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高くても売れるスタジアムグルメで考える「アンカリング効果」

アンカリング効果について調べてみました。アンカリング効果というのは情報を順番に見せられた時、後から見せられた情報の評価が、前に見せられた情報の内容に左右されてしまう認知バイアスのひとつです。

アンカリング効果の代表例

アンカリング効果の説明でよく用いられている例としては、二重価格表示です。例えばパソコンの価格を表示する際、単に7万円と提示されているのと、10万円の30%オフで7万円と提示されるのでは印象が変わるというものです。

価格などの数字だけではありません。先に大きな条件を提示しておいて、断られた後に小さな条件を提示すると合意しやすいというのもそれです。恋人になってほしいと言って断られた後に友達からでもと言って結果的にデートを設定するみたいな方法ですね。(私は使ったことありません。)

俗に言う「ハードルが上がる」みたいな現象も同様に思いました。とある作品で大きな話題を集めたクリエイターに対して、その次に出す作品の期待値が異様に高くなってしまう現象です。次に出す作品が平凡よりも素晴らしい物であっても、先の話題作の評価に引っ張られて地味な印象を抱いてしまいます。大半の人は先の話題作を最初に見てしまうので、次の作品の評価が相対的に落ちてしまいます。

アンカリング効果はビジネスの交渉術でよく紹介される心理現象だそうです。

旧国立競技場のカップラーメン

日常にもアンカリング効果が潜んでないかと振り返ってみて思い出したのが、旧国立競技場のカップラーメンです。

旧国立競技場は調理設備が整っていなかったらしく、温かい飲食物がありませんでした。その中で唯一温かかったものがカップラーメンです。このカップラーメンは200円と相場より高かったのですが、非常に良い思い出として残っています。

競技場などのケータリングをサッカーファンは「スタジアムグルメ」と呼んでいます。サッカー観戦の付加価値としてスタジアムグルメは無くてはならない存在となっています。

スタジアムグルメの相場はコンビニなどで買うよりも高めになっています。映画館のやたら高いポップコーンと同様です。700円や800円するようなスタジアムグルメの中に200円のカップラーメンがあると、破格のように感じてしまいます。

また、高校サッカー選手権などが行われる冬場での吹きざらしの観戦は都内と言えど堪え難い寒さです。その寒さをしのげる唯一の食べ物という意味でもカップラーメンの価値が高騰しています。おそらく500円くらいでも買ってしまうかもしれません。

旧国立競技場のカップラーメンの例は、まずスタジアムグルメの相場感がアンカーとなっていました。加えて唯一の温かい食べ物という価値が上乗せされて、200円という価格が破格に感じられていたのだと思います。

岐阜の飛騨牛串

もうひとつ思い出したのがFC岐阜のホームゲームで提供される飛騨牛串です。私の実家は岐阜市なので、帰省の際にFC岐阜の試合があると漏れなく行きます。その際に必ず買うのが飛騨牛串です。

飛騨牛串は1本500円程度です。串焼き1本で想像する相場がだいたい100円程度なので、これだけを聞くと何とも高く感じてしまいます。

しかし旧国立競技場の例と同様に同じ場所で販売されているスタジアムグルメは軒並み高めに価格が設定されています。それに加えて、私たちが飛騨牛に対して抱いている高級感もアンカリング効果を働かせていたと思います。

私たちは普段から飛騨牛を食べません。和牛というだけで高級で非日常的な存在です。つまり和牛の相場は「何円かは知らないけど何となく高そう」という評価を持っているかと思います。何千円と払わないと食べられなさそうな飛騨牛が500円で食べられると知ると、非常に安く感じてしまいます。

飛騨牛串は2つのアンカーがありそうです。ひとつはスタジアムグルメ全体の相場観です。もう一つは和牛に対する相場観です。

アンカーを見つけて見方を変える

アンカリング効果で二重価格や交渉術の様な例を見てしまうと詐欺的な悪印象を抱きがちです。しかし、実際はアンカリング効果があると気づきながらも納得感を得ている例は多そうです。100円程度で販売されているペットボトルのミネラルウォーターもこの類かと思います。

納得感がある場合は構いませんが、特に数字を見て判断する際はアンカリング効果が働いていないか気にしてみると面白そうです。何がアンカーとなっているかを気にしてみるだけで見え方が変わってきそうです。

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