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不安で焦ってばかりいたあの頃の私へ ~「違うこと」をしないこと~

ずっと、私には何かが、それもとても重要で世の中の人がみんな手にしているような何かが、欠落していると思っていた。

無自覚だったけど私は長いこと欠乏感の中にあって、足りないからあれもこれもする、もっと頑張る、もっともっと求め続ける…

そういう渦の中にいたように思う。



吉本ばななさんの、「「違うことを」しないこと」を読んだ。

タイトルの意味するところは、本来の自分らしくないことをしないことが大切で、「違わないこと」をしていれば「違うわない現実」が返ってきますよ、ということ。

スピリチュアル要素が強くてなかなか読み進められない部分もあったけど、個人的にはとーっても納得。

この本を読んで思い当たったことや気づいたことはたくさんあったのだけど、その中の1つが自分がいかに今まで「違うこと」ばかりしていたか、ということだった。



20代の頃に仕事がなかなか長続きしなかった私は、自信を喪失し、「自分には何かが足りない、みんなができることが私にはできない」と思うようになった。

なまじ、それなりの大学を出ていただけに親をものすごく落胆させたし、大学時代の友人・知人は名だたる企業や公務員として順調にキャリアを積む人がほとんどだったので、そんな周囲との比較も私を苦しめた。

精神のバランスが取れなくて適応障害も患ったし、契約期間を反故にして逃げるように辞めてしまった職場もあった。

30代に入って子どもを産んでからも、20代の「遅れ」を取り戻すのに必死で、幼い息子をあちこちに預けてはフリーランスで仕事をし、どんなに頑張っても認めてもらえないように感じて落胆し、もっともっと頑張らなきゃ、誰よりも頑張らなきゃ私はダメなんだからと、自分のおしりをたたき続けていた。

息子にも、自分にも、本当に可哀想なことをした。



フリーランスを辞めて、今の会社で働くようになり、その渦からはだいぶ足を洗えたような気がしていた。

だけど、「「違うこと」をしないこと」を読んで、あぁ、まだまだ私の中にはあの頃の自分が残っていたなあと、感じた。



そして改めて今の自分を振り返ったとき、気がついた。

私はもうとっくに、十分すぎるほど、これ以上ないほどに満たされていたのだと。

家族がいて、仕事があって、裕福ではないけど衣食住は確保されて、noteを含む趣味に打ち込むこともできるし、健康な体があり、数人だけど友達もいる。

これでよかったんだ。

今の私で、今の生活で、よかったんだ。

そう気づいたとき私は車を運転していて、運転席に差し込む夕日がまぶしくて、いつもなら不快に感じることもあるその日差しに祝福されているような気持ちになった。



あの渦の中にいた私が、完璧に消え去ることはもしかしたらないのかもしれない。

何かのきっかけでまた不安になって焦ることもあるし、そこで失敗することもあるのだろう。

気づいたからといって、全てが解決されるわけではないのだ。

だけど、そんな自分を優しく包むことができるようになった。

自分に優しくすることはとても苦手だったから、不器用でぎこちなくて、かける言葉なんて分からないけど、ただ寄り添うことくらいならできるかもしれない。



あの頃の私にも、黙ってあたたかい毛布をかけてあげよう。

苦しまなくて大丈夫だよ、あなたは十分守られているよ。

そう伝えてあげることが、今の私にできる幸せの1つなのかもしれない。


#2021年のおすすめエッセイ  #読書感想文 #あの頃の私へ




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