ニンテンドーswitchで“プリパラを創る”

2018年3月、「プリパラ」という作品が終わった

よもやプリパラを知らない女児先輩、かつて女児だった大先輩、プリパラお姉様方や
我々プリパラおじさんなど存在しないだろうが、今回は一応プリパラの概要について説明しておこう。

プリパラとは、アーケードゲームやアニメ、漫画等でメディアミックス展開されていた、アイドル育成ゲームである。
仮想空間「プリパラ」においてヴァーチャルアイドルになり、ライブを重ね、コーデを集め、“いいね”を稼いでファンを増やして、アイドルランクを上げるのが登場キャラクターたちの目標だ。

アーケード稼働とほぼ同時期に開始したアニメと連動して、曲、アイドル、コーデ、イベントがアップデートされていくので、
あなたが作ったアバター「マイキャラ」が、プリパラ世界の中でアニメのキャラクターと共に成長していくのを感じられるのも魅力の一つだろう。

ヴァーチャル世界なので、奇抜な衣装が多く、なんか光るし、羽が生えてライブ中に空を舞うし、たまにライブ後に観客共々謎空間に連れ去られて強制アンコールライブとかもさせられる。
どういうことだよ……と驚くかもしれないが、それがシステムでーす。

プリパラの魅力を語っても尽きないが、今回はプリパラの紹介がメインじゃないので、ここでおしまいにしよう。
とにかく、楽しかったんだ……

四年半の間、展開を続けたプリパラは、後継アーケードゲーム「プリチャン」とアニメ「キラッとプリチャン」への移行を以て終了した

四年半、というのはメインターゲットの女児がゲームを卒業し、次の世代に入れ替わるのに十分な期間である。

マイキャラを除いても30人近くのプレイアブルキャラクターと、多くの楽曲、彼女らの築いてきた関係性は尊いものだが、
それは新しい世代の女児がゲームを始めるハードルを高めてしまっているのもまた事実であった。
キャラクターとゲームシステムを一新するという試みは、間違いではないのだろう。

何年経っても同じ女児向けゲームを続ける我々、プリパラおじさんの方がそもそもおかしいのだが、
まあ、それだけ魅力的な世界だったんだ。惚れ込むのも許して欲しい……

アニメ「アイドルタイムプリパラ」の終わり方

アニメ「プリパラ」は三年半続いた後、続編のアニメ「アイドルタイムプリパラ」へと受け継がれた。
これは「キラッとプリチャン」とは違い、無印プリパラと同じ世界で、新たにメインキャラクターとなったアイドルの成長をメインに描くアニメ作品だった。
つまり、機動戦士ガンダムに対する、ガンダムZに位置する作品である。(キラッとプリチャンはアナザーガンダム作品ってことだね)

さて、アイドルタイムプリパラも、プリチャンへの移行を前に一年間のフィナーレを迎えたのだが、素晴らしい終わり方だったと思う。
無印プリパラからの集大成とも言えるライブを盛り込んだ第50話と、それに続くアイドルタイムプリパラ“らしい”展開で未来に希望を持たせる最終話

細かい不満こそあれど、それを塗り潰す圧倒的満足感……
いいんだよ、それで……完璧でなくとも、アイドルタイムプリパラはプリパラをやり遂げた。
ラブ……リスペクト……そしてラブ……つまり、そういうことだ。

「プリパラ オールアイドルパーフェクトステージ!」に秘められたパワー

アーケードの終了を前に、ニンテンドーswitchにてプリパラの移植作品「プリパラ オールアイドル~」が発売された。
プリパラのゲームとしては、3DSにて既に3作が作られているが、グラフィックが粗かったり、コーデが少なかったり、曲が少なかったり……と不満もあった。

それらと比較した場合、このゲームはグラフィック向上、大体全キャラクターが登場、人気コーデも多数収録、ライブ形式の充実により曲も増加、と不満点は概ね改善されている。
収録曲については、ゲーム曲とアニメ曲でレーベルが違う関係上、どうしても少なくなるのか不満が残るけどね。

単純にゲームとして見た場合、UIの不備や不親切さが残り、ローディングも長いとオススメできない。
そもそもタカラトミーアーツのゲームだから、あまり期待してはいけない。

だがそれを考慮しても、また、いつでもプリパラでライブできるというのは、プリパラおじさんにとって十分魅力的なゲームだと言えよう。

プリパラの真の終わりを見届ける、ストーリーモード

「プリパラ オールアイドル~」には二種類のストーリーモードがある。
一方は、アニメの四年半のストーリーを(大きく端折りながら)、(収録曲の関係でアニメと違う曲での)ライブで追体験できるモード。
もう一方は、プリパラ世界に迷い込んだ「キラッとプリチャン」の主人公・桃山みらいと共に、“あなた”(=マイキャラ)がプリパラアイドルと交流を深めるオリジナルストーリーモード。
これらを交互にクリアすることで、プリパラについての理解を深めながら楽しめる、という寸法だ。

この、オリジナルストーリーモードこそが本作の要だったりする

ストーリー自体は3DS作品でもお馴染みの「世界からプリズムの煌めきが失われてるからプリパラ存続の危機」という、いつものパターンだが、
今回はほんのちょっと様子が違う……

ライブを通してプリパラのシステムを復旧させようと、世界にプリズムの煌めきを取り戻そうと、「プリパラの終わり」だけは避けられないのだ

みんなの思いを一つにしようと、神コーデを作ろうと、神アイドルが踊ろうと、「終焉」はやってくる。
その理由はゲーム内で明かされることは、決してない。

だからこそ、ゲーム外にいる我々には分かってしまうのだ、この「終焉」とは、
絶対不可避のメタ的要素「プリパラというコンテンツの終わり」を指していることが……

そもそも“このプリパラ”は何処なのか?

さて、メタ的要素があるということを前提にすると、この世界のプリパラについて、そして異変について、また違った捉え方をすることができるはずだ。

何故、プリパラシステムが停止したはずの世界に君は入ることができたのか

何故、このプリパラからプリズムの煌めきが失われてしまったのか

何故、プリチャンのキャラクターである桃山みらいがこの世界に迷い込んだのか

その答えはただ一つ、

この世界が君の心の中のプリパラだからだ

オリジナルストーリー序盤、プリパラアイドルたちはそれぞれ本来の自分のキャラクターを失った状態で登場する。
俺は「お前そんなキャラクターじゃねえだろ」と心の中でツッコミ、ライブを通してアイドルを正気に戻し、
オリジナルストーリーだけでなく、原作再現ストーリーも辿って、「そうそう、こういう奴だよなー」と再認識しながらゲームを進めた。

繰り返されるライブ、開放される新しい曲、次々と手に入る懐かしい衣装……
コーデが揃った時のドキドキを、好きな衣装を組み合わせるワクワクを、踊るアイドルに抱いたときめきを味わう度に、
俺はコーデのボーナスいいねを気にしている内に失われてしまっていた心の輝きを、取り戻すことができた。

桃山みらいは、プリチャン世界そのものなのかもしれない。
「プリチャンとは、プリパラを終わらせてまで新しく始める程の価値があるものなのか?」
「システムだいぶ違うみたいだけど、プリチャン大丈夫なの?」
「アニメスタッフ総入れ替え?ふでやすを返せ」
そんな疑念を抱きつつも、漂流者・桃山みらいと共に俺はオリジナルストーリーを歩んだ。

その先に待ち受けていたのは、らぁら(プリパラ)からみらい(プリチャン)への魂の継承だった。
間違いなく、プリパラの心はプリチャンに受け継がれている。
そう確信した俺は、プリチャンで彼女と再会することを心の中で、ゲームの中で、約束した。

分かっただろう?
このゲームはアーケードプリパラの代替品でも、プリパラ難民の避難所でもない
心の中に自らのプリパラを創り、そこに入るためのプリチケそのものなのだ

ゲームの受け取り方もプレイスタイルも人それぞれだ。
だけど少なくとも俺は、このプリパラは俺の心の中にあるプリパラだと思う。

俺がプリズムの煌めきを忘れない限り、心のプリパラは不滅だ。

足りなかった「もう一つの最終回」がここにある

さて、ここで思い返して頂きたい。

プリパラとは「マイキャラ」が、プリパラ世界の中でアニメのキャラクターと共に成長していく物語なのだ

アイドルタイムプリパラの50話と最終話は実にいい最終回だったが、残念ながらアーケードゲームの終わりを描くには、ほんのちょっと足りなかった。
しょうがない、マイキャラはアニメに出てないんだからな。

そして、足りなかった「マイキャラとアニメキャラクターとの最終回」はこのゲームにある。

オリジナルストーリーの終盤、各アイドルからの未来へのエールを受け取り、あなたは現実世界に帰還することになる。
そして、らぁらに、プリパラにこう尋ねられるのだ。
「プリパラは好きになってくれた?」

この返答に「ずっと前から愛していました」という選択肢が存在する(これ以外を選ぶこともできる中でプレイヤーが選ぶ行為こそが重要なのだ)

これこそ救いであり、希望であり、アニメスタッフと俺たちの心が通じていたことの証明だろう。

これからも、どんな未来が来ても思い出は胸の中、キラキラきらめいているよ

アイドルタイムプリパラの最終オープニングテーマ、Memorialの歌詞……ここに限らず、今見返すと、すごくいいよね……知ってたけど

ヴァーチャルとリアルが交差する世界へ

Virtual YouTuber、略してVTuberなんてものが人気だ。好きに容姿を変えられて、好きな背景で、好きなことができる。
そんな自由な内容だから視聴者も惹きつけられるのかもしれない。発展途上だからワクワクするってのもあるね。

レディ・プレイヤー・ワンって映画を観て(この感想は別に書く予定)、ヴァーチャル世界行きてぇー!!って世界中の人が思ったはずだ。俺は思った。
技術的な困難はまだまだ待ち受けているだろうが、人間の欲望はそんな壁を乗り越えられると信じている。

世界丸ごとは無理でも、専用の施設からヴァーチャル世界に入り、再現された街で、お気に入りの衣装を着て、
好きな曲でライブして、誰かとトモチケを交換し合い友達になることができる日は、すぐにでも来てもおかしくないはずだ……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?