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◆新型スープラは“スープラ”か。

私は新型スープラ反対過激派だった。
そんな私が見事なまでに完敗した今回の出来事。

私はスープラが好きだ。ヤマハエンジンのサウンド、流れるようなボディライン、トヨタ渾身のスポーツカー。JZA80発売当時は競合車両であるGT-RやNSXと比べ人気はなかったと聞いている。実際、スープラが好きだという人を地元で見かけたことは殆ど無い。
私はゲームを通して発売してしばらくした後にスープラと出会い見た目から入った人間で、見た目以外はぶっちゃけどうでもよかった。車のこともよく知らなかったし。流線型のデザインの車は全部かっこよく見えてた。
その後80スープラに実際に乗る機会があって、初めてその音にシビれたのを覚えてる。こうしてスタイルとヤマハエンジンの組み合わせが好きになった。ランクスだってそうだしね。

更にBMWにいい思い出が無かったのもある。詳細は省くが、とにかくBMWのスポーツは嫌いだった。…嫌いになってしまったのだった。

そんな折、散々昔から噂されていたBMWとの共同開発車両にスープラの名前がつく。当然私は「スープラという名を貶められた」と思った。
よりによってBMWの、よりによって一番嫌いなスポーツがベースだなんて。
スープラとしては認めないと周りに言って、新型は黒歴史になるとさえ思った。ヤマハエンジンのトヨタのスポーツじゃなきゃ、スープラとは認めない。LEXUSのLFAがスープラで良かったじゃないか。
何度も何度も繰り返し言ってきた。

そんな中で、オートサロンに呼ばれる機会があった。

周りの「GRスープラ」に対する期待がひしひしと伝わる。GTモデル、おなじみの90ラッピングモデルが並ぶ。初めて目の辺りにして思った。「デザインはすごく好きだな」と。特に横から見たときのデザインが。あとはロゴが。80スープラとも少しテイストの違うロゴ。メタリックで重厚感があってかっこいい。車両が発売されたらロゴプレートは買おう。そう思った。

そんなオートサロンでのえんちゃんの発言が実現したのがスープラオーナーズクラブで行われたGRスープラの試乗会。ぎりぎりまで粘って行くのを決めたのは、久しぶりに会える友達に会いたいのと、どうせ「ナシだ」と決めるなら乗ってから決めたかった。こんな機会が無いと絶対乗らない。
乗って、こてんぱんに「こんなんスープラじゃない」と胸を張って言いたかった。

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が、しかし。この時点では、なんとなく諦めに近い形で「スープラのようなBMW」に着地した。スープラ:3、BMW:7くらいの割合で。3の内訳も、見た目で1.5、ロゴが1、おまけで0.5くらい。なんと否定するつもりが、少し傾いてしまったのだ。
ロゴがかっこよくて色んなところに型押ししてあって、それはすごく好きだな。あと横から見たときのデザインはやはりすごく好き。2000GTにインスパイアされたっていうクオーターガラス、ルーフのライン。70も80も横から見たスタイルが好きだったからその分「中身がBMWじゃなきゃな」って何度も思ったし、悔しかった。
GRスープラに関わってきた人達があのスープラっぽいBMWを「スープラ」と呼ぶ度に、「あぁそうか、スープラなのか」と納得してしまっている自分もいた。(これはのちに「洗脳状態」と周りには言っていた)

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乗り味が気になる人も多いだろうから所感をメモ。
*共通:電子制御多すぎなのと、電子サイド解除の浮遊感で「宇宙船に乗ってるのではないか?」と錯覚する。SF感ヤバ。近未来カー。思った以上に小さい。見た目は大きい。
*RZ:直線番長。アクセルオンのトルク感がすごい(のちにBMWスポーツの特性だと聞いた)。高級車乗ってる感じ。安定感。ソアラ感。
*SZ-R:ぐいぐい曲がる。コーナリングのGを物ともしない。アンダーステア?なにそれおいしい?踏めば曲がる!おいもっと踏め!
*総評:車としての評価はするけど、スープラと呼ぶことはできない。

そんな中、私の中での「スープラ」という概念を打ち崩すことになる。GRスープラに関わってきた開発者さん達の話を聞けたことだ。
イベントを介してたくさんの話が聞けた。もちろん、中身がBMWな理由も。それもありがちな営業インタビューではなく「スープラと呼ぶにふさわしいか否か」という大きな議題を掲げての話だった。

そもそも「スープラ」とは?
トヨタデザイン、直6ヤマハエンジンのスポーツならスープラか?
直6にこだわる意味とはなんなのか?LFAがスープラにならなかった理由は?
そもそも成り立ちはセリカじゃないの?
OEM車両にフラッグシップモデルの名前をつけるのってどうなの?

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試乗会、記者会見を経て、私は気づいた。
「スープラ」とは、トヨタのある種の「覚悟」なのだ。

衰退していくモータースポーツの中でのトヨタの覚悟だった。
BMWとの共同開発という道でしか実現し得なかった車両だった。
更に70/80のパーツ再販も行うという。
やれプリウスだやれハイブリッドだやれ電気自動車だと言っていた今までのトヨタではあり得なかった夢物語だった。ありきたりなリバイバルではなく70/80も大事にしている姿勢に本当にこれはトヨタなのか?と錯覚してしまうほどで。
その「覚悟」が試乗会からびりびりと伝わっていたのに、私は記者会見まで気づかなかった。
オートサロンでのトークショーしかり、試乗会しかり、Supra is Back to Japan Fesしかり、ありえないと思っていたことをやっていることがすでにその証だった。

その事実以外に、これを「スープラ」と呼ばずなんと呼べるだろう。

「スープラ」という意味を、スープラが好きになってから何度も何度も思い返した。ラテン語で「超える」という意味だ。この先のモータースポーツの未来を超えてゆく覚悟を決めて名付けたのなら、これに「スープラ」以外の名前は見当たらない。

私は本当の意味で、またスープラに出会った。
70に乗ってもう我が人生に一片の悔いもなしと思っていたのに、これからのトヨタが作る未来にわくわくしてしまった。トヨタならなにかしでかしてくれるんじゃないかって、期待している私がいた。完敗だった。
きっと目が覚めたらまた「洗脳されていた」と思うかもしれない。でもこの衝撃はずっと心に残る。

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見てこの試乗会での私の笑顔。既に完敗してるでしょ。

トヨタさん、70から乗り換えることはできないけど応援しています。
最後にGazooRacing公式の記者会見でのスピーチ要約をどうぞ。


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