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Voigtländer Ultron 40mm F2 でスナップ @ 栃木県益子町

(2年前の冬に書いたブログ記事です)
久しぶりに、栃木県の益子町に行ってきた。
焼き物を買うためではなくて、カフェと古本屋、古家具店、そしてUltronの試写が目的だ。
平日の益子町は、コロナ禍の真っただ中ということもあって、ひどく閑散としている。ほとんど観光客のいない焼き物の街を、40mmF2のUltronをつけたFM3aでスナップ。フィルムはフジカラー100(ネガ)。

冬の斜光線が美しい影を落としている古い街並みには、懐古趣味的なカメラとレンズがとても似合う。


デジカメが普及する以前、街中のスナップにはしばしばコンタックスT2を使っていた。言わずと知れた高級コンパクトカメラのハシリである。
デザインはポルシェ、レンズはカールツアィスのゾナー、外皮はチタン。見るからに高スペックなカメラである。もちろん、名玉ゾナーの描写も抜群。38ミリという標準とも広角とも言えない微妙な焦点距離も、スナップ向きだった。
後継機のT3はレンズの焦点距離が35ミリに変わり、最短撮影距離も短くなり、T2よりも小さく軽くなった。T2でしばしばあったピントの中抜けも少なくなったらしい。迷わずT3を買った。
でも、その後も僕がスナップに使ったのはT2で、T3は購入後、2年ほどで手放してしまった。あくまで個人的な感想だが、T2ほうがスナップには使いやすかったからだ。
たった3ミリの差とはいえ、38ミリのレンズの方が遠近感がつきにくい。自然な描写になる。被写体が人物の場合、同じ大きさに撮影するなら、被写体との間の距離が大きく取れる。遠近感を強調した画面作りをしたいなら、焦点距離は35ミリよりももっと短い方がいい。28ミリのレンズがついたリコーGR1やミノルタTC-1という名機もある。そんなT2だが、ファインダーはあまりに小さく、高級とは言い難かった。

Ultronの40mmも、T2のゾナーと焦点距離が近いせいか、スナップには使いやすい。
FM3aとの組み合わせは、T2よりはるかに大きいけれど、ローレット加工された金属の美しいピントリングを回し、適度な抵抗感があるフィルムレバーを巻きあげていると、「撮影している」という実感が湧く。

さて、古民家カフェ《つづり食堂》でコーヒーとアップルパイを食べ、古本屋の《内町工場》で、故安野光雅の画文集『津和野』を買った。昔から安野光雅の風景画が好きだった。彼の絵は、淡彩で夢のようにはかない。ページをめくっていると、実際には存在してない場所を旅しているような気分になる。
水彩画の代わりに写真と文章で、こんな本が造れたらいいなぁと夢想したりする。カメラはローライ2.8のプラナーがいいかな、それとも3半のクセノタールだろうか、それとも古いMF35ミリのフィルムカメラか……。
残念だけど、古家具店の《pejite》と《仁平古家具店》は休店日だった。帰りに、DPE店(カメラのキタムラさんです)に現像を依頼。

フジカラー100は、同社の160NS(120)よりも、色合いが淡く、素直で爽やかな発色だった。ポートラからGを少し減らした感じ?とでも言えばいいだろうか。自分好みのフィルムである。絶対に無理だと思うけど、120も出してくれないかなぁ。

Ultronは前評判通り、見た目は古風でも現役バリバリという印象。2千万超の画素のフルサイズのデジイチで使う目的で開発されたレンズなのだろう。でもデザインはMFニコンにピッタリなのだ。買ってよかった。

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