC!!!!!

 結成初期のライブで(恐らく)この曲で須藤が曲に手拍子を煽った際に斎藤は「そういうのはやめよう」と言ったが、次のライブでもテンションが上がり須藤が手拍子を煽った際に思わず斎藤は笑ってしまったとのこと。そしてこの時に、2人なんだからそれぞれの意思があってバンドなんだし、そこを愛おしく感じたということが雑誌のインタビューで語られていた。そんな象徴的なエピソードのあるこの曲のクラップを須藤が煽る前に観客が始めるようになったことが、アルバム3枚分の時期を通じてXIIXのもつ世界観が馴染んできた証拠なんだなと感じた。

2 All Light

 「まばたきの途中」と同じギターに持ち替えた斎藤によるMCの後に始まったのは、アルバムでも最後に置かれるこの曲。サビの歌詞で分かる通り「全ての光」と「大丈夫(All Right)」または「全て正しい(All Right)」をかけていて、全てを肯定して包み込んでくれるようなこの曲が、アルバムもツアーも最後を飾ることによる多幸感。最後にはギターソロが挟まれるが、原曲にないこの曲のアウトロをギターソロで締めるところで「きっと大丈夫」なんだなと思った。それは、斎藤宏介のバンドに彼以外のギタリストが入ることに対してあった一抹の不安が、ライブを通して体験した後にこの最後のギターソロを観てしまったことで自然と拭われていたということである。

おわりに


 2人編成ではとても2人だけでやっているとは思えないほどの自由度と2人のスキルの高さを実感し、5人編成ではより厚みを増した音でXIIXの音楽のバンド感をマシマシで感じられるような構成だった。異なる編成で前/後半に分けてライブを行うシステムはまるでXIIXとXIIXの対バンを観ているかのよう。特にサポートドラマーが前回までの堀さんから岡本さんに変わったことで、今までライブで聴いた曲達も新鮮な気持ちで聴けるようになっていた。また、サポートギターの粂さんが入ったことにより斎藤宏介の表現の幅も増し、またギターが2本いるにも関わらず意欲的にリードギターを斎藤が弾いていたのもよかった。

 最後の曲の前のMCでは斎藤が15年来の付き合いのサポートミュージシャン達に背中を支えてもらったと語っていた。また、映像化されている結成3周年の日に行われた「SANITY」のツアーファイナルのMCで言っていた「この日の為に生まれてきた」という言葉を、半ば天丼のように重ねながらも2人が言っていたことで、XIIXはそういう日をこれからも積み重ねていくんだろうなと思った。3枚目にして渾身のセルフタイトルアルバム「XIIX」で旗印を立てたからこそ、これからXIIXはどこへだっていける。今日のライブで感じた幸福感さえ、10月のツアー「XIIX」でその最高地点が更新されるだろうと思っている。


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